第702回 リトアニア、オーストリアと連戦(8) 若いメンバーで臨むオーストリア戦

■欧州選手権の開催国となるオーストリア

 中欧の古豪オーストリアは来年の欧州選手権をスイスと共同開催する。ワールドカップ、欧州選手権を通じてこれが初めての開催となる。したがって、予選を免除されており、この2年間は親善試合を重ねて本大会を迎えることになる。隣国であり、何度もオーストリアの地を支配したドイツで開催されたワールドカップの2006年大会は欧州予選でイングランド、ポーランドと同じグループに入り、両国に大きく差をつけられて3位に終わっている。そして不思議なことにこれまで欧州選手権の本大会に出場したことがないのである。2004年欧州選手権予選でもチェコ、オランダと同じグループで予選を争い、3位にとどまっている。
 ワールドカップについては1998年のフランス大会に出場し、グループリーグでカメルーン、チリと引き分け、最終戦でイタリアとの直接対決となったが、1-2と敗れ、グループリーグで敗退している。ちなみにこの大会でオーストリアは毎試合1得点を記録しているが、その3得点とも後半のロスタイムに記録されるという珍しい記録を残している。

■10年ぶりの国際舞台に向けた強化を図るオーストリア

 したがってオーストリアにとって今回の欧州選手権は10年ぶりの国際舞台となる。そのオーストリアは昨年のワールドカップ明けから強化に取り組んでおり、3勝3分2敗という成績である。昨年9月には共同開催をするスイスで4か国対抗戦をコスタリカ、ベネズエラとともに行ったが、最下位に終わっている。しかし、10月にはその4か国対抗戦で優勝したスイスをインスブルックに迎え、2-1と勝利している。さらに昨年のワールドカップにも出場したトリニダードトバゴにも勝利している。今年になってからはマルタ、ガーナと引き分けているが、敵地でのフランス相手に勝利することは最高の大会のデモンストレーションとなろう。

■新戦力のテストに当てたオーストリア戦

 一方のフランスは本連載でも紹介したとおり、この3月下旬のインターナショナルマッチデーは24日のリトアニア戦だけであり、そのリトアニアとの対戦で勝ち点3を上げたフランスはもう1つのインターナショナルマッチデーである28日を親善試合の日とする。リトアニア戦は本連載第698回で紹介したとおり、負傷者が続出したため、新人5名を含むメンバー登録をし、1トップに起用したニコラ・アネルカの一撃で勝利をあげることができた。これで28日のオーストリア戦はウクライナ、フランス、イタリア、スコットランドという上位4強の混戦状態から抜け出すための貴重な強化並びに新戦力の発掘の機会とすることができたのである。
 レイモン・ドメネク監督はリトアニアのカウナスからナショナルラグビーセンターに戻り、早速オーストリア戦に備えた。オーストリア戦はフランス伝統の4バック、中盤はダイヤモンド型、そして攻撃陣は2トップという布陣で臨む。そしてリトアニア戦とはメンバーを大幅に入れ替える。

■4人の代表歴の合計がわずか7試合の若き中盤

 GKはリトアニア戦と同じグレゴリー・クーペであるが、4バックは主張のリリアン・テュラムを残して3人が入れ替わった。右サイドはビリーサニョルに代わってフランソワ・クレルク、CBはウィリアム・ギャラスに代わってフィリップ・メクセス、左サイドはエリック・アビダルに代わってジュリアン・エスクーデとなった。MFはクロード・マケレレが務めていた中盤の底にはマブーバ、その前方のメンバーはリトアニア戦ではジェレミー・トゥーラランとラッサナ・ディアラであったが、リトアニア戦の終盤に代表デビューをしたアブ・ディアビーがトゥーラランに代わって入る。そしてMFの中の最前方、すなわちトップ下にはリトアニア戦で出番のなかったサミール・ナスリを起用する。また、2トップにはジブリル・シセとアネルカが控える。
 代表歴が二桁ある選手はGKのクーペ、DFではテュラム、そして2トップのシセとアネルカの4人だけという若いメンバーになった。両サイドのDFは右のクレルクが代表歴3試合、左のエスクーデは2試合に過ぎない。そして中盤の4人に関してはマブーバの代表歴は5試合であるが、ディアビーとディアラは4日前のリトアニア戦で代表にデビューしたばかりである。そして攻撃の起点となるナスリは代表デビューと、4人足しても代表歴はわずか7試合というメンバーとなったのである。(続く)

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