第866回 イタリアに敗れ、グループリーグ敗退(3) フランク・リベリー負傷、エリック・アビダル退場、フランス完敗

■背水の陣となるワールドカップのファイナリストたち

 2年前のワールドカップのファイナリストたちが背水の陣となったイタリア-フランス戦は6月17日、20時45分にチューリヒのレッジグルント競技場でキックオフされた。同時刻にベルンのスタッド・ド・スイスではオランダ-ルーマニア戦がキックオフされた。前々回の本連載で紹介したとおり、フランスが決勝トーナメントに進出するためには、イタリアに勝利しても、ベルンの試合でルーマニアが引き分け以下でなくてはならない。

■攻撃の軸フランク・リベリーが試合開始早々に負傷

 激しく雨の降る中でキックオフ、まず試合立ち上がり早々にフランスはチャンスをつかむ。2分、3分とCKのチャンスを得るが得点には至らない。しかしその後もフランスはイタリアに対し優勢に試合を進める。守備陣、攻撃陣ともメンバー、システムを入れ替えたレイモン・ドメネク監督の采配が成功しているかに見えた。しかし、9分のことである。攻撃のキーマンであり左サイドの攻撃的MFを務めるフランク・リベリーがイタリアのジャンルカ・ザンブロッタのタックルを受け、うずくまる。リベリーの試合続行は不可能で、フランスのベンチから急遽サミール・ナスリがウォーミングアップを始める。第1戦のルーマニア戦では試合の終盤に登場したナスリであるが、このイタリア戦ではリベリーの負傷によって、早くも10分にピッチに立つことになったのである。2年前のワールドカップで国際舞台に衝撃を与えたリベリーを失った時点でフランスの歯車は狂った。
 選手交代直後にイタリアは初めてのCKを得て、クリスチャン・パヌッチがヘッドでシュート、ゴールネットを揺らしたわけではなかったが、フランスに落ち着きがなくなる。

■臨時ストッパーのエリック・アビダルにレッドカード

 そして運命を変えたのは24分のことであった。ペナルティエリアの中でこの試合ではストッパーに起用されたエリック・アビダルがイタリアのルカ・トニを後方からタックルし、倒してしまう。スロバキア人主審のルボス・ミッシェル氏はアビダルにレッドカードを掲げ、ペナルティスポットを指差す。フランスはリベリーに続き、アビダルをも失ってしまったのである。
 この先制のチャンスにペナルティスポットにボールを置いたのはアンドレア・ピルロであった。2年前のチャンピオンズリーグの準々決勝でリヨンはACミランに敗れているが、その試合でピルロとグレゴリー・クーペは対戦し、ピルロのACミランがリヨンを倒している。ピルロにはそのときのイメージが残っているのであろうか、PKを難なく決めて、先制点をあげる。そしてストッパーを務めているアビダルが退場となったことから、ナスリをベンチに下げて、本来のストッパーの控えであるジャン・アラン・ブームソンを投入する。
 前半はフランスは同点に追いつくことができないまま終了してしまう。そしてもう1つの気になるルーマニアの動向であるが、メンバーを落としたオランダに苦戦し、両チーム無得点である。このまま残り45分が過ぎれば、イタリアが2位通過となるが、フランスが逆転すれば、フランスにチケットが渡される。

■FKが主将ティエリー・アンリに当たりイタリアが追加点

 そして後半開始時は両チームメンバー変更なく後半が開始される。後半が始まって間もない54分、ベルンでの試合でオランダが先制する。イタリア、フランスにとっては願ってもない展開である。そしてこの朗報にまず反応したのはイタリアであった。62分に中央25メートルの位置でイタリアはFKのチャンスを得る。このFKをダニエレ・デロッシが狙う。アンリに当たったボールはコースが代わってゴールに吸い込まれ、2点差となる。
 攻勢をかけて大逆転を狙いたいフランスであるが、リベリーの負傷、アビダルの退場のために、1人少ない人数でさらに交代要員は1人しか残っていない。その残る1枚のカードは66分にシドニー・ゴブーに代えてニコラ・アネルカを投入する。ドメネク監督の秘蔵っ子であるアネルカに期待したいところであるが、フランスの攻撃陣には3点を奪う力どころか、1点返す力もない。
 ベルンの試合は終了間際にオランダが追加点を上げ、グループCの試合は2試合とも2-0というスコアになり、独走するオランダと執念のイタリアが決勝トーナメントに進み、フランスはグループリーグ最下位と惨敗を喫したのである。(この項、終わり)

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