第1254回 2010-11フランスリーグ・フィナーレ(2) 大混戦のシーズンを象徴する残留争い

 3月11日に起こった東北地方太平洋沖地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、救援活動、復旧活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■降格争いの直接対決となったモナコ-ランス戦

 前回の本連載ではいよいよフィナーレを迎えようとしている大混戦のフランスリーグで上位陣の欧州カップ出場についてはチャンピオンズリーグ予備戦出場のかかる3位争いだけが最終節に持ち越され、それ以外の上位陣の順位が決定したことを紹介した。
 一方、下位3チームが2部に降格するかどうかが終盤戦の見どころであるが、本連載第1241回でも紹介したとおり、今季初昇格したアルル・アビニョンが早々に2部降格となったのに続き、ランスも2部降格が決定した。ランスは今世紀に入ってからはリーグ戦では上位をキープし、欧州カップの常連チームであったが、2007-08シーズンには18位となって2部に降格、翌季は2部で優勝して1季で1部に復帰を果たし、復帰初年の2009-10シーズンはリーグで11位、フランスカップは4強になったが、今季は振るわず、下位を低迷した。そして残り3試合となる第36節を迎える。この時点でランスは勝ち点34で19位、18位はナンシーが勝ち点39、そして降格を免れる17位はこれまた欧州カップの常連チームだったモナコが勝ち点40であり、ランスは残り3試合で勝ち点6差を逆転しなくてはならない。その第36節はランスとモナコの直接対決となった。数年前であればチャンピオンズリーグ出場権を巡る直接対決であってもおかしくないところであるが、今季は両チームとも不本意な成績で終盤を迎える。

■直接対決はドロー、ランスが2部に降格

 モナコで行われたこの直接対決、観客はわずか6000人台とさびしい限りである。その数少ないファンのために奮起したモナコが前半に先制点をあげる。勝利が必要なランスはなかなかゴールを奪うことができない。そして長いロスタイムとなった後半の94分にようやく同点ゴールをあげるが、モナコとの勝ち点差は6のままである。そして18位のナンシーはニースをホームに迎え、3-0と完勝し、17位に浮上する。この時点で、17位ナンシーと19位ランスの勝ち点差は残り2試合で8となり、ランスの2部降格が決まったのである。これで気落ちしたランスは続く第37節では最下位のアルル・アビニョンを迎え、0-1と沈黙、血と黄金と呼ばれる赤と黄色の二色に染まったフェリックス・ボラール競技場のファンをがっかりさせたのである。

■18位から7位までの12チームが勝ち点5差にひしめく大混戦

 さて、降格争いに関しては残り1つの18位の座が最終節まで決まらなかった。最終節を迎える段階で18位は勝ち点44、得失点差-2のモナコ、そして下から順番に勝ち点、得失点差を紹介すると、17位ナンシー(勝ち点45、得失点差-9)、16位カーン(45、-5)、15位バランシエンヌ(45、+3)、14位ニース(46、-14)、13位ブレスト(46、-5)、12位オセール(46、+3)、11位モンペリエ(47、-9)、10位トゥールーズ(47、0)となっており、10位から18位までの9チームが勝ち点3差の中にひしめいている。ちなみに9位以上についても僅差であり、9位ボルドー(48、-1、41得点)、8位サンテエチエンヌ(48、-1、45得点)、7位ロリアン(49、-1)となっている。つまり欧州カップ出場権を得ることができなかった7位のチームと、2部降格圏内の18位のチームの勝ち点差はわずか5にしか過ぎないのである。

■勝ち点2差の中の7チームに降格の危機

 そして残留争いについては今季の混戦が象徴するような興味深い事象がおこった。上記のとおり降格圏内の18位のモナコと10位のトゥールーズの勝ち点差は3であり、このトゥールーズまで勝ち点の上では降格の危機にあると思われるが、そうではなかった。最終節で14位のニースと15位のバランシエンヌが対戦する。この両チームが同時に勝利することはあり得ない。いずれかのチームは勝ち点3を獲得することができない。この当事者同士の直接対決が存在することによって勝ち点47の10位トゥールーズと11位モンペリエは降格を免れることになった。しかしながら、勝ち点2差にひしめく7チームのうち1チームが降格するという大混戦のシーズンを象徴する残留争いとなったのである。(続く)

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