第817回 欧州カップ決勝トーナメントへ突入(1) ボルドーは逆転負け、マルセイユ先勝

 1998年2月20日に「J.P.モアンのフランス・サッカー実存主義」でデビューした「J.P.モアン」の執筆活動が10周年を迎えました。この10年間の読者の皆様からのご支援に感謝いたします。引き続き、ご愛読の程よろしくお願いいたします。

■リヨン、ボルドー、マルセイユが出場する欧州カップ決勝トーナメント

 前回の本連載までで紹介したアフリカ選手権が終了すると、欧州カップの決勝トーナメントが始まる。16チームで争われるチャンピオンズリーグは2月19日から、そして32チームで争われるUEFAカップは2月13日から熱戦の火蓋が切って落とされた。
 フランスからはチャンピオンズリーグにはリヨン、UEFAカップにはボルドーとマルセイユが出場することはこれまでの本連載で紹介してきたとおりである。

■優位に立つボルドー、先制点を奪う

 UEFAカップの決勝トーナメント1回戦でボルドーはアンデルレヒト(ベルギー)と対戦する。本連載の読者の皆様であれば両チームは2002-03シーズンのUEFAカップ3回戦で対戦したことを本連載の第148回と第149回で紹介したことをご記憶であろう。このときはアンデルレヒトが1勝1分でボルドーを下している。それから5年の月日が経った。ボルドーを支援するローラン・ルノーは、アンデルレヒトを支援するピエール・イブ・カルパンティエに代わり、盟主の座についており、両者の力関係はこの5年間で変化したと見てよいであろう。しかも、グループリーグで4戦4勝と好成績を収めたボルドーは、ホームアンドアウエー方式の決勝トーナメントの1回戦で第2戦を地元で戦う優先権が与えられた。
 第1戦はブリュッセルで行われた。前半は両チーム無得点、後半に入り、ボルドーのローラン・ブラン監督がまず動き、61分にフェルナンド・カベナギを投入する。2003年のワールドユースの得点王であるカベナギは今シーズンは途中交代出場が多く、今シーズンはこれまで6得点である。しかしその6得点全てがリーグ後半戦に入ってからのものであり、後半戦5試合で6得点と言う驚異的な数字を残している。そのカベナギの存在がアンデルレヒトを必要以上に警戒させたのか、ペナルティエリア内でカベナギを倒してしまう。主審はペナルティスポットを指差し、かつて日本の柏レイソルでも活躍したジュシエがPKを決めてボルドーは敵地で先制する。

■欧州カップ300試合目を逆転で飾ったアンデルレヒト

 その後、アンデルレヒトが攻勢に出て、79分には連続してCKのチャンスをつかむ。チェコ代表のヤン・ポラックのボレーシュートでアンデルレヒトが同点に追いつく。
 試合はこのままロスタイムに入る。3分と表示されたロスタイムであったが、94分を過ぎたところでセンタリングからチャンスをつかんだのがアンデルレヒトであった。ムボ・ムペンザが決勝点となるシュートを決めて、アンデルレヒトは地元で逆転勝利をあげる。実はアンデルレヒトにとってこれが欧州カップの300試合目となる試合であり、没落傾向のあるベルギーサッカーの意地を見せたのである。

■アフリカ選手権に出場した選手の活躍でマルセイユ完勝

 そして同日にマルセイユは地元ベロドロームでスパルターク・モスクワ(ロシア)と対戦した。この組み合わせは1990-91シーズンのチャンピオンズカップ(チャンピオンズリーグの前身)の準決勝の組み合わせと同じである。この17年前の対戦は日本遠征と日程が重なり、コンディション不十分のスパルターク・モスクワに対し、マルセイユがホーム、アウエーとも連勝し、決勝進出を果たしている。
 マルセイユはアフリカ選手権で上位進出したガーナのアンドレ・アユーとカメルーンのモデスト・エムバミがチームに再合流しておらず、CFA2のチームの選手を2名先発させる布陣となった。前半は両チーム無得点であったが、マルセイユが試合を支配する。後半に入って62分、マルセイユは今季オセールから移籍してきたブノワ・シェイルーがこの試合初めての得点をマークする。6分後にはナイジェリア代表としてアフリカ選手権に出場したタイエ・タイウォが追加点を上げる。さらに、84分にはセネガル代表としてガーナから帰ってきたママドゥ・ニアンが3点目を入れる。ベロドロームは久しぶりの勝利に沸く。
 17年前にスパルターク・モスクワと対戦した際はGKが負傷し、ジャン・ピエール・パパンがゴールを守るというアクシデントの末に勝利したマルセイユであったが、今回は3-0と完勝した。そしてその勝利の原動力はアフリカ選手権の準々決勝で敗退したナイジェリア、グループリーグ敗退に終わったセネガルの主力選手たちだったのである。(続く)

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