第405回 フランス勢5チームが越年 (2) 勝者なきパルク・デ・プランス
■ライバルよりも優位な状況のパリサンジェルマン
上位2チームが決勝トーナメントに進出できるチャンピオンズリーグのグループリーグ最終節（第6節）は12月7日と8日に行われた。フランス勢で最終節に決勝トーナメントがかかるのはパリサンジェルマンとモナコであるが、グループHのパリサンジェルマンが火曜日に登場することになった。
前回の本連載でも紹介したとおり、グループHはチェルシーが独走、早々と決勝トーナメント進出を決めて、出遅れていたパリサンジェルマンとポルトが中盤戦で勝ち星を挙げ、勝ち点5で並び、最後方に勝ち点4のCSKAモスクワが控えている。この夜はパリでパリサンジェルマン－CSKAモスクワ戦、ポルトでポルト－チェルシー戦が同時刻（フランス時間で20時45分）にキックオフされた。ホームで最終戦を迎えるパリサンジェルマンとポルトは同勝ち点であるが、直接対決の成績はパリサンジェルマンが上回っている。すなわち、パリサンジェルマンは最終戦でポルトと同様の成績を残せばポルトよりも上位になる。また、相手のCSKAモスクワは今季のチャンピオンズリーグでアウエーでの勝ち星はない。
■パリサンジェルマンが同点に追いつきハーフタイム
パルク・デ・プランスは多くのファンで埋まったが、試合展開はパリジャンの期待を裏切るものとなった。開始早々にモデスト・エムバミが強烈なタックルを受けて負傷退場、試合の歯車が狂う。CSKAモスクワが攻め続け、28分にパリサンジェルマンは予期しなかった先制点を奪われることになる。先制点をあげたのは2年前のワールドカップのロシア代表メンバーだったセルゲイ・セマクである。パルク・デ・プランスの観客にとって気になるのは大西洋岸でのもう1つ試合である。パリサンジェルマンが失点したその直後にポルトもまた失点する。もしこの2試合でホームチームが揃って負けた場合、確かにパリサンジェルマンはポルトより上位にはなるが、CSKAモスクワより下位、すなわち3位にとどまりUEFAカップに転戦することになってしまう。パルク・デ・プランスの観衆の思いが通じたのか、36分に待望のゴールが生まれる。ポルトガル代表のパウレタのシュートのこぼれ球をファブリス・パンクラトが押し込んで同点。パリではタイスコア、ポルトではチェルシーがリードという状態でハーフタイムを迎える。
■ロシア人街を歓喜させたセマクのハットトリック
このまま残り45分が過ぎればパリサンジェルマンが決勝トーナメント進出であったが、後半はパリとポルトで信じられない展開となった。まず、61分にポルトが同点に追いつく。ポルトが同点に追いついただけではパリサンジェルマンの優位は揺らがなかったが、このゴールがパリサンジェルマンの動揺を呼んだのか、64分にセマクが勝ち越し点、さらに69分にはセマクがハットトリックを完成させる3点目。ワールドカップではメンバーに選ばれながら一度も日本の皆さんにそのプレーを見せることのなかった男が大化けした。この段階でパルク・デ・プランスは沈黙する。そしてパルク・デ・プランスに程近いロシア大使館ならびに大使館員の宿舎では歓喜にあふれたのであった。
■終盤にポルトが逆転、パリサンジェルマンはUEFAカップも逃す
しかし、グループリーグ最終戦は常にドラマにあふれている。この夜も例外ではなかった。2点をリードされ、決勝トーナメントは夢と消え去ったと観念したパリサンジェルマンのファン。片やセマクのハットトリックで一気にパリサンジェルマンとポルトを抜き去るかと言う勢いに乗るCSKAモスクワのファン。試合時間も少なくなり次々に攻撃的な選手を投入してもゴールが遠いパリサンジェルマンのファンの望みはポルトが負けること。そうすればUEFAカップへの出場権は獲得できる。一方のCSKAモスクワのファンはパリサンジェルマンとの試合は手中にしたことを確信してはいるが、ポルトの試合でポルトが勝ち越さないことを願うばかりである。
ところが、サッカーの神様は残酷である。パルク・デ・プランス並びのその周囲のロシア人街を失望させるようなゴールが生まれた。フィリップ・トルシエの教え子である南アフリカ代表のベニー・マッカーシーが試合終了間際に決勝点をあげ、前年度欧州王者が欧州一裕福なチームを倒す。マッカーシーのゴールの数分後、パリとポルトの試合は終了する。この結果、前年度覇者のポルトが2位となり、前年度王者が翌年のグループリーグ敗退という今までになかった事態は回避された。CSKAモスクワとパリサンジェルマンはいずれもチャンピオンズリーグ決勝トーナメントを逃し、パリサンジェルマンはUEFAカップ転戦すら逃したのである。（続く）
