第136回 2002年デビスカップ・ファイナル(2)
舞台は赤土のベルシー

■もう一つのテニスの聖地、ベルシー多目的スポーツセンター

 2年連続でデビスカップ決勝に進出し、今年はパリでファイナルを戦うフランス。フランスでテニスの聖地といえば5月から6月にかけて全仏オープンを行うローランギャロスであり、クレーコートの赤土はフランスのテニスの象徴である。ところが、この季節、氷点下になりうるパリでテニスを行うのはインドアに限られ、ローランギャロスで世界の頂点を競うことは不可能である。そこで決戦の場となったのがパリ東部のセーヌ河岸にあるベルシー多目的スポーツセンターである。この欧州を代表する体育館で、その名の通り各種のスポーツが行われているが、テニスに関しては例年11月1日の諸聖人祭の前後に男子のパリオープンが開催される。パリオープンは10月から続くインドアの大会の最終戦であり、ATPツアーの中でもグランドスラムに次ぐ位置付けであり、今までも多くの名勝負が繰り広げられてきた。このパリオープンは「ベルシー」の愛称で呼ばれ、ベルシーといえばテニス大会を意味するほど親しまれている。ローランギャロスには及ばないものの、ベルシーはフランスにおいてインドアのテニスの聖地である。

■インドアスポーツに顕著なホームアドバンテージ

 いかなるスポーツにもホームアドバンテージが存在するが、その理由は2つある。まず、観客の声援が期待できることであろう。サッカーのホームアドバンテージについては今回のワールドカップでも明らかになったが、実はサッカーにおけるホームアドバンテージは他の競技と比較すると、決して顕著なものではない。ホームアドバンテージの著しいスポーツはサッカーやラグビーのような屋外競技よりもバスケットボールやアイスホッケーのような屋内競技の方が著しい。これは屋内競技の場合、声援が反響して何倍にも増幅されること、さらに体育館の方がサッカーなどのスタジアムよりも狭いため選手に圧迫感があることがその理由である。1980年のレイクプラシッド冬季オリンピックのアイスホッケー、米国対ソ連戦を思い出される方も少なくないであろう。また、忘れられないのがリヨンで行われたデビスカップ決勝の米国戦である。試合はワールドカップで日本が初ゴールをあげたゲルラン競技場に隣接する体育館で行われ、観客の大声援でアンドレ・アガシ、ピート・サンプラスなどの米国選手は完全に集中力を失う。フランスは米国を下して実に59年ぶりにデビスカップを獲得したのである。

■フランス・テニスの象徴、赤土のクレーコート

 そしてもう1つのホームアドバンテージの要因はホームの選手がその試合環境に慣れ親しんでいるということである。これはもちろん気候や生活や食物などの試合を取り巻く環境も重要であるが、試合を行う条件、テニスの場合はサーフェスが試合の結果を左右する。デビスカップの場合、ホームチームはサーフェスを自国の有利になるように設定することができる。フランス人選手は初めてラケットを握った時からローランギャロスの赤土の上で白球を追うことを夢見る。そしてフランス国内の主要大会の多くがクレーコートで行われる。このような赤土にまみれて白球を追ってきたフランス人選手が国家を代表するデビスカップにおいてサーフェスを赤土にすることは当然の選択であろう。フランス人選手はクレーコートの上でフランス人選手足り得るのである。パリオープンは室内にカーペットを敷いた上で行われるが、フランス側はこのデビスカップ決勝のために特別に室内に赤土を搬入し、インドアのクレーコートを仕立て、ロシアを迎えることになったのである。

■2連覇目指すフランスか、3度目の正直のロシアか

 地元の声援が反響して大声援となるインドア、しかもサーフェスはフランス人の得意なクレー、ここまで舞台を整え、フランスは2年連続のデビスカップ獲得を狙う。フランスがデビスカップ連覇を果たせば、実に70年ぶりの快挙となる。一方のロシア、ソ連時代から優勝はなく、1994年、1995年に2年連続して決勝で涙を飲んでいる。連覇を目指すフランスか、初優勝を狙うロシアか、パリジャンの期待は4年前の地元開催のワールドカップ決勝に優るとも劣らない盛り上がりを見せたのである。(続く)

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