第2014回 パリサンジェルマン、リーグカップ3連覇(2) 数的不利の中でアンヘル・ディマリアが決勝点

 平成28年熊本地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。お亡くなりになった方々に、謹んで哀悼の意を表します。 この地震が1日でも早く収まることと、被災地の皆様の安全とご健康をお祈り申し上げます。

■両チームで指揮を執ったヴァイッド・ハリルホジッチ

 年間王者を確定したパリサンジェルマンに、いわば春の王者として3月と4月は全勝のリールが挑む、22回目のリーグカップの決勝、週末とはいえ会場のスタッド・ド・フランスに集まった観衆は7万人に届かない。パリサンジェルマンとマルセイユというファイナリストが決まったフランスカップにファンの注目は集まる。ただ、日本の皆様はこのカードに対し特別な関心を持たれた方も多かったのではないであろうか。
 それは現在日本代表の監督を務めているバヒッド・ハリルホジッチが両方のチームで指揮を執ったからである。ハリルホジッチは現役時代の最後のシーズンをパリサンジェルマンの選手として過ごし、1998年に当時は2部に所属していたリールの監督になり、2部で優勝し1部に復帰する。そして昇格初年には1部で3位になり、監督として非凡な才能を見せた。2002年にリールを離れレンヌの監督となったが、ここでは1シーズンだけであり、2003年からパリサンジェルマンの監督となる。このパリサンジェルマンへの移籍にはフランシス・グライユの存在を忘れてはならない。グライユは元々は通信社であるAFPの通信員であった。マスコミ各社を渡り歩き、2001年にリールの会長に就任する。リールの会長は1年だけであったが、その後、契約型テレビ局でのカナルプリュスがパリサンジェルマンに出資していることもあり、パリサンジェルマンの代表となる。ここでグライユが監督としてスカウトしたのが、ハリルホジッチであった。ハリルホジッチ率いるパリサンジェルマンはリーグ戦で2位、フランスカップ優勝と成果を残したのである。

■ターンオーバー制を敷くパリサンジェルマン

 このような縁もある両チームの対戦となったが、地力に勝るパリサンジェルマン、現在リーグ戦で6連勝という勢いのリールと予想は必ずしもパリサンジェルマン優勢ではなかった。
 パリサンジェルマンの先発メンバー、GKにサルバトーレ・シリグ、左サイドDFにレイバン・クルザワ、中盤の底にアドリアン・ラビオ、左ウイングにルーカス、それ以外はほぼベストメンバーである。パリサンジェルマンはリーグ戦以外のタイトルを戦うことを前提としてターンオーバー制を敷いているチームならではのメンバー構成であり、これらのメンバーも代表クラスの選手であり、他のチームであれば十分にレギュラーである。

■パリサンジェルマンのシュートを防ぐビンセント・エニェアマ

 リールの注目はパリサンジェルマンの強力な攻めをGKのビンセント・エニェアマがどう守るかであり、試合開始直後からエニェアマは大忙しとなった。ボール保持率に勝るパリサンジェルマンはリールのゴールにシュートを浴びせるが、このナイジェリア代表のGKがゴールを死守する。しかし、先制点はパリサンジェルマンであり、40分にアンヘル・ディマリアのCKをエニェアマがパンチングで逃れるが、これをペナルティエリア外で待ち受けていたハビエル・パストーレが右足のボレーでシュート、エニェアマも及ばず、豪快にゴールネットが揺れる。

■アドリアン・ラビオ退場の直後にアンヘル・ディマリアが決勝点

 後半になってリールが追い付く。49分にジブリル・シディベがミドルシュートを放ち、シリグのセービングも及ばず、試合は振り出しに戻る。そして70分にパリサンジェルマンのラビオが警告を受ける。ラビオは後半開始早々にも警告を受けており、退場となる。20分を残し、パリサンジェルマンは数的不利となる。
 スタッド・ド・フランスの半分を占めたパリサンジェルマンのファンには不安感がよぎるが、それは杞憂であった。74分にシリグからのロングキックを拾ったディマリアがそのままドリブルで前進し、勝ち越しゴールを決めた。
 パリサンジェルマンは2-1で勝利し、3連覇を達成、リーグに続くタイトル獲得となり、国内三冠まで残るは5月21日のフランスカップ決勝だけとなったのである。(この項、終わり)

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