第3548回 パリサンジェルマン、5年ぶりの決勝進出 (1) アーセナルを率いるミケル・アルテタ

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■10月のリーグフェーズで敗れたアーセナルと準決勝で再戦

 チャンピオンズリーグになって初出場したイングランドのアストン・ビラを準々決勝で下したパリサンジェルマン、準決勝の相手は同じイングランド勢のアーセナルとなった。アーセナルは昨季のプレミアリーグで2位、第2シードとして今大会に参戦した。リーグフェーズの第2節でパリサンジェルマンとはロンドンで対戦、本連載の第3440回で紹介した通り、前半にカイ・ハバーツとブカヨ・サカがゴールを決めたアーセナルが2-0で勝利している。アーセナルはリーグフェーズを3位で通過する。逆に国内外で今季初の黒星を喫したパリサンジェルマンはこの敗戦でチャンピオンズリーグでは低迷、終盤に白星を重ねたが、15位でリーグフェーズを終えた。
 10月の試合内容からはパリサンジェルマンはアーセナルにはかなわないと思われたが、年が明けてからの欧州でのパリサンジェルマンは安定した成績を残している。そしてなんといっても国内リーグですでに優勝を決め、残っているタイトルは決勝進出を決めたフランスカップとこのチャンピオンズリーグだけ、毎週末に行われるプレミアリーグと週の半ばに行われるチャンピオンズリーグの選手起用に頭を悩ませなくてはならないのがアーセナルである。

■パリサンジェルマンで実質プロデビューしたミケル・アルテタ

 そのアーセナルを率いるのはミケル・アルテタ、バスク地方出身のスペイン人である。MFとしてバルセロナでプロ契約したが、全く出場することができなかった。このアルテタに注目したのが当時のパリサンジェルマンのルイ・フェルナンデス監督であった。フランス代表として活躍したが、もともとはスペイン生まれ、スペインのサッカーに関心を持っていたのであろう。強豪とはいえ、出場試合ゼロのアルテタをレンタルで獲得、アルテタはここで初めてプロとしてトップレベルの試合に出場し、2000-01シーズンの半ばから2001-02シーズン終了までパリサンジェルマンでリーグ戦だけではなく、チャンピオンズリーグにも出場したのである。レンタル期間が終了する際にパリサンジェルマンとの完全移籍も検討されたが、スコットランドのグラスゴー・レンジャースに移籍する。2シーズン後に母国スペインのレアル・ソシエダに移籍したが、どうもスペインのチームとの相性がよくないようで、出場試合数も少なく、イングランドのエバートンに移籍、ここで6シーズン、さらに2011年にはアーセナルに移り、5シーズン活躍して現役を引退する。

■2019年から古巣アーセナルの監督を務め、安定した好成績を残す

 現役引退後は同じイングランドのマンチェスター・シティでコーチとなり、2019年の暮れにアーセナルの監督に就任する。就任初年にはFAカップで優勝し、リーグ戦でも安定した好成績を残しており、指導者としても高い評価を受けている。
 アルテタにとっての転機はパリサンジェルマンへのレンタル移籍であるが、当時もバルセロナの中盤は充実しており、その中にはルイス・エンリケ、現在のパリサンジェルマンの監督もいたのである。
 そのアルテタにとって選手としての実質的なスタートとなった古巣のパリサンジェルマンとの対戦は多くの思いがあるであろう。そして、そのパリサンジェルマンの指揮官は自らがプロ契約した際に厚い壁となったルイス・エンリケである。

■リーグフェーズでホームで勝利したチームは決勝トーナメントで敗退

 アルテタとパリサンジェルマンの関係は10月のリーグフェーズでの対戦の際も話題となったが、決勝トーナメントでの再戦となって、その縁が再度注目されている。  リーグフェーズで対戦したチームが決勝トーナメントで再戦するケースはプレーオフでユベントス(イタリア)-PSVアイントホーフェン(オランダ)戦、ベスト8決定戦でクラブ・ブルージュ(ベルギー)-アストン・ビラ戦とベンフィカ(ポルトガル)-バルセロナ戦、準々決勝でバルセロナ-ボルシア・ドルトムント(ドイツ)戦がある。リーグフェーズでホームで勝利したチーム(ユベントス、クラブ・ブルージュ)はいずれも決勝トーナメントで敗れている。さて、アーセナルはどうなるだろうか。(続く)

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