第410回 波乱の予感するフランスカップ(1) 7回戦・8回戦ハイライト

■9回戦に相当するベスト32決定戦から1部リーグ勢が参戦

 前回の本連載で年末年始の小休止をはさんでリーグ戦は後半戦に突入、フランスカップは年明けから1部勢が登場すると紹介した。新年始まって最初の週末に行われるのはフランスカップで9回戦に相当するベスト32決定戦である。フランスカップのベスト32決定戦はこれまでの連載で何度も紹介している通り、いわゆるジャイアントキリングが多発し、多くの1部勢が初戦敗退の憂き目に遭っている。
 ジャイアントキリングの理由は様々であるが、そのうちの一つに休み明けに行われることから各チームのコンディションが十分に整っていないことがあげられる。もちろん、年末年始の休暇中に各チームとも合宿や練習試合を行っているが、1部リーグのチームに一泡吹かせてやろうという下位チームの意気込みが上回ることが番狂わせを呼び起こすのである。
 さて、今年のベスト32決定戦には64チームが出場するが、その内訳を見ると、1部20チーム、2部11チーム、ナショナルリーグ3チーム、アマチュアリーグ14チーム、アマチュア2部リーグ6チーム、DHリーグ9チーム、上級地域リーグ1チームという内訳である。

■7回戦で注目を集めたジャン・ピエール・パパン

 2部リーグのチームは11月19日から21日にかけて行われた7回戦から参戦した。昨年度優勝チームとみなされるシャトールーは1部リーグチームなみにベスト32決定戦からの出場が認められたため、それ以外の19チームが出場した。この19チームのうちディジョン、ラバル、ニオール、ロリアンの4チームが早々と姿を消した。
 そしてこの7回戦では、ジャイアントキリングだけではなく、DHリーグのチーム同士の一戦であるタルベ-アルカション戦にも多くの関心が寄せられた。南西部のチーム同士の戦いとなったが、アルカションはDHリーグでシーズン開幕以来11戦無敗、得点36に対し失点はわずかに3、そしてその快進撃の理由が今シーズンからこのチームの監督にジャン・ピエール・パパンが就任したからである。かつてマルセイユの黄金時代を支え、現役引退後は解説者として活躍したパパンが指導者としての道をこのアキテーヌ地方のチームで歩み始めたのである。試合は残念ながら両チーム無得点のままPK戦となり、パパンの夢はここで破れたが、指導者としてのパパンの力量を示すにふさわしいものであった。

■8回戦でも5チームが姿を消した2部リーグ勢

 12月10日から12日にかけて行われた8回戦では7回戦を突破した2部リーグ15チームが出場した。不思議なことに2部リーグ同士の対戦はなく、全15チームが下位リーグのチームとの対戦となったが、ルアーブル、クレテイユ、グーニョン、モンペリエ、アミアンの5チームが足元をすくわれている。
 毎年現れる「シンデレラチーム」であるが、今年は7部リーグに相当する上級地域リーグからラングーがベスト32決定戦に進出した。また、8回戦では6部リーグに相当するDHリーグのチームが3つも2部リーグのチームを下している。アグノーがグーニョンをPK戦で下し、ローヌ・バレーはモンペリエに1-0、そしてソーミュールはアミアンに2-0というスコアで勝利している。この7回戦や8回戦が行われたのは2部もリーグ戦の最中であり、コンディションの問題はない時期である。それでもこれだけのジャイアントキリングが起こったことから、新春に行われるベスト32決定戦は今年も波乱の連続となるであろう。

■2005年の幕開けはリール-ルマン戦

 その波乱の予感のするベスト32決定戦であるが、シンデレラチームのラングーはパリサンジェルマンと対戦する。パリサンジェルマンは昨年本連載でも紹介したバイヨンヌ戦に続き、シンデレラチームとの対戦となった。今回はラングーが近隣のガンガンのスタジアムで首都の人気チームを迎える。
 そしてこれらの32試合は3日間にかけて行われ、キックオフの時間もまちまちであるが、最初にキックオフされる試合は7日19時からのリール-ルマン戦である。前回の本連載で紹介した上り調子のリール、そして日本で天皇杯を制し、2か国でカップ制覇を狙う松井大輔が所属するルマン、新しい年の幕開けを飾るにふさわしいカードである。(続く)

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