第596回 新たな旅立ちボスニア・ヘルツェゴビナ戦(1) 20人中15人がワールドカップ組

■初夏から秋にかけての試合が多い代表チーム

 ワールドカップでの決勝戦から1月あまり、すでに次の国際試合が8月16日には待っている。ワールドカップを最後に多くの選手が代表あるいは現役から引退しているが、9月からは2008年欧州選手権の予選が始まる。選手は日常の活動を各クラブで行うが、代表チームの営みも断続的かつ継続的に行われている。
 本連載の読者の皆様ならばよくご存知の通り、フランス代表は昨年10月にワールドカップ本大会出場を決めてからワールドカップ直前の練習試合までの半年間にわずか3試合(11月9日:コスタリカ、11月12日:ドイツ、3月1日:スロバキア)しか試合を行わなかった。結局、代表チームの活動は国内のリーグ戦、カップ戦や欧州カップ戦が佳境を迎える晩秋から晩春にかけてはほとんど行われず、ワールドカップや欧州選手権の本大会のある時期を含むシーズンオフの色彩の濃い初夏から秋にかけての季節が中心となる。

■イタリア戦と激突する欧州選手権予選

 フランス代表にとってこの真夏に行われる親善試合は秋口に行われる欧州選手権やワールドカップの予選の準備というだけではなく、選手が移籍する時期でもあり、新体制の確認という意味もある。
 すでにフランス代表はベテラン勢がワールドカップを花道に代表から引退することを表明しており、新メンバーに注目が集まった。レイモン・ドメネク監督は試合の1週間前の9日に20人のメンバーを発表した。大幅な世代交代をしたいところであるが、簡単は世代交代ができない理由がある。それは先述したとおり、欧州選手権予選が控えているからである。フランスの所属するグループBは8月16日のフェロー諸島-グルジア戦で開幕するが、フランスにとっての初戦は9月2日のアウエーでのグルジア戦である。そしてフランスの第2戦はその4日後、ホームでの戦いとはいえイタリアと対戦する。このところ、欧州選手権やワールドカップ予選で振るわなかったイタリアが今回の欧州選手権予選では第2シード扱いとなり、第1シードのフランスと予選で対戦することになってしまったのである。予選の日程がある程度消化された段階でイタリアと対戦するのであれば8月に思いきった新メンバーを起用し、チームとして育てていきながらイタリアと対戦という考え方もあるが、ほぼ初戦でイタリアと対戦するわけであり、新メンバーでは荷の重い相手である。

■ワールドカップのメンバーから外れた8人

 このような状況を踏まえ、ドメネク監督が発表した20人のメンバーのうち15人はワールドカップ出場メンバーとなった。ワールドカップにエントリーしたメンバーが23人であるため、銀メダルを獲得したメンバーのうち3人に1人はメンバーから外れたことになる。ワールドカップのメンバーで今回のボスニア・ヘルツェゴビナ戦のメンバーから外れたのはファビアン・バルテス(35歳)、クロード・マケレレ(33歳)、ビカッシュ・ドラッソー(32歳)、シドニー・ゴブー(27歳)、ジネディーヌ・ジダン(34歳)、ミカエル・シルベストル(29歳)、リリアン・テュラム(34歳)、パスカル・シンボン(27歳)である。年齢を見ていただくとわかるように過半数は30代の選手である。
 一方、残った15人のうち年齢の高い選手はグレゴリー・クーペ(34歳)、シルバン・ビルトール(32歳)、パトリック・ビエイラ(30歳)、ビリー・サニョル(29歳)、ダビッド・トレゼゲ(29歳)、ティエリー・アンリ(29歳)、などである。このあたりが新チームの屋台骨となっていくのであろう。ドメネク監督は新主将にビエイラを指名している。
 そして注目される5人のワールドカップに出場しなかったメンバーであるが、フランス代表として試合に出場した経験があるのはリオ・マブーバ(3試合)とフィリップ・メクセス(6試合)の2人である。そして第593回の本連載で紹介したジェレミー・トゥーラランとフランソワ・クレールのリヨン勢2人は代表メンバーに入ったことがあるが、試合出場の経験はない。そして代表に招集されたのも初めてというのは1人しかおらず、それがボルドーのジュリアン・フォーベールである。(続く)

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