第1202回 早くも大荒れのフランスカップ (4) マルセイユが2部首位のエビアンに敗れ、不名誉な新記録

■アマチュアチームとして最大の予算規模を誇るカンヌと対戦するレンヌ

 フランスカップベスト32決定戦の実質的な最終日である1月9日には1部から4チームが登場するが、夕暮れ時までに登場したナンシーとブレストはかなりレベルの離れた下位のリーグのチーム相手に大苦戦した模様を前回の本連載では紹介した。
 残るレンヌとマルセイユのうちいずれかが敗れるようだと1部勢は不名誉なワースト記録を2つも作ってしまうことになる。ジャイアントキリングはファンにとっては楽しみであるが、ここまで上位勢が倒れていくようだと逆にフランスカップの興がそがれるのも事実である。
 そのようなプレッシャーの中でリーグ3位のレンヌが姿を現す。日も暮れ、寒さも厳しくなった17時45分にキックオフされる試合の相手はカンヌである。カンヌは若手育成に定評のあるチームでジネディーヌ・ジダン、パトリック・ビエイラを輩出したことで有名である。1990年代は1部に所属しており、UEFAカップにも出場したことはあるが、2004年にプロとしてのステータスを放棄し、現在は3部リーグに相当するナショナルリーグで活動している。レンヌの所属する1部とは2つのカテゴリーの差があるナショナルリーグであるが、カンヌの年間予算は600万ユーロ、これはフランスのアマチュアチームとしては最大の規模であり、侮れない相手である。

■レンヌ、記録的なゴールラッシュで難敵を一蹴

 しかし、試合前の心配とは裏腹に、レンヌは素晴らしい試合を展開した。15分のアレクサンドル・テティの先制点がゴールラッシュの始まりであった。20分と24分にはコロンビア代表のビクトール・モンターニョが連続ゴールで3-0と序盤で大差をつける。30分にはフランス代表のヤン・ムビラのゴールで4-0となり、ハーフタイムを迎える。
 後半に入っても赤と黒のレンヌは黄色いユニフォームのカンヌを圧倒し続ける。64分にはテティがゴール、69分にはギニア代表のアドゥル・カマラのゴールで6-0、そして最後のゴールは77分のヤシン・ブライミであり、終わってみれば7-0という大差であった。今年のフランスカップのベスト32決定戦では大差の試合としては4点差が2試合あるだけであり、7点差というのは最大である。レンヌにとってフランスカップの7点差勝利は23年ぶりのことである。さらにリーグ3位とはいえ、前半戦18試合でわずか18得点のレンヌが1試合で7得点もあげたことは驚きである。

■2部昇格初年で前半戦の首位になったエビアン

 そして、結びの一番にはマルセイユが登場する。マルセイユの相手はエビアンである。本連載の読者の方もエビアンというサッカーチームにはあまりなじみがないのではないだろうか。エビアンの正式名称はエビアン・トノン・ガイヤールFCである。もともとガイヤールにあったサッカークラブが合併や収容人数の確保のために本拠地をトノンに移転をし、クロワ・ド・サボワ74というチームになる。そして2009年に現在のチーム名称となり、昨年4月には2部昇格を決める。ここでもまた本拠地の収容人数が問題となり、当初はスイスのジュネーブを本拠地にする予定だったが、UEFAから承認されず、アヌシーを本拠地とする。
 かつてマルセイユやフランス代表でも活躍したベルナール・カゾニを監督として迎え、昇格初年の前半戦は8勝8分3分という成績で堂々の首位折り返しである。

■マルセイユ力負け、1部10チームが初戦敗退、8チームがジャイアントキリングの犠牲に

 マルセイユにとっては非常に手ごわい相手と対戦することになり、アヌシーに乗り込んだのである。アヌシーの運動公園競技場は1万3000人の満員の観衆で埋まる。2部のリーダーが1部の5位を迎える試合、マルセイユのディディエ・デシャン監督も緊張の1戦である。そしてエビアンは12分に先制点を奪とすかさず16分に追加点をあげ、優位に試合を進める。マルセイユはオウンゴールで59分に1点差に詰め寄ったが、終盤の86分にエビアンは3点目を入れてマルセイユを突き放す。  マルセイユは1-3と敗れ、1部勢の中でベスト32決定戦で10チーム目の敗退チームとなり、下位のチーム相手に敗れた8番目のチームとなり、これらはいずれも新記録となったのである。(この項、終わり)

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