第3197回 終盤を迎えた欧州カップ (3) UEFAインデックスで5位を守ったフランス

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■フランスのファンの注目を集めたAZアルクマール

 前々回と前回の本連載では欧州カップの準決勝を戦う12チームに所属するフランス人選手について紹介した。12チームの中でフランス人選手が実質的に所属しているのは8チームであった。フランス人が実質的に在籍していないチームについてもたまたまタイミングの問題で過去には多くの代表クラスの選手が所属しているケースがほとんどである。しかし、その中でフランス人選手と縁がないのがヨーロッパカンファレンスリーグで戦っているオランダのAZアルクマールである。ところがこのチームが準決勝以降の戦いにおいてフランス人選手だけではなく世界のスターがそろいチャンピオンズリーグやヨーロッパリーグを戦うチームよりもフランスのファンの注目を集めているのである。

■5位争いの国から唯一準決勝に残ったAZアルクマール

 その理由は本連載でもしばしば取り上げたUEFAインデックスにある。第3182回で紹介した通り、UEFAインデックスは欧州カップにおける各チームの成績をベースによって算定され、これによってUEFA主催のチャンピオンズリーグ、ヨーロッパリーグ、ヨーロッパカンファレンスリーグの出場数、出場段階が決まる。シーズ開始時点でフランスは5位であるが、6位ポルトガルと7位オランダが迫る。
 この3つのリーグから準々決勝に残ったのはフランスのニース(ヨーロッパカンファレンスリーグ)、ポルトガルのベンフィカ(チャンピオンズリーグ)とスポルティング(ヨーロッパリーグ)の2チーム、オランダのフェイエノールト(ヨーロッパリーグ)とAZアルクマール(ヨーロッパカンファレンスリーグ)であるが、準決勝に進出できたのはヨーロッパカンファレンスリーグのAZアルクマールだけであった。すなわち、フランスとポルトガルはポイントを積み上げることができない。7位だったオランダがポルトガルをかわして6位に浮上、そして準決勝以降にポイントを積み上げる可能性がある。フランスが5位の座を守れるかどうかはAZアルクマールの準決勝以降の成績による。

■チャンピオンズリーグ出場枠が増える5位の国

 UEFAインデックスをもとにした欧州カップの出場数は2024-25シーズンから変更される。特に5位のリーグに関してはこれまでチャンピオンズリーグには3チーム(うち1チームは予備戦から)の出場枠が与えられたが、これが4チーム(うち1チームは予備戦から)となる。ところが6位となるとこれまで通りの3チーム(うち1チームは予備戦から)となる。したがって、どの国も5位に入りたいところである。
 数字の上ではAZアルクマールが準決勝の2試合、決勝の1試合で3連勝すると、オランダがフランスをかわして5位になることになる。
 オランダが5位になれば今世紀に入ってから初めてのことであり、それがちょうどチャンピオンズリーグへの出場枠が広がるシーズンになる。現在国内ではフェイエノールト、PSVアイントフォーヘン、アヤックスに次ぐ4位にあるAZアルクマールは自らの力でチャンピオンリーグ出場への道を開くことになる。

■グループリーグから無敗のウェストハム・ユナイテッドが逆転勝利

 そのAZアルクマールの準決勝の相手はイングランドのウェストハム・ユナイテッドである。ハマーズのニックネーム、ロンドンでは圧倒的な人気を誇るチームである。そしてアルフォンス・アレオラ、クルト・ズーマというフランス代表クラスの選手を擁する。昨季はプレミアリーグで7位に入り、前年のヨーロッパリーグに続き、ヨーロッパカンファレンスリーグに出場した。
 グループリーグでは6戦全勝、決勝トーナメントに入っても1回戦はキプロスのAEKラルナカに連勝、準々決勝はベルギーのヘントにアウエーで引き分けたものの、ホームでは勝利し、圧倒的な強さを見せて準決勝に進出した。フランス勢のアレオラ、ズーマともに先発出場する。
 試合はウェストハム・ユナイテッドが支配しながらも前半41分にAZアルクマールが先制する。しかしロンドン競技場の6万近い観衆の声援を受けたウェストハム・ユナイテッドは相手GKのファウルで得たPKをサイード・ベンラーマが決めて同点とする。さらに76分にはミカイル・アントニオが勝ち越しゴールを決め、ウェストハム・ユナイテッドが先勝する。これでフランスは5位をキープ、チャンピオンズリーグの出場枠4を獲得したのである。(この項、終わり)

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