第682回 4強が決定したフランスカップ(1) 四冠狙うリヨンに暗雲

■役者のそろった16強

 2月に入り、7日にはフランスとアルゼンチンの代表の試合が行われたが、クラブレベルでも国際試合が始まった。チャンピオンズリーグ、UEFAカップともそれぞれ決勝トーナメントに突入する。そして後半に入ったリーグ戦はリヨンが失速しながらも大量の貯金を抱えてリード、フランスカップは1月末にベスト8決定戦、そして2月末に準々決勝が行われ、2月末にはベスト4が出そろうことになる。
 1部リーグ勢の初戦となるベスト32決定戦ならびについては本連載第658回から第660回、1月中旬に行われたベスト16決定戦については本連載第664回で紹介したとおりであるが、ジャイアントキリングは例年に比べて少なく、順当に勝ち進んだ上位チームが多かった。
 ベスト8決定戦は1月30日と31日にそれぞれ4試合ずつ行われたが、1部リーグ11チーム、2部リーグ2チーム、ナショナルリーグ2チーム、CFA1チームという顔ぶれである。1部リーグの中では注目はリーグ戦で独走をするリヨン、リヨンを追うボルドー、リール、ランスなどのリーグ戦上位チームに加え、リーグ戦では不振ながらカップ戦では無類の強さを発揮するパリサンジェルマン、人気チームのマルセイユ、モナコと役者はそろっている。

■欧州で40年ぶりの四冠を目指すリヨン

 その中で注目はリヨンであろう。他のタイトルについてはチャンピオンズリーグではグループリーグを首位で突破、国内リーグでは独走、そしてリーグカップでは決勝進出を決めており、このフランスカップを含めてこれまでにフランスサッカーでチャンピオンズリーグを獲得したチームもなければ、国内三冠を達成したチームもない。今年のリヨンはこれまでのフランスのチームが果たすことができなかった2つの夢を実現する可能性を持ったチームである。
 さらに、国内三冠(リーグ戦、カップ戦、リーグカップ戦)と欧州でのタイトルをあわせた四冠となると、これまでに達成したチームは欧州でも1チームしかない。それは現在中村俊輔が所属するセルティック・グラスゴーであり、1966-67シーズンのこと、すなわち40年前のことなのである。

■フランスカップを苦手とするリヨン

 その偉大なる記録に近づこうとしているリヨンであるが、フランスカップ獲得のための障壁は少なくない。まず、リヨン自身がフランスカップを得意としていないことである。リヨンが最後にこのタイトルを獲得したのは1973年のことである。現在のリヨンのメンバーでこの時に生まれていた選手は1972年の大晦日に生まれたGKのグレゴリー・クーペだけである。
 そして近年、リーグ戦を5連覇している間ですら、優勝だけではなく上位進出もままならず、過去5年間の成績を振り返ると、2001-02はベスト16決定戦で2部のシャトールーに敗退、2002-03シーズンは初戦であるベスト32決定戦でCFAのリブルン・サンスーランに敗れている。そして2003-04シーズン、2004-05シーズンはともに2戦は勝利したが、ベスト8決定戦でモナコ、クレルモンに敗れている。そして昨年はこの期間中で最高の準々決勝に進出したが、マルセイユに1-2と敗れている。このように5連覇中のリヨンのフランスカップの成績は8勝5敗という成績であり、この中に下部リーグのチームとの対戦も含まれていることを考えると相当苦手にしているとしか言えない。

■年明け後に調子を崩したリヨンにマルセイユが挑戦

 さらに気がかりなのが年が明けてからの戦いぶりである。年が明けてからのリヨンの成績は3勝1分2敗であるが、1部リーグ勢相手の勝利はリーグカップ準決勝のルマン戦だけである。リーグ戦に関してはリヨンは前半戦を16勝2分1敗と独走したが、後半戦に入って崩れる。まずトゥールーズにアウエーで0-2と敗れて波乱のスタートとなる。さらにホームに戻ってきてボルドーと対戦するがここでも1-2と連敗する。そして1月27日にはニースとホームで対戦し、ようやく引き分けに持ち込むと言う始末で、リーグ戦再開後1分2敗と勝ち星がない。フランスカップでは勝ちあがってきたが、この2勝はアマチュア相手であった。
 このリヨンと1月最後の日に行われるフランスカップベスト8決定戦で対戦するのがマルセイユなのである。(続く)

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