第116回 スロベニア、マルタと連戦(1) 苦肉の策の中3日での連戦

■中3日でスロベニア、マルタと連戦

 2004年欧州選手権の予選は9月に始まったが、10月に入って12日と16日に欧州各地で試合が行われ、フランスは12日にスタッド・ド・フランスでスロベニア、16日にマルタでマルタと対戦する。従来、国際試合はシーズン終盤の5月と6月、年末年始に当たる12月と1月などを除いて月に1試合のペースで行われていた。選手の招集も困難なことではなく、代表の試合は月に1回のお楽しみであった。
 ところが、前回紹介したように代表選手の多くが所属するトップレベルのクラブが欧州カップに参戦し、その試合数が増加したこと、ボスマン判決以降、選手の国外移籍が急増したこと、この2つの流れにより選手の招集が困難になってきた。また、1980年代の終わりから東欧諸国の自由化により、数多くの国が誕生した。UEFAの加盟国も1980年代までは約30であったが、東欧の自由化後は約50へと膨れ上がり、試合数も多くなった。その結果考案されたのが、この国際試合を中3日で2試合行う、というアイデアである。
 今回の予選には50チームがエントリーしており、10のグループに分けられている。5チームがホームアンドアウエーで戦うため、各チームは8試合戦うことになる。グループ1に所属するフランスの場合、第1戦は9月7日(アウエー:キプロス)、第2戦は10月12日(ホーム:スロベニア)、第3戦は10月16日(アウエー:マルタ)、第4戦は2003年3月29日(ホーム:マルタ)、第5戦は4月2日(アウエー:イスラエル)、第6戦は9月6日(ホーム:キプロス)、第7戦は9月10日(アウエー:スロベニア)、第8戦は10月11日(ホーム:イスラエル)となっている。5チームがリーグ戦で戦うために必ず試合のないチームが生じる。これ以外にグループ1の試合がある日は2002年11月20日、2003年4月30日、6月7日である。

■前回の欧州選手権予選から始まった中3日の連戦

 このように短期間に連続して2試合を行うようになったのは2000年欧州選手権ベルギー・オランダ大会予選からのことである。それまでも中止になった試合の日程を変更した場合など、変則的なスケジュールで短いインターバルで連戦をこなすケースはあったが、あらかじめ選手の招集の困難さを考慮して中3日での日程を組んだのは前回の欧州選手権予選からであり、2002年のワールドカップ予選でも踏襲されている。2000年欧州選手権予選は中3日の連戦を中心に日程が組まれ、予選を6チームで戦うグループは開幕戦と最終戦以外の8試合は中3日での連戦となっている。したがって、10試合の予選のために協会が欧州各地から選手を10回招集するのではなく、6回だけ招集すればよくなったわけである。今回のフランスも前回の予選同様、8試合中6試合は中3日での連戦であり、選手・選手の所属チーム・協会にとって代表チームの編成は格段に容易になったのである。
 2000年欧州予選の際にフランスは4回の連戦を行っており、連勝したのは最初の連戦(アウエーのロシア戦、ホームのアンドラ戦)だけであるが、その他の連戦では少なくとも1勝はしている。ただ、連戦のうち一方が強敵であり、もう一方が弱小国であるケースばかりであり、弱小国相手の試合で若手を試し、強豪相手の試合ではベテランで戦う、というような戦いも可能であった。当然、このような試合形式では若手中心の構成でファンの期待に応えられない試合も存在してしまう。さらに、それまで月に1回のお楽しみであった国際試合が中3日で開催されるとなるとファンの気持ちの高まりにも水を差すことになる。

■ビッグゲームの趣向をそぐ現在の日程

 代表選手が数多く所属しているビッグクラブが参戦する欧州チャンピオンズリーグの試合数の増加によって代表チームの予選の日程に中3日の連戦が生まれたわけであるが、皮肉なことに欧州チャンピオンズリーグ自体の日程もファンの趣向をそぐようなものになってしまっている。リーグ戦方式の導入については前回問題視したところであるが、完全カップ戦方式の時代、第1戦の2週間後に第2戦が陣地を換えて行われた。第1戦の結果を受けてファンは2週間後の「復讐」あるいは「返り討ち」を楽しみにすることができたのである。ところがリーグ戦になり、そのような構図が崩れ、2週間の楽しみがなくなってしまった。この日程の変更も欧州チャンピオンズリーグの人気が低落した一因であろう。サッカーカレンダーによって欧州のビッグゲームへの関心が低くなってしまったのは残念なことである。
 さて、欧州選手権予選の初戦でキプロスに勝ったフランスは、スロベニア、マルタとの連戦を迎える。久しぶりのホームゲームというのに、試合の3日前になってもチケットはまだ発売中、人気が低落しているのは欧州チャンピオンズリーグだけではないようである。(続く)

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