第290回 2004年アフリカ選手権(3) フランスのクラブから77人が出場

■前回大会を上回る77人がフランスからアフリカへ移動

 前回、前々回の本連載で今回のアフリカ選手権で16人の監督のうち5人がフランス人監督であることを紹介したが、今回はフランスのクラブに所属する選手について紹介したい。前回の大会では67人の選手がフランスのクラブに所属していたことを本連載第30回で紹介したが、今大会はそれを上回る77人の選手の所属がフランスのクラブである。

■フランスのクラブ所属選手が半減したセネガル代表

 合計の選手の数だけではなく、興味深いことが2点指摘できる。まず、前回はフランスリーグの選手が大半のチームが存在したが、今大会はメンバーのほとんどがフランスのクラブの選手と言うチームがなくなったことである。例えば、後のワールドカップでも旋風を巻き起こしたセネガルは22人中21人、そして開催国でベスト4に進出したマリは11人がフランスリーグの所属選手であった。今回はもちろんセネガルやマリには多くのフランスのクラブ所属選手がいるが、セネガルは12人、マリは10人とメンバーの半数程度である。フランスのクラブに所属するセネガルの選手がほぼ半減した理由は明白である。それはワールドカップで活躍した選手が次々とイングランドなどのビッグクラブに移籍してしまったからである。例えば、セネガルの22人の選手を所属クラブの国別に分類してみると、フランス12人、イングランド5人、イタリア2人、セネガル2人、ベルギー1人となっており、フランスは数的に優位に立っているように見えるが、エルハジ・ディウフ、サリフ・デイアオ(以上リバプール)、アンリ・カマラ(ウォルバーハンプトン)などビッグネームはイングランドのクラブに渡り、イタリアのペルージャにはフェルディナン・コリーが所属している。トップレベルの選手がイングランド、イタリア、スペインのビッグクラブに所属し、それに次ぐレベルの選手がドイツやフランスのクラブに所属すると言う構図は欧州域内の選手だけではなく、アフリカの選手にもあてはまるのである。今回のスター選手の多くはかつてフランスのクラブに所属し、現在は他国のクラブに所属している。ワールドカップで活躍したセネガルの22人の選手が全員フランスリーグにとどまっていれば、フランスリーグはさらにエキサイティングなものになっているであろう。

■16か国中、14か国にいるフランスのクラブ所属選手

 しかし、このトップ層選手がフランスのクラブから流出することに対して必ずしも悲観的になる必要はない。それがもう1点の特徴であるフランスのクラブ所属選手の広がりにつながっている。フランスがアフリカのサッカー強豪国の旧宗主国と言ってもアフリカ人選手は外国人枠に相当する。イングランドやイタリアへと移籍したアフリカ人選手の後に新たな外国人選手が移籍している。そして、よりバラエティに富むアフリカ人選手がフランスリーグで活躍することになった。その結果、フランスのクラブは前回を上回る77人の選手をアフリカ選手権に送り込んでいることにつながっている。そして、アフリカと言ってもフランスだけが宗主国であったわけではない。英国から独立した国も少なくない。しかし、今大会で特筆すべきは参加16か国中、14か国にフランスのクラブに所属している選手がいることである。エジプトのアーメド・ホッサム・ミド(マルセイユ)、ナイジェリアのジョン・ウタカ(ランス)、南アフリカのサバング・モルフェ(ルマン)、ジンバブエのハーリングトン・シェレニ(ガンガン)などフランス以外から独立した国の選手もフランスリーグで活躍している。
 フランスのクラブに所属する選手がいないのはルワンダとケニアだけである。ルワンダは登録選手22人中15人が自国内のクラブに所属し、国外のクラブに所属している7人のうち5人がベルギーのクラブであるがその多くは2部以下のチームであり、実力的にフランスリーグで活躍できる選手がいないことを意味している。そして英国から独立したケニアもまた自国内のクラブに所属する選手が10人と多いが、国外で活躍する選手の所属は同じ旧英国領の南アフリカ、欧州のスウェーデン、ベルギーがそれぞれ3人、そしてデンマーク、カタール、セイシェル諸島が1人となっており、実力不足は隠せない。

■二重国籍規定の変更による3人のフランス人選手

 そして忘れてはならないのは3人のフランス人選手がエントリーしていることである。フランス国籍と二重国籍のアフリカ人選手は珍しくないが、いずれかの国の代表選手となるともう一方の国の代表選手になることができなかったがFIFAの規制緩和によって二重国籍の選手はアンダーエイジの代表歴が一国であっても、他方の国でフル代表に入ることが可能となり、マリのフレデリック・カヌーテとラミン・シソコ、セネガルのラミン・サーコは21歳以下フランス代表の経験があったが先祖の祖国で代表となった。
 今大会もフレンチテイストの濃い大会になったのである。(続く)

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