第1854回 終盤を迎えたリーグ戦 (6) クラシックを制し、首位に返り咲いたパリサンジェルマン

 4年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■クラシックと呼ばれるマルセイユ-パリサンジェルマン戦

 4月5日のマルセイユ、いつもと違う空気がこの港町に漂う。この日は年に一度、パリサンジェルマンを迎える日なのである。フランス語でクラシックと呼ばれるこの戦い、ライバルがこれまでに数多くの名勝負を演じてきた。そして今回は、最高の舞台となった。それは前回の本連載で紹介した通り、前日にリヨンがギャンガンに勝利し、勝ち点61で暫定首位となる。首位を奪われた勝ち点59のパリサンジェルマンは勝てば首位復帰、勝ち点57のマルセイユは勝てば首位リヨンには勝ち点で1及ばないが、宿敵パリサンジェルマンに勝ち点で上回ることができる。マルセイユのファンにとっては首位に立つことよりもパリサンジェルマンよりも上の順位になることが溜飲を下げることは言うまでもない。
 実はこの両チームが上位同士で終盤に対決することは思いのほか少ない。今世紀に入ってからは2009年3月と2013年2月だけであり、2009年はマルセイユが勝利、2013年はパリサンジェルマンが勝利、そしていずれの年もこのクラシックの勝者がリーグチャンピオンとなっている。

■改修が終わったベロドロームの観客動員記録を更新する65,148人

 さらに、来年の欧州選手権を控えたベロドロームは改修が終わり、観客動員も最多記録を更新する勢いである。前々回の本連載で紹介した第29節、3月15日に行われたリヨン戦にベロドロームに62,832人の観客が集まり、ベロドロームの観客動員記録を更新したが、この記録はその2週間後にあっさりと更新された。3月28日に行われたラグビーの1部リーグに相当するTOP14のトゥーロン-トゥールーズ戦で64,819人の観客が集まった。中立地マルセイユで行われたラグビーの国内リーグの試合が巨大スタジアムの観客動員記録を更新してしまったことからも、このフランスにおけるラグビー人気というものをうかがい知ることができる。
 しかし、トゥールーズがラグビーの都であるならばマルセイユはサッカーの都である。このパリサンジェルマン戦は前売りの段階で65,101枚のチケットが売れる。当日売りはないが、これ以外にパリサンジェルマンに500枚のチケットを割り当てており、最終的に65,148人というこれまでにはなかった数のファンがこの大一番に立ち会うことになった。

■クラシック男、アンドレ・ピエール・ジニャック、2ゴールを決める

 この最高の舞台にふさわしい内容のゲームとなった。ボール支配率ではパリサンジェルマンが上回りながら、シュート数ではマルセイユが優勢。この理由はマルセイユの1トップのアンドレ・ピエール・ジニャックにある。30分にはディミトリ・ペイエからのパスを受けて先制点。その直後にパリサンジェルマンはブレーズ・マツイディの同点ゴールが決まるが、43分にパリサンジェルマンのパスミスを奪ったアレクシス・ロマオが前線にパスを送り、ジニャックが勝ち越しゴールを奪う。ジニャックは3年前のクラシックでも2ゴールを決めており、さながらクラシック男と言えるであろう。

■パリサンジェルマン、鮮やかな逆転勝ちで上位陣との対戦を無敗で終える

 マルセイユが1点のリードで迎えた後半、49分にFKのチャンスをつかんだパリサンジェルマンはマルキーニョスが同点ゴールを奪う。そしてその直後の51分、パリサンジェルマンはハビエル・パストーレがシュート、このシュートをジェレミー・モレルがクリアミス、ボールは自軍ゴールを直撃し、パリサンジェルマンはこの試合初めてリードを奪う。
 試合はそのままパリサンジェルマンが3-2と勝利、アウエーでの宿敵相手の勝利は首位固めとなった。
 リヨンを勝ち点1差でかわして首位に返り咲いたパリサンジェルマンだが、これで上位5チーム(リヨン、マルセイユ、モナコ、サンテチエンヌ)との対戦をすべて終え、4勝2分と無傷で乗り切る。パリサンジェルマンとの直接対決のない他チームにとっては勝ち点差以上に大きな差を感じているであろう。
 ただし、パリサンジェルマンはマルセイユ戦の後、フランスカップ準決勝、リーグカップ決勝、チャンピオンズリーグ準々決勝2試合と他のチームよりも4試合多く戦わなくてはならず、これらの疲れが次のリーグ戦の4月18日のニース戦に現れないかどうかが心配の種であろう。(続く)

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