第654回 UEFAカップ決勝トーナメントへの道(4) パリサンジェルマン、最終戦でチケットを獲得

■UEFAカップに期待をかけるパリのファン

 決勝トーナメントを目指すUEFAカップでのフランス勢の模様をレポートするのも今回が4話目になるが、ナント言ってもこのグループリーグで最大の話題となったのが11月23日のパルク・デ・プランスでのサポーター死傷事件である。今回はその事件の主となったパリサンジェルマンの戦いぶりを紹介したい。
 グループGのパリサンジェルマンはラピッド・ブカレスト(ルーマニア)、ハポエル・テルアビブ(イスラエル)、ムラダ・ボレスラフ(チェコ)、パナシナイコス(ギリシャ)の順に対戦することになる。この中で力が抜きん出ていると目されているのが最終節でホームで対戦するパナシナイコスであり、全出場チームの中でUEFAのランキングポイントが最上位にあるチームである。したがってそれまでのホーム1試合、アウエー2試合で確実に勝ち点をあげて決勝トーナメント進出を決めておきたいところである。リーグ戦では低調な成績になっており、リヨンが今季も独走している。また、リーグカップもベスト8決定戦でリヨンと対戦するくじ運の悪さもあり、早々と敗退している。したがってパリジャンに残された希望はUEFAカップとフランスカップである。フランスカップは年明けから参戦することから年内の希望はこのUEFAカップである。

■初戦は引き分け、ホームでは歴史的大敗

 しかし、そのパリサンジェルマンの目論見は見事に外れた。まず10月19日にアウエーでラピッド・ブカレストと対戦する。昨季のルーマニアカップの勝者とはいえ、このUEFAカップには予備戦の1回戦からの参戦ということでパリサンジェルマンのほうが力は上である。しかしながらこのチーム相手にパリサンジェルマンは攻めきることができず、スコアレスドローに持ち込まれてしまう。組み合わせを考えれば、アウエーとはいえ、負けに等しい引き分けとなった。
 そしてラピッド・ブカレストとのスコアレスドローの直後にリーグカップでリヨンに敗れ、リーグ戦でも首位から遠ざかっていくパリサンジェルマンのファンにとって待ちに待った試合が11月23日のハポエル・テルアビブ戦であった。ここまで1分1敗のイスラエルからのゲストから勝ち点3を奪うシーンを見ようと2万3000人の観衆が集まった。しかしこの試合はパリサンジェルマンにとっては歴史的な屈辱となる。試合開始早々の3分と7分に立て続けに同じサリム・トアマにゴールを奪われ、早くも2点のビハインド。14分にピエール・アラン・フローが1点を返し、25分にパウレタが同点ゴールをあげる。試合は振り出しに戻ったに見えたが、前半終了間際にハポエル・テルアビブがCKを得てトアマが蹴った球をワリド・バディールがゴールに突き刺す。後半に入ってもハポエル・テルアビブは追加点を上げ、結局パリサンジェルマンは2-4で敗れる。パリサンジェルマンが欧州カップのホームゲームで2点差以上で敗れたのは1984-85シーズンのUEFAカップのベスト16決定戦でビデオトン(ハンガリー)に2-4で敗れて以来のことである。
 そしてその試合後の事件について今回は改めて紹介しないが、試合内容、そして試合後の事件とパリの街はすっかり暗くなってしまったのである。

■10人で守りきり希望をつなぐ

 グループ最下位に沈んだパリサンジェルマンの第4節は同じく勝ち点1で4位のムラダ・ボレスラフとのアウエーゲームである。両チームとも勝ちたい試合だったが、パリサンジェルマンはアマラ・ディアヌが前半終了間際に2回目の警告を受け、退場となる。試合半分を10人で闘わなくてはならなくなったパリサンジェルマンであったが、残り45分を守り抜き、勝ち点1を加えてかすかな希望をつないだのである。

■強豪パナシナイコスに大勝、決勝トーナメントへ

 最終節は12月13日にホームにパナシナイコスを迎える。ホームと言ってもゴール裏は使用禁止となり、ファンの応援は大幅に規制されることになった。相手のパナシナイコスはすでに決勝トーナメント進出を決めており、勝てば勝ち点を5に伸ばし、勝ち点4のラピッド・ブカレストをかわして3位以内に入ることができる。悲観的な予想だったが、パリサンジェルマンは見事に予想を裏切る。パウレタが29分に先制点、47分に2点目を決める。さらに52分、54分と今度はボナバンチュール・カルーが連続ゴールで4-0と完勝、ラピッド・ブカレストだけではなく、ハポエル・テルアビブも抜いて、グループ2位で決勝トーナメント進出を決めたのである。
 この結果、フランス勢はチャンピオンズリーグにリヨンとリール、UEFAカップにボルドー、ナンシー、ランス、パリサンジェルマンと6チームが越年して欧州の頂点を目指すのである。(この項、終わり)

 本年も1年間ご愛読ありがとうございました。読者の皆様よいお年をお迎えください。

このページのTOPへ