第3138回 16強を争うフランスカップ (3) 初主将キリアン・ムバッペ、1試合5ゴールの活躍

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■下部リーグ勢の挑戦をすべて退けた1部勢

 前回の本連載ではフランスカップベスト16決定戦の1部勢同士の対戦を紹介し、RCランス(リーグ2位)、マルセイユ(3位)、トゥールーズ(12位)がそれぞれリーグ戦では下位のチームに順当勝ちしたことを紹介した。
 1部勢は、前回紹介した6チーム以外の8チームは下部のリーグのチームと対戦したが、すべて挑戦を退けている。対戦相手がプロチームだったのは3チームである。ロリアンは2部8位のバスティアとアウエーで対戦し、終盤に先制したが、追い付かれてしまい、PK戦となったが、PK戦では4人連続で成功させて、ベスト8決定戦へ進んだ。オセールは2部19位と不振なニオールとアウエーで対戦したが、前半からゴールを重ねて4-0と大勝した。リールは2部15位のポーを本拠地に迎える。前半のうちにオウンゴールで先行し、後半にも追加点を入れて勝利する。
 その他の1部勢はアマチュアのチームと対戦したが、苦戦したのはナショナル3部(5部に相当)のタンと対戦したナントくらいであろう。得点を奪うことができず、0-0のまま90分が終わる。PK戦でようやくベスト8決定戦への道を開いた。
 それ以外にベスト8決定戦に進んだ1部勢を紹介するとリヨン、スタッド・ド・ランス、アンジェ、パリサンジェルマンであり、いずれもアマチュアチームと対戦して勝利している。

■1部勢連破はならなかった地域1部のストラスブールケーニクショファン

 その中でも注目を集めたのがアンジェとパリサンジェルマンである。両チームはベスト16決定戦に参戦したチームの中では最も低い6部リーグに相当する地域1部のチームとアウエーで対戦している。
 アンジェの相手はストラスブールケーニクショファンである。このチームについては本連載第3134回で紹介している通り、ベスト32決定戦で1部のクレルモンを下している。100年を超えるフランスカップの歴史の中で6部相当のリーグに所属するチームが1部のクラブを破ったのは4回目のことであり、センセーションを巻き起こした。日本の川島永嗣が所属するRCストラスブールの本拠地ラメノー競技場には1万8000人のファンが集まった。試合は立ち上がりからアンジェが攻め続け、16分に先制点を奪う。アンジェの一方的な試合となったが、ストラスブールケーニクショファンはよく守り、追加点を許さなかったが、ストラスブールの小クラブの夢はここで敗れたのである。

■ランスでパリサンジェルマンを待ち受ける地域1部のペイ・ド・カセル

 そして、パリサンジェルマンは前々回の本連載で紹介した通り、11月に行われた8回戦で起こったトラブルの余波を受け、対戦相手がなかなか決まらなかった。その対戦相手はこの戦いの中で最下部の地域1部リーグに所属するペイ・ド・カセルとなった。序二段と三段目の取り組みで両者敗退となって序の口力士が不戦勝で横綱と対戦する権利を得たかと思われたが、取り直しとなって土俵の上で横綱への挑戦権を自力で獲得した。会場となったランスのフェリックス・ボラール競技場は3万8000人近い大観衆が集まったのである。

■初めて主将を務めたキリアン・ムバッペ、クラブ新記録の1試合5得点

 パリサンジェルマンはリオネル・メッシは欠場したが、ネイマールとキリアン・ムバッペは出場する。ムバッペは初めてパリサンジェルマンの主将を務めた。このムバッペが大活躍をする。守備を固めたペイ・ド・カセルに対し、得点をなかなか奪えなかったが、29分に左サイドを攻めあがったヌーノ・メンデスからのクロスを決めたのがムバッペであった。ここからパリサンジェルマンのゴールラッシュとなる。33分にはネイマールとムバッペのワンツーからネイマールが追加点、35分にはダニーロ・ペレイラからのロングフィードをムバッペが決めて3-0とする。41分にはムバッペはゴールを決めて、前半のうちにハットトリックを達成した。
 後半になってもパリサンジェルマンの勢いは止まらず、ムバッペが2ゴール、カルロス・ソレールが1ゴール、パリサンジェルマンは7-0と大勝した。そしてムバッペは1試合5得点、これはパリサンジェルマンの公式戦における個人最多得点という新記録となり、初めてキャプテンマークを巻いた試合で伝説を作ったのである。(続く)

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