第837回 パリサンジェルマン、リーグカップを制す(5) 不可解な判定によりパリサンジェルマンが優勝

■フランス-イングランド戦とほぼ同数の観客動員

 今年になってからスタッド・ド・フランスで行われるサッカーの試合はこのリーグカップが3試合目である。まず、フランスリーグの1部史上初めての試合となった3月1日のリール-リヨン戦、そして3月26日の国際親善試合のフランス-イングランド戦である。リール-リヨン戦は77,840人、フランス-イングランド戦は79,000人の観衆を集めたが、3月29日のリーグカップ決勝のパリサンジェルマン-ランス戦にはイングランド戦とほぼ同じ78,745人の観衆が集まった。
 両チームとも若干の負傷者は抱えているものの、ほぼベストメンバーの陣容である。ランスからは3万人のファンがバスや鉄道で駆けつけた。試合はメインスタンドから向かって右側にパリサンジェルマンのファンが、反対側の左側にランスのファンが陣取る。そして前半はパリサンジェルマンが右から左に攻め、ランスが左から右に攻める。すなわち前半は両チームは自分のサポーターが待つゴールを目指して攻め、後半は自分のサポーターを背にして戦う。この攻める方向がこの試合に大きな影響を与える。

■パリサンジェルマン、パウレタのゴールで先制

 かつてのフランス代表の名手マルセル・デサイーが始球式を行う。試合はまずパリサンジェルマンが優位に進める。そして19分には本連載第833回で紹介したカップ戦男のパウレタである。今季はリーグ戦での出番も少なく、そろそろ引退かとうわさされていたが、左サイドのジェローム・ロタンからの展開でパウレタが先制点をたたきこむ。パリサンジェルマンがこの1点のリードを保ち、試合は後半に突入する。

■奮起したランスのイレブン、エリック・カリエールが同点ゴール

 後半は一転してランスのペースとなる。後半の序盤にランスのイレブンを奮起させるような光景が彼らの目に入ったからである。ランスの攻撃の中心となったのがエリック・カリエールである。パウレタがカップ戦に強いのならば、国際試合に強いのがこのカリエールである。カリエールは今季もリーグ戦は欠場する試合が目立ち、無得点であるが、UEFAカップでは全4試合に出場し、2得点をあげている。そのカリエールが攻撃を組み立て、52分には同点ゴールを決める。同点に追いつかれた後は、パリサンジェルマンは防戦一方となった。パリサンジェルマンの守備陣の最高峰に控えるのがGKのミカエル・ランドローである。今季はイージーミスが目立ち、試合前も自チームのファンからブーイングを受ける始末であった。しかし、そのランドローがこの試合では好守を連発する。そしてこの攻守のバランスは変わらず、延長戦かと思われた。

■ロスタイムの2度の不可解な判定に怒るランスのファン

 ロスタイムに入って、ランスのファンは審判の判定に泣かされる。まずは91分、ランスのヨハン・デュモンのシュートがゴールラインを割る。GKのランドローが触ったかに見えたが、主審のローラン・デュメル氏はゴールキックを指示する。CKのチャンスを失ったランスにはその直後に自陣のゴール前で再び不可解な判定に泣かされる。93分、パリサンジェルマンのペギー・リュインデュラがペナルティエリア内にボールを持ち込み、ランスのヒルトンが軽く接触する。このプレーに対し主審のデュメル氏はペナルティスポットを指差す。このチャンスでペナルティスポットの立ったのはベルナール・メンディである。メンディが向き合うランスのGKロナン・ルクロンの後方には3万人のランスの赤と黄色のファンが陣取り、猛烈なブーイングの嵐となる。その重圧の中、メンディはPKを着実に決め、パリサンジェルマンが勝ち越し、パリサンジェルマンは優勝を果たす。試合終了後もランスのファンはこの一連の判定に満足しなかった。実はそのファンの怒りの矛先は審判の判定だけではなかったのである。(続く)

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