第2028回 開幕戦でルーマニアを破る(2)
ディミトリ・パイエの終了間際のゴールで白星スタート

 平成28年熊本地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。お亡くなりになった方々に、謹んで哀悼の意を表します。 この地震が1日でも早く収まることと、被災地の皆様の安全とご健康をお祈り申し上げます。

■平和の象徴、欧州選手権

 6月10日21時、フランス-ルーマニア戦がキックオフされ、ようやく欧州選手権が開幕した。本連載で紹介しているように、夏季オリンピックと同年に行われる欧州選手権は、元々は東側陣営がステートアマによってメダルを量産し、サッカーでもアマチュアとは名ばかりの選手が出場し、西側を圧倒していたことに対し、プロもアマも関係なく出場する大会で西側陣営こそ優勢であるということを示すために開催された。いわば東西冷戦の落とし子であったと言える。東西の対立も終わりを告げ、今回の欧州選手権はテロや戦争に対し、スポーツの力を見せる大会となった。昨年11月の同時多発テロの舞台となったスタッド・ド・フランスにはフランソワ・オランド大統領の姿も見える。

■アントワン・グリエズマンが先発メンバーに名を連ねる

 しかし、なんと言っても主役は選手である。フランスの先発メンバーであるが、GKはウーゴ・ロリス、DFは右からバカリ・サーニャ、アディル・ラミ、ローラン・コシエルニー、パトリス・エブラ、MFは中央の低めの位置にエンゴロ・カンテ、右にポール・ポグバ、左にブレーズ・マツイディ、FWは右にアントワン・グリエズマン、左に、中央はオリビエ・ジルーである。スコットランド戦と比べると右サイドがキングスレー・コマンからグリエズマンに代わった以外は同じメンバーである。グリエズマンはアトレチコ・マドリッドのメンバーとしてチャンピオンズリーグ決勝まで戦い、チームへの合流が遅れていた。ようやく本番の開幕戦になってフルメンバーがそろったのである。

■44年ぶりの勝利を目指すルーマニア

 ルーマニアとの対戦成績はフランスの7勝5分3敗である。近年は公式戦で戦うことが多く、2008年の欧州選手権のグループリーグで対戦して以来、2010年ワールドカップ予選で2試合、2012年欧州選手権予選で2試合と過去5試合は公式戦での顔合わせであり、フランスは2勝3分と負けていない。1996年の欧州選手権は予選2試合、本大会のグループリーでも対戦している。政治的にも関係の少なくない両国であるが、親善試合での対戦は少なく、過去30年間では2002年の1回しか対戦していない。ルーマニアがフランスに勝利したのは今から44年前の1972年にブカレストで行われた親善試合が最後である。

■89分のディミトリ・パイエのシュートでフランスが勝利

 そのルーマニアが先にチャンスをつかむ。4分に好位置からFKのチャンス、まだこの試合が代表5試合目という23歳のニコラエ・スタンチェが直接ゴールを狙うが、ロリスがCKに逃げる。フランスもパイエのクロスをジルーがヘディングで合わせるがゴールの枠からわずかに外れる。その後も14分のグリエズマンのシュートが惜しくも外れるなど、フランスはルーマニアに対して攻め込むが、前半は両チーム無得点に終わる。かつては主要国際大会の開幕戦はスコアレスドローというのが国際儀礼であったが、現在は異なる。
 後半になってスコアが動いた。後半も先にゴールを脅かしたのはルーマニアであったが、58分にパイエからのクロスをジルーがルーマニアのGKチプリアン・タタルサヌに競り勝ってヘディングシュートを決める。記念すべき大会初ゴールはこの日が代表50試合目となったジルーが決めた。ジルーは代表での得点は18点目であるが、最近先発した6試合では必ずゴールを決めている。
 ルーマニアはエブラが犯したファウルでPKを得て、スタンチェが決めて65分に追いつく。その後はパスをつなぎ、試合を支配しながら得点に結び付けられない時間帯が続き、このままドローかと思われた89分、カンテからのパスを受けたパイエがスーパーゴール。観戦していたフランソワ・オランド大統領も驚きを隠せなかった。パイエは代表20試合目で4点目となったが、この4点のうち3点は89分以降にあげたものである。
 今年になるまでは代表メンバーから離れていたパイエの一撃でフランスは開幕戦を白星で飾ったのである。(この項、終わり)

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