第3562回 パリサンジェルマン、ついに優勝 (1) 国内外三冠への道
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■フランスカップ決勝の1週間後に行われるチャンピオンズリーグ決勝
前回までの本連載ではフランスサッカーのシーズン終盤を紹介した。国内のリーグ、カップ、入替戦はすべて終了し、最後に残ったのが国際試合であるチャンピオンズリーグ決勝のパリサンジェルマン-インテル・ミラノ(イタリア)戦である。
前々回の本連載で紹介したフランスカップ決勝の1週間後の5月31日にドイツのミュンヘンで行われた、この試合、5-0でパリサンジェルマンが勝利し、悲願の初優勝を遂げたが、今回からこの試合について紹介していこう。
フランスリーグでは4月5日に行われた第28節で優勝を決め、フランスカップでは5月24日にスタッド・ド・ランスに勝利して優勝して二冠を獲得したパリサンジェルマンに対し、パリサンジェルマンのファンだけではなく、フランス中からの国内外三冠の期待は高まった。
■これまで欧州カップ優勝歴のある1993年のマルセイユ、1996年のパリサンジェルマン
これまでのフランスサッカーの栄光の歴史を振り返ってみると、欧州カップで優勝したチームは2チーム、1993年のチャンピオンズリーグのマルセイユ、1996年のカップウィナーズカップのパリサンジェルマンだけである。
1993年のマルセイユはリーグ戦では優勝したが、八百長事件によりタイトル剝奪、そしてフランスカップは準々決勝でサンテチエンヌに敗れ、2つの大会で優勝したが、一冠にとどまっている。1996年のパリサンジェルマンはリーグ戦はオセールに次いで2位、フランスカップはベスト8決定戦で4部に相当するナショナル2部に所属していたクレルモンに延長、PK戦の末敗れている。また、この時はリーグカップもあり、初戦となるベスト16決定戦で敗れ去り、一冠どまりであった。なお、この年のフランスカップはオセールが優勝し、リーグとカップの国内の伝統的なタイトルで二冠を達成している。なお、この時は国内タイトルにリーグカップもあったが、オセール場ベスト8決定戦で敗れている。
ちなみに、パリサンジェルマンは国内リーグ、国内カップ、リーグカップの三冠はこれまでに2015年、2016年、2018年、2020年の3回記録している。すなわち、前回、チャンピオンズリーグの決勝に進出した2020年にバイエルン・ミュンヘン(ドイツ)に勝利していれば、国内外四冠を達成していたことになる。
■欧州五大リーグの強豪のみが狙える国内外三冠
多くの国でリーグカップが開催されず、国内タイトルがリーグとカップになった現在、国内二冠と言えば国内リーグと国内カップ、そして国内外三冠と言えばそれに加えてチャンピオンズリーグ優勝である。
これまでにこの国内外三冠と言えば、日本の皆様であれば1987年の読売クラブを思い出すであろう。バブル期の豊富な資金量で世界のスーパースターが集結した日本のサッカー界で日本リーグ、天皇杯、そしてアジアクラブ選手権で優勝したことは、今でも多くのファンの方の記憶にとどまっているであろう。
欧州では最初にこの偉業を達成したのは1967年のセルチック・グラスゴー(スコットランド)である。それに続いて1972年のアヤックス・アムステルダムと1988年のPSVアイントホーフェン(いずれもオランダ)である。欧州五大リーグではこの国内外三冠は難しく、1999年のマンチェスター・ユナイテッド(イングランド)が最初である。チャンピオンズリーグとなってからは欧州五大リーグ以外のチームが優勝したことは2回(1995年のアヤックスと20034年のポルトガルのポルト)のみ、この国内外三冠は現実的には欧州五大リーグの強豪のみが狙うことのできるタイトルとなった。
■2010年に国内外三冠を達成したインテル・ミラノ
マンチェスター・ユナイテッドの次に国内外三冠を達成したのは2009年のバルセロナ(スペイン)、その翌年には今回パリサンジェルマンの相手となるインテル・ミラノが獲得した。ユベントスもACミランも国内外三冠を達成しておらず、イタリア勢で唯一の偉業を達成したチームがファイナリストとなったのである。(続く)