第1409回 初戦はライバル・イングランド戦(1) 「強いフランス」の復活なるか

 昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■欧州選手権の常連国となったフランス

 ポーランドとウクライナで共同開催される欧州選手権は6月8日に開幕する。フランスにとって欧州選手権は1992年大会以来6大会連続9回目の出場となる。6大会連続出場を果たしているのはフランス以外には1972年大会以来11大会連続出場のドイツ(通算でも11回出場)と1988年大会以来7大会連続出場のオランダ(通算9回出場)だけである。通算出場回数についてもフランスと比肩するのは9回出場のスペインと8回出場のイタリア、イングランドくらいであり、1990年代以降のフランスがコンスタントに欧州選手権に出場していることは評価できるであろう。
 第1回の欧州選手権は地元開催で惨敗したが、2回目の出場となった1984年大会も地元開催であり、見事に優勝し、雪辱を果たしているほか、2000年には1998年ワールドカップに次ぐ二冠を達成している。

■2008年欧州選手権、2010年ワールドカップと惨敗続きのフランス

 しかし、前回大会は強豪相手のドローであったとはいえ、グループリーグ1分2敗で惨敗しており、その前の2004年大会もグループリーグは勝ち抜いたものの、準々決勝で伏兵ギリシャに敗れており、2大会連続して不本意な成績となっている。
 今回の欧州選手権は本連載でも取り上げた5年に1度の大統領選挙の後に行われ、フランソワ・オランド新大統領になってフランススポーツ界が国外で迎える最初のビッグイベントである。ニコラ・サルコジ前大統領は「強いフランス」を選挙スローガンとして再選を狙ったが、惜敗し、エリゼ宮をオランド新大統領に譲っている。サルコジ前大統領は「強いフランス」を標榜し、5年前の本連載第713回でもサッカーの世界で強いフランスが実現するのではないかとその期待を寄せたが、実際にはその強いフランスは代表チームの国際的な舞台では実現しなかった。サルコジ政権下で行われたサッカーの国際大会は2回、2008年の欧州選手権と2010年のワールドカップである。2008年欧州選手権についてはルーマニアと引き分け、オランダに歴史的大敗、そしてイタリアに完敗し、1分2敗でグループリーグ最下位となりスイスを去っている。また、2010年ワールドカップでもウルグアイとスコアレスドロー、メキシコに敗れ、チームが分裂状況となり、南アフリカにも敗れてしまい、またもグループリーグ最下位となって南アフリカを去ってしまった。

■強いフランスとは無縁だったサルコジ政権

 このようにサルコジ政権下では2回の国際大会の本大会に出場し、2大会とも1分2敗でグループリーグ最下位、2大会連続で勝利の歓喜から見放されており、大統領としてニコラ・サルコジの標榜した強いフランスを見ることはできなかったのである。
 フランスが国際大会の本大会で最後に白星を挙げたのは2006年のワールドカップ準決勝のポルトガル戦、すでにそれから6年の歳月がたっている。このポルトガル戦には交代出場した選手も含めて14人の選手がピッチに立ったが、そのうち今回の欧州選手権のメンバーに選出されているのはフローラン・マルーダとフランク・リベリーだけである。しかも2人とも先発出場したが、途中で交代しており、ベンチで勝利のホイッスルを聞いたのである。

■23人のメンバーの過去の国際大会出場歴

 今回の23人のメンバーで過去の欧州選手権、ワールドカップへの出場経験をみてみよう。
 2010年のワールドカップに関してはGKのウーゴ・ロリス、DFのガエル・クリシー、パトリス・エブラ、MFのアルー・ディアラ、マルーダ、FWのフランク・リベリーとマチュー・バルブエナの7人に加え、登録されながら出場機会に恵まれなかったのがGKのセドリック・カラッソ、スティーブ・マンダンダ、DFのアントニー・レベイエールの3人である。
 2008年の欧州選手権はDFのエブラ、MFのマルーダ、サミール・ナスリ、FWのカリム・ベンゼマ、リベリーの5人が試合に出場し、GKのマンダンダは試合には出場しなかった。 さらにさかのぼった2006年のワールドカップは先述のマルーダ、リベリーに加え、アルー・ディアラの3人が出場している。
 初戦の相手はイングランドである。イングランドには1997年以降負けていない。強いフランスをこのイングランド戦で見せることができるだろうか。(続く)

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