第911回 古豪ウルグアイと対戦(3) 30歳以上で代表入りしたスティーブ・サビダン

■低迷したバランシエンヌの復活を支えたサビダン

 ウルグアイとの親善試合で初めて代表入りしたスティーブ・サビダンは、カーンから15年ぶりの代表入りしただけではない。サビダンは1978年生まれで、30歳以上で代表に初招集されたのである。
 ジュリエッティはアンジェの出身で、1998年に当時2部だったアンジェでプロとしてデビューしている。その後もシャトールー、アジャクシオなど2部や3部に相当するナショナルリーグでのプレーを続け、2004年にはバランシエンヌに移籍する。バランシエンヌについては1993年のマルセイユとの試合での八百長疑惑で長いトンネルに入ったチームである。2004年には4部リーグに相当するCFAからようやく3部リーグに相当するナショナルリーグに復帰したところであった。
 このバランシエンヌの歴史を変えたのがサビダンである。2004-05シーズンでサビダンは19得点をあげ、得点王となり、2部昇格を果たす。さらに2部に昇格したばかりの2005-06シーズンにもサビダンは16ゴールで得点王となる。そしてサビダンの活躍により、バランシエンヌは2部で優勝し、13年ぶりの1部復帰を果たしたのである。ナショナルリーグ、2部リーグという異なるレベルのリーグで2年連続得点王に輝いたサビダンの活躍で、低迷していたバランシエンヌは、ナショナルリーグ、2部リーグをそれぞれ1年で通過するという離れ業を見せた。サビダンの1部デビューは2006年の夏であり、すでにこの時、28歳だった。バランシエンヌは国内最高峰の1部に昇格してもサビダンの勢いは止まらなかった。2006-07シーズン、2007-08シーズンともに13ゴールを上げる活躍で、バランシエンヌは2部に降格することなく、1部の座を守り続けている。

■カーンでも得点力の衰えないサビダン

 そしてバランシエンヌ復活の立役者であるサビダンは国内の有力クラブへの移籍の噂も絶えなかったが、今年の夏にカーンへ移籍したのである。カーンでも14試合に出場し7得点と抜群の得点力を誇っている。今回の代表入りは遅すぎた、少なくとも欧州選手権に出場させるべきであった、と言う声は少なくない。

■わずか5秒間しかプレーしなかったフランク・ジュリエッティ

 30歳以上でフランス代表にデビューした選手は第二次世界大戦後、これまで17人いるが、その大多数は1960年代以前の選手である。1970年以降に30歳以上で代表にデビューした選手はわずか4人しかおらず、2005年のフランク・ジュリエッティ以来のこととなる。ジュリエッティに関しては本連載の第480回と第483回で紹介しているが、ワールドカップドイツ大会の予選の最終戦で代表にデビューしている。出場したのは最終戦となったキプロス戦で4-0とリードした試合終了直前、わずか5秒間の代表でのプレーであった。ワールドカップ出場を決めた瞬間にピッチに立っていたジュリエッティであるが、この5秒間が最初で最後の代表での試合出場となってしまった。

■FWでは久しぶりの30歳以上での代表初招集

 30歳以上で代表にデビューした選手はジュリエッティ同様、代表歴の浅い選手が少なくない。ジュリエッティの前の30歳以上で代表にデビューした選手は1970年以降、ジェラール・ファリゾン、アルベール・ルスト、ジャン・リュック・サスース、リオネル・シャルボニエと4人いる。しかし、ファリゾンは1976年のポーランドとの親善試合、ルストは1986年ワールドカップの3位決定戦のベルギー戦、サスースは1992年のブラジルとの親善試合、シャルボニエは1997年のイタリアとの親善試合と、いずれも1試合出場しただけで、代表チームから去っている。しかも、ルストとシャルボニエはGK、ファリゾンとサスースはDFであり、FWが30歳以上でデビューすれば、久しぶりのことである。
 ウルグアイ戦の代表メンバー入りの発表と試合の間には、リーグ戦の試合が1試合だけ行われた。カーンは11月15日にナンシーとアウエーで対戦した。この試合でサビダンは先制点をあげる活躍をしており、サビダンに対する期待が高まる中で、フランスはウルグアイを迎えることになったのである。(続く)

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