第1969回 荒れに荒れたフランスカップ (3) ジャイアントキリングを許さなかったリヨンとトロワ

 5年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■順当な結果となった1部勢同士の対戦

 前々回と前回の本連載ではフランスカップベスト16決定戦うち1部勢同士の対戦となるパリサンジェルマン-トゥールーズ、GFCアジャクシオ-ギャンガン、アンジェ-ボルドー、マルセイユ-モンペリエの4試合を紹介してきた。この4試合、パリサンジェルマン、マルセイユ、GFCアジャクシオ、ボルドーが勝利し、ボルドー以外はリーグ戦で上位のチームが勝利した。また3位のアンジェに勝利したボルドーにしても昨年12月の初めからリーグ戦で無敗であり、調子のよいチームが勝利し、この4試合を見る限りは順当な結果となった。

■ベスト32決定戦で唯一1部勢を倒したシャンブリー、リヨンに負ける

 しかし、これ以外の1部勢、すなわち下部リーグのチームの挑戦を受ける9チームの試合はジャイアントキリング続出となったのである。
 1部勢と下部リーグ勢の試合で最も注目を集めたのはシャンブリー-リヨン戦である。シャンブリーは本連載第1956回で紹介した通りナショナルリーグに昇格したばかりであるがベスト32決定戦ではスタッド・ド・ランスを下し、2部以下のチームで唯一1部のチームに勝利している。しかもウィルフリード・ルイジ・ダニエルのハットトリックを含み4-1とスコアの上でも大勝している。
 対するリヨンは前週に行われたリーグカップの準々決勝ではパリサンジェルマンに敗れており、フランスカップでもこの段階での敗退は避けたいところである。シャンブリーは40キロ離れたボーベで1万人近いファンとともにリヨンを迎え撃つ。  パリサンジェルマンにリーグカップで敗れたが、このフランスカップベスト16決定戦の直後にはリーグ戦でマルセイユと対戦するリヨンはチームのコンディションを整えてこの1戦に臨んだ。前半の20分にコルネ、その直後の22分にはマチュー・バルブエナが得点をあげ、シャンベリーの意気を消沈させる。リヨンは唯一のジャイアントキリングチームに対して順当勝ちした。

■リーグ最下位のトロワもコンカルノーの挑戦を退ける

 また、リーグ戦ではいまだ勝ち点8と最下位のトロワはブルターニュに遠征、CFAのコンカルノーと対戦する。コンカルノーはCFAのグループDで現在首位と好調であり、ジャイアントキリングの予感はしたが、トロワはコランティン・ジャンが2点をあげて先行、コンカルノーを3-1と下す。
 このようにジャイアントキリングが期待される2カードは1部のリヨンとトロワが勝利する。

■先行しながら追いつかれ、延長戦で勝利したモナコとロリアン

 しかし、これ以外の7チームは苦戦する。勝ち抜いたものの苦戦したのがモナコ、サンテチエンヌ、ナント、ロリアンである。
 モナコは2部のエビアンとアウエーで対戦する。11月8日以来無敗のモナコは順位を上げてリーグ3位である。エビアンはサフェット・スシッチを監督として臨んだシーズンであったが、シーズン途中でロマン・ルベリに交代したものの、功を奏さず、2部で15位、ナショナルリーグへの降格の危機もぬぐえない。両チームの状況を反映したような試合展開となりモナコが一方的に攻めるがなかなかゴールを奪えない。ようやくモナコが得点をあげたのは前半のロスタイム、ラシナ・トラオレがヘディングで先制点を奪う。
 このままモナコが畳み込むかと思われたが、なかなか追加点をあげることができず、逆に63分にはエビアンに追いつかれてしまった。逆に後半はエビアンが盛り返す。モナコはトラオレをベンチに下げるなど思い切った選手交代をするが、決勝点を奪うことができず、試合は延長戦に突入する。
 延長戦で先手を取ったのはモナコ、延長前半の103分にマリオ・パサリッチが勝ち越し点をあげ、終了間際の119分にもエルデル・コスタが追加点をあげ、3-1とエビアンを振り切った。
 ロリアンも似たような展開で勝利をものにした。相手はブローニュ・シュール・メール、ジャン・ピエール・パパンの故郷であり、1部に昇格したこともあったが、現在はナショナルリーグ。ロリアンは後半の立ち上がりの49分にモリイケ・フォフォナが先制するが、76分に追いつかれて延長戦に入る。延長戦ではバンジャマン・ジャンノが延長前半と後半に1点ずつ挙げて、3-1と振り切ったのである。(続く)

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