第56回 2001-02フランス・サッカー・フィナーレ(1) 大詰めを迎えたリーグ戦

■大統領選挙の陰に隠れたサッカー

 ワールドカップを控え、例年より若干早めのスケジュールとなった2001-02シーズン。フランス勢の欧州カップでの敗退については本連載の第39回から第43回にかけて紹介したとおりであるが、ワールドカップ前にフランスでトップレベルのサッカーを見ることができるのはあとわずかになってしまった。リーグ戦は4月27日に第33節、5月4日に最終節となる第34節が行われる。リーグ戦終了後は5月11日のフランスカップの決勝、5月18日の代表のベルギーとの親善試合だけであり、リーグカップはすでに4月20日に決勝が行われ、ボルドーがロリアンを3-0で下して初優勝している。サッカーはシーズン終盤を迎えているが、国民の関心事は5月5日に決選投票が行われる大統領選挙である。大統領選挙の年にフランスがワールドカップ本大会に出場するのは史上初めてのことであるが、少なくとも5月初めまでカフェの話題はサッカーファンのジャック・シラクとサッカー嫌いのジャン・マリー・ルペンで争われる決選投票の勝敗予想が中心になるだろう。

■ランスの独走が崩れ、リヨンとオセールが肉薄

 しかしながら、史上最多の16人が立候補し、4月21日の第1回投票でルペンが大番狂わせをおこした大統領選挙に勝るとも劣らずスリリングな展開となっているのが今年のフランスリーグである。フランスリーグの状況についても本連載でも断片的に紹介してきた。昨年7月に開幕し、秋の段階では前年の覇者ナントが全く振るわず、初勝利は10月27日の第12節のソショー戦、第4節から第19節まで最下位を低迷していた。この時期、ランス、リール、オセール、リヨンなどが上位を争っていた。その中で一歩抜け出したのがランスである。ランスは10月20日の第11節で首位に立ってからその座を譲ることなく、6人の選手を派遣したアフリカ選手権の期間中も勝ち星を重ね、このまま優勝をするかという勢いであった。ところが、ランスは3月6日の第28節でレンヌに勝ってから4試合連続で勝利を逃し、勝ち点は61、得失点差は+24である。
 11月17日の第14節以降2位の座をキープしてきたリヨンは堅実な戦いで勝ち点60、首位ランスとの勝ち点の差は2試合を残してわずか1となり、しかも得失点差は+27とランスを上回っている。また、リヨンと勝ち点2差で3位オセールが勝ち点58で続き、1位と3位の勝ち点の差は3という大混戦になってしまった。
 優勝争いはこの3チームに絞られたが、4位のパリサンジェルマンもオセールと1ゲーム差となる勝ち点55であり、来年の欧州カップの好条件での参戦を目指して一つでも順位を上げておきたいところである。

■興味深い残り2節の行方

 さて、各チームの残り2試合の組み合わせに注目してみよう。まず4位のパリサンジェルマンは第33節でメッス、最終節はリールと遠征が続く。メッスは現在16位。もう少しわかりやすく表現するならば下から3番目でしかも17位のガンガンとは同勝ち点であり、得失点差で上回っているだけである。下位相手とは言え、2部降格を回避しようとするメッスは難敵である。さらに最終節のリールはパリサンジェルマンと勝ち点3差の5位である。4位になればUEFAカップに出場、5位以下ならばインタートト出場となる。特に今年はワールドカップ開催のため変則的なスケジュールとなり、インタートト出場は避けたいところである。4位以上を目指すリールとしては絶好の直接対決である。
 3位のオセールは第33節でモナコに遠征、最終節はホームにレンヌを迎える。昨年に続き精彩を欠くモナコは、現在12位で数字の上では連勝すればインタートト出場、連敗すれば2部降格もあり得る。15位のレンヌは16位のメッス、17位のガンガンと勝ち点3差、第33節の結果次第では形相を変えたレンヌがオセールに襲い掛かることになる。
 2位のリヨンは第33節でボルドーに乗り込む。ボルドーは現在6位で4位のパリサンジェルマンとは勝ち点5差であり、UEFAカップ本戦ストレートインを虎視眈々と狙っている。しかも3月10日にオセール、3月17日にランスを連破し、上位相手となるとここ一番の力を発揮する。
 一方、首位ランスは第33節で17位のガンガンを迎える。レンヌ、メッス、ロリアンと降格争いを演じているガンガンは首位相手のアウエーゲームとは言え、勝ち点3を狙ってくるはずである。

■最終節でランスとリヨンが直接対決

 そしてランスとリヨンが最終節で直接対決という最高のカードがリヨンのジェルラン競技場で行われるのである。第33節でリヨンがアウエーで負け、オセールがアウエーで負けか引き分け、しかもランスがホームで勝つ、というケース以外では最終節で雌雄を決することになるのである。さらに第33節の結果によってはオセールの大逆転優勝もあるという劇的な最終節が大統領選挙の前夜に待っているのである。(続く)

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