第2531回 ラグビーワールドカップに向けて代表候補発表(2) 経験の浅いメンバーを多数抱えて合宿入り

 8年前の東日本大震災、3年前の平成28年熊本地震、昨年の平成30年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■ジャック・ブルネル監督の下で主将経験もあるマチュー・バスタロー

 9月に日本で行われるラグビーワールドカップに向けて代表候補を6月18日に発表したフランス、31人の代表候補と6人のバックアップメンバーについては早速厳しい声が寄せられた。
 前回の本連載で紹介したとおり、マチュー・バスタローをメンバーから外したことである。昨年の6か国対抗では終盤のスコットランド遠征時にチームの規律に問題があったため、大幅に選手を入れ替え、その際に長らく代表を離れていたバスタローが復活している。その後は副賞としてチームを支えてきた。特にパワーあふれるプレーは対戦相手にとっては大きな脅威であった。そしてバスタローを外したことはそのプレーだけではなく、経験からくるチームの精神的な支柱を失ったことにも影響する。フランス代表が最後に輝くを見せたのは準優勝した2011年のワールドカップであるが、この時は多くの幸運に恵まれた結果であるという見方も少なくない。むしろその前年の2010年の6か国対抗でのグランドスラムこそ誇るべき内容のあるチームであったと言えるであろう。この9年前のグランドスラムメンバーで現在30歳以下であるのはフランカーのアレクサンドル・ラパンドリ、スクラムハーフのモルガン・パラ、ウイングのバンジャマン・ファル、そしてバスタローである。この中で今年の6か国対抗に出場したのはパラとバスタローである。さらに昨年ジャック・ブルネル監督が就任して以来、ギエーム・ギラド以外に主将を務めたことがあるのはこの2人だけである。しかしながら、2人ともワールドカップの代表候補から外れている。

■バスタローの代役は同年のソフィアン・ギトゥン

 バスタローを外した代わりにセンターに入ってきたのがソフィアン・ギトゥンであることも話題になった。トゥールーズに所属するギトゥンはバスタローと同じ30歳で代表出場歴わずか5試合(バスタローは54試合)で4年ぶりの選出である。バスタローは今回の代表選考に不満と見えて、その後、代表からの引退を表明するとともに所属もトゥーロンからリヨンに移籍したが、これは米国のラグビーリーグであるメジャーリーグラグビーのラグビーユナイテッドニューヨークへ移籍する布石と見られている。

■過去のワールドカップ出場者は9人だけ

 ワールドカップとなれば経験値がものをいうが、これまでのワールドカップの登録メンバーとなったことがあるのは9人だけである。主将のギラドとルイ・ピカモールが2011年大会と2015年大会に出場している。2015年大会のメンバーとなったのがベルナール・ルルー、ガエル・フィクー、ウェスレイ・フォファナ、ギトゥン、ヨアン・ウジェ、そして2011年大会からの復活がマキシム・メダールである。

■経験の浅いメンバーを多く抱え日本に向かう代表チーム

 逆に、今回のメンバーには経験の浅いメンバーが非常に多くなった。37人の平均年齢は26歳、これは決して若くはないが、平均キャップ数はわずかに22である。そして前回紹介したとおり代表出場歴がないのは4人、前回大会は大会中のウジェの負傷によってバックアップメンバーから昇格したレミ・グロッソただ1人であった。それ以外に代表出場歴が5試合以下は7人、すなわちメンバーのほぼ3分の1は代表出場歴が5試合以下である。
 このようなメンバー選出になったのは低迷するフランス代表がメンバーを固定できないということもあるが、ワールドカップ期間中もフランスリーグが開催され、各チームが代表選手をリリースしないからである。これは今回始まったわけではないが、代表チームが低迷し、メンバー選考に苦慮すると浮上する問題である。本連載の熱心な読者の方であれば、なぜあの選手が選に漏れているのか不思議に思われるケースもあるであろう。弱い代表に行くよりは欧州の強豪である所属チームに留まっていたいと選手が思うケースもあるであろう。
 しかし、このメンバーで日本で戦い抜かなくてはならない。フランス代表は6月25日から合宿入り、メンバー全員がそろうのは7月6日である。そして8月にテストマッチを3試合(スコットランドとホームアンドアウエー、ホームでイタリア戦)行って日本に向かうのである。(この項、終わり)

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