第1076回 リヨン、レアル・マドリッドを退け8強に進出 リヨン、レアル・マドリッドを退け8強に進出。歴史を再現したミラレム・ピアニッチのゴール

■欧州カップの成績と代表の成績が逆のフランスとスペイン

 前回の本連載ではヨーロッパリーグ1回戦をマルセイユ、リールとも突破したことを紹介した。ヨーロッパリーグは2月25日にベスト16が決定したことを紹介した。その翌週はフランス-スペイン戦を含む代表チームの国際試合があったため、欧州カップは行われなかった。
 年が明けてからの欧州カップで4チームが出場したフランス勢は5勝1分と言う成績、7チームが出場したスペイン勢は2勝5分4敗と対照的な成績であるが、代表同士の試合ではスペインが圧勝している。しかも、フランス代表の選手はスペインを含む他国のビッグクラブに所属している。実に不思議な話である。
 そのスペイン戦の惨敗があけて最初に行われる欧州カップがチャンピオンズリーグのレアル・マドリッド(スペイン)-リヨンの第2戦である。スペイン線のちょうど1週間後の3月10日、舞台はマドリッドのサンチャゴ・ベルナベウ競技場である。7万人の大観衆がレアル・マドリッドの勝利を信じて集まった。これまでに紹介してきたとおり、エル・ブランコことレアル・マドリッドはチャンピオンズカップの創成期こそ決勝でランス(Reims)に勝利するなどフランス勢を圧倒していたが、1992-93のUEFAカップでパリサンジェルマンに負けてからはフランス勢を苦手とするようになった。そして最近のフランスのライバルはこのリヨンであるが、第1068回の連載で紹介したとおり、リヨンとは同じグループリーグに入ったことがあるが、いずれもリヨンではリヨンが勝利し、マドリッドでは引き分けに終わっている。

■22人中9人が1週間前のフランス-スペイン戦に出場

 さて、ピッチにたった22人の選手のうち、1週間前のスペイン-フランス戦に出場していた選手は次の9人である。まず、リヨンはGKのウーゴ・ロリス、MFのジェレミー・トゥーララン、FWのシドニー・ゴブーの3人がフランス代表として出場している。一方のレアル・マドリッドはスペイン代表としてGKのイケル・カシージャス、DFのアルバロ・アルベロア、セルヒオ・ラモス、ラウール・アルビオル、MFのシャビ・アロンソの5人に加え、フランス代表としてラッサナ・ディアラが出場している。

■6分にクリスティアーノ・ロナウドが先制点

 マドリッドのファンは1週間前のスタッド・ド・フランスでの再現を期待している。そして試合はそのマドリッドのファンの期待通りに始まったが、1週間前のスペイン-フランス戦のメンバー以外が試合を演出した。6分にポルトガル代表のクリスティアーノ・ロナウドがスピードを生かし先制点をあげる。これで2戦合計のスコアは1-1となる。圧倒的に試合を支配するレアル・マドリッドの次の1点を期待するサンチャゴ・ベルナベウの7万観衆、そして防戦一方となったリヨンのカウンターアタックからの得点を期待するピレネー山脈の東側のファン、その思いは拮抗した。前半は両チームその後は得点なく、ハーフタイムを迎える。

■歴史を再現したミラレム・ピアニッチのゴール

 後半に入った段階でリヨンは2人の選手を交代させる。交代枠が3人、しかも展開によっては延長戦も想定される中でクロード・ピュエル監督は大胆な選手起用を図る。その選手交代がカンフル剤となったのか、後半開始早々にリヨンはチャンスをつかむが、基本的にレアル・マドリッドが攻め、守るリヨンがカウンターアタックを狙うと言う構図は変わらない。
 そしてそのリヨンの戦略が当たった。75分、セザール・デルガドからリサンドロ・ロペスと言うアルゼンチン代表のコンビがパスをつないでゴール前に球を運び、最後はボスニア・ヘルツェゴビナ代表のミラレム・ピアニッチが至近距離からのゴールを決める。これでリヨンは通算得点で2-1とリードする。ホームのレアル・マドリッドが勝ち抜くには残り15分で2点が必要である。
 もちろん、リヨンは残り15分を守り抜き、この試合は1-1とドローで終え、1勝1分でリヨンがベスト8に進出する。過去2回のグループリーグ同様、リヨンはホームで勝利、アウエーで引き分けと言う理想的なパターンでレアル・マドリッドに勝利した。5月のチャンピオンズリーグの決勝の舞台はここサンチャゴ・ベルナベウ競技場ということでホームで優勝を狙っていたレアル・マドリッドであったが、今季最後の地元での国際試合となってしまったのである。(この項、終わり)

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