第112回 低迷するブルターニュの雄レンヌ(1) ニースと同じ赤黒ユニフォーム

■コペンハーゲンでの日仏首脳会談

 コペンハーゲンで行われていたアジア欧州会議の終了後、日本の小泉純一郎首相とフランスのジャック・シラク大統領との間で首脳会談が行われた。今年夏にカナダのカナナスキスで行われたサミットの前後に小泉首相は米国、カナダ、英国、ロシアの首脳とは会談を行っているが、フランスとは首脳会談を行わず、日仏首脳会談は昨年7月の小泉首相来仏以来のことである。久しぶりの日仏首脳会談であることに加え、北朝鮮と国交のない両国の首脳会談ということで大きな注目を集めた。カナナスキスで日本が首脳会談を行った国は同盟国の米国を除くと北朝鮮と国交のある国ばかりである。西欧諸国は北朝鮮との国交樹立が相次ぎ、イタリアは西欧のサミットメンバーで最初に北朝鮮と国交を樹立し、それに英国、ドイツが追随している。
 ところが、フランスは人権問題で北朝鮮に対し非常に厳しい態度で接しており、欧州の中でもっとも北朝鮮と距離の遠い国であろう。そういうフランスとアジア欧州会議の直後に首脳会談を行った日本の外交手腕を感じる。小泉首相の来欧には日本から多くの報道陣が随行し、欧州の人々は、日本が国際舞台で活躍するのはサッカーだけではなく、政治の世界であると改めて認識したであろう。一方、日本の皆さんにとっても、小泉首相が北朝鮮訪問後に初めて欧州の首脳と会談したのがフランスであり、フランスという国に対する関心が高まったことであろう。

■ブルターニュ地方最大の都市

 前回、前々回の本連載では今季2部から昇格し、フランスリーグで快進撃を続けているニースを紹介した。9月21日に行われた第8節でもトロワを1-0と下し、首位をキープしている。この赤と黒の縦縞のユニフォームのニースが活躍する一方、同じ赤と黒のユニフォームのチームが低迷している。それがレンヌである。
 レンヌはフランス北西部に当たるブルターニュ地方最大の都市であり、杜の都・仙台の姉妹都市である。従来、パリから南に伸びていたTGVにTGVアトランティックという新線が加わったのは1990年のこと。大西洋の青をイメージした車両のTVGアトランティックでパリのモンパルナス駅からレンヌまで約2時間。TGV開通を機にリニューアルされた駅を降り、街を歩くと中世を思わせる木組みの建物が続く。東北地方最大の都市、従来の青と白の東海道・山陽新幹線と異なる緑と白の東北新幹線、近代的なステーションビル、駅から離れるといかにも城下町らしい緑の多い町並み、そのような特徴を持つ仙台がレンヌと姉妹都市であることもうなずける。

■ニースと共通点の多いレンヌ

 ニース同様、このレンヌもブルターニュ公国の首都として長らくフランスとは異なる主権の下でその地位を保ち、16世紀にフランスに編入された後も自治権を獲得し、フランス革命までフランスとは別の世界を構築していた。したがって、今でも地方自治の意識の強い地区の中心都市であることから、ニースと同様に独立運動を推進する動きもある。そして町を走るTGVの色はニースはオレンジ、レンヌは青と異なっているが、チームのユニフォームは赤と黒のツートンカラーである。ブルターニュのレンヌと南仏のニース、パリから見た位置は異なるが、都市の歴史から来る独立心、ユニフォームの色と共通点のある両チームである。しかしながら、今季の成績は対照的であり、レンヌは第8節を終了して1勝2分5敗と最下位を低迷している。

■地元以外の出身者を新監督に招聘

 レンヌは昨シーズンの成績は12位、フランスカップを2回獲得したことはあるが、リーグでは優勝経験はまだない。最近のレンヌはアフリカ人選手を重用し、リーグ中位をキープしてきた。今回のワールドカップでセネガル代表として活躍したラミン・ディアッタとマフタル・ヌディアエはレンヌに所属している。同じセネガル代表のエルハジ・ディウフも在籍したことがある。ワールドカップ本大会には出場しなかったものの、南米予選に出場したウルグアイ代表のアンドレス・フレウルキンもトルコのガラタサライから移籍してきた。
 また、監督は本連載の第97回で紹介したポール・ルグアンが1998年から2001年まで務め、その後、ロリアンを1部に初昇格させたクリスチャン・グルクフが引き継いだ。この2人はいずれも地元ブルターニュ地方の出身であり、地元ファンからの温かく受け入れられた。しかし、今季、レンヌは新監督にブルターニュ以外の出身者を招聘し、上位進出を狙ったのである。(続く)

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