第521回 2006年アフリカ選手権(5) エジプト、セネガル、ナイジェリア、コートジボワールが四強に

 去る2月7日にアフリカ選手権開催地のカイロで急逝された日本を代表するジャーナリストである富樫洋一様の冥福を心からお祈り申し上げます。

■旧勢力、フレンチアフリカが優勢だったグループリーグ

 今回のワールドカップに出場するアンゴラ、トーゴ、ガーナが敗退したグループリーグ、逆に考えると前回のワールドカップにアフリカから出場した5か国も揃って今回のアフリカ選手権に出場しているが、カメルーン、チュニジア、セネガル、ナイジェリアがグループリーグを突破し、南アフリカだけがグループリーグで姿を消しただけであり、今回のワールドカップに出場できなかった旧勢力の力を感じさせた。
 今回のアフリカ選手権にはイタリアから独立したリビア、ポルトガルから独立したアンゴラと、前回のアフリカ選手権やワールドカップの出場国にはなかった旧宗主国からの独立国も顔を見せ、多様性のある大会になると期待された。しかし、決勝トーナメントに残った8か国とその旧宗主国に着目するとカメルーン、チュニジア、セネガル、コートジボワール、ギニア(以上フランス)、コンゴ民主共和国(ベルギー)、ナイジェリア(英国)、エジプト(旧宗主国なし)と過半数の国がフランスからの独立国であり、旧宗主国の分布についてもこれまでの流れに復古し、従来どおりフレンチテイストの強い大会となった。

■開催国エジプトは大勝、セネガルも復調し逆転勝ち

 決勝トーナメントは2月3日から始まった。開催国エジプトは準々決勝でフランス人監督クロード・ルロワの率いるコンゴ民主共和国と対戦し、7万4000人の地元ファンを歓喜させた。まず33分にPKで先制した後、41分に伝説のゴールが生まれる。エジプトサッカー界の最大のスターである39歳6か月のホッサム・ハッサンが代表生活168試合目で65点目となるゴールを決める。これで調子の波に乗ったエジプトはその後もゴールを重ね、オウンゴールによる1失点はあったものの4-1と大勝する。
 また、同日にはグループリーグで2敗を喫したセネガルがフランス人監督パトリス・ヌブー率いるギニアと対戦する。前回のワールドカップの活躍の面影のないグループリーグでの戦いぶりを見せたセネガルであったが、準々決勝でも前半に先制点を許す苦しい試合となる。ところが、後半に入ってテランガのライオンは4年前のアジアの活躍を思い出す。61分、83分、93分に立て続けにゴールを決め、ギニアの反撃を94分の1点に抑え、3-2というスコアで準決勝に進出する。

■前回大会の準決勝の再現はナイジェリアが制す

 翌2月4日に行われた準々決勝の2試合は大熱戦となった。まず、前回大会の準決勝の再現となったチュニジア-ナイジェリア戦、2年前は1-1のままPK戦に突入し、開催国のチュニジアがPK戦を5-3で制し、決勝へ進出し、初優勝を遂げている。今世紀に入ってからこれといった成績を残していないスーパーイーグルスことナイジェリアは今回のワールドカップ出場権も失っており、このアフリカ選手権では前回チャンピオンでドイツにも行くチュニジアを倒したいところである。そのナイジェリアの執念がカルタゴの鷲を倒した。ナイジェリアは開始早々に先制、後半初めに追いつかれ、試合は延長戦に、延長戦でも決着がつかず、2年前同様PK戦で雌雄を決することとなった。8人目までもつれ込み、結局ナイジェリアが6-5で勝利し、雪辱を果たしたのである。

■二巡目までもつれたPK戦を制したコートジボワール

 そして準々決勝最後のカメルーン-コートジボワール戦は大熱戦となった。1-1の末、延長戦となり、決着がつかずPK戦へ突入する。なんとこのPK戦は一巡目の11人全員が双方成功する。二巡目に入り、カメルーンの最初のキッカーであるサミュエル・エトーが失敗したのに対し、コートジボワールのディディエ・ドログバは成功し、両チームのエースが明暗を分ける。コートジボワールはワールドカップ出場国で唯一準決勝に進出したのである。(続く)

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