第976回 ナイジェリア、トルコと対戦(1) サンテエチエンヌとリヨンで開催される親善試合

■ワールドカップ予選が6月にないフランス

 偶数年であるならばワールドカップや欧州選手権の本大会が開催される6月であるが、今年は本大会のない奇数年である。しかし、6月の初旬にインターナショナルマッチデーが設定され、アジアでは来年のワールドカップ本大会出場国が次々と決まった。欧州でも6月6日と10日に各地でワールドカップ予選が開催され、オランダが南アフリカ行きを決めている。フランスの所属するグループ7も3試合が行われたが、フランスだけが試合がなかった。

■半数が国内勢、大多数は来季の欧州カップ組

 試合消化数が少ないながらもセルビアに次ぐ2位のフランスは、夏以降の戦いに向けてチームを立て直す必要があり、6月初めに国内で親善試合を2試合行った。フランスは6月2日にサンテエチエンヌにナイジェリアを迎え、6月5日にリヨンでトルコと対戦する。リーグ戦の最終節を前に5月25日にメンバーが発表された。24人の選手うちのちょうど半数の12人が国内のクラブチームであり、残りの12人が国外のクラブに所属している選手となった。
 国内リーグで優勝争いの渦中にあるボルドーからはアルー・ディアラ、ヨアン・グルクフ、マルセイユからはスティーブ・マンダンダが選出された。また、連覇が7でストップしたリヨンからはウーゴ・ロリス、ジャン・アラン・ブームソン、ジェレミー・トゥーララン、カリム・ベンゼマ、シドニー・ゴブーという大量5人が選出されている。
 それ以外には来季のヨーロッパカップに出場することになるトゥールーズからアンドレ・ピエール・ギニャックとセドリック・カラッソの2人が選ばれている。つまり、国内勢12人のうち10人が来季の欧州カップに出場するチームに所属する選手であり、例外はレンヌのロッド・ファンニとニースのロイック・レミである。

■リヨンとサンテエチエンヌでのフランス代表の試合

 リーグ戦が終了した翌々日の6月1日に集合し、その翌日にナイジェリアと対戦、そしてその3日後にトルコと対戦という強行日程であるが、この強行日程を可能にしたのが国内のホームゲーム、さらにサンテエチエンヌとリヨンという近接した都市での開催である。リヨンとサンテエチエンヌのあるローヌ・アルプ地方はサッカーの盛んな地方である。サンテエチエンヌはこれまでにリーグ優勝は最多の10回を数え、リヨンは7連覇を果たすまでフランスリーグを制したことはなかったことが不思議なくらいである。そして言うまでもないことであるが、リヨン-サンテエチエンヌ戦はフランスを代表するダービーマッチである。
 リヨンでの代表の試合は2003年のコンフェデレーションズカップにおけるコロンビア戦以来6年ぶり8回目のことであり、サンテエチエンヌについては2006年6月の中国との親善試合以来3年ぶり6回目のことである。ちなみにフランス代表の地方での試合の開催回数(ワールドカップや欧州選手権の本大会を含む)を紹介すると、最多はサッカーの都マルセイユの13回、それに続いてナントの8回、リールの7回、トゥールーズの6回となっている。今回の連戦によりフランス代表試合の開催回数は、リヨンはナントと並び2位、サンテエチエンヌはトゥールーズと並んで5位となる。
 また、2003年のコンフェデレーションズカップにおいてはサンテエチエンヌで日本がフランスと対戦したことを日本のファンの皆様ならばよく覚えておいでであろう。フランスは6月18日にリヨンでコロンビアと戦い、中1日の20日にサンテエチエンヌで日本と対戦している。これがこれまでに唯一のリヨンとサンテエチエンヌにおけるフランス代表の連戦である。

■繊維産業の地方での合宿中にオフィシャルスーツの採寸

 この地方で盛んなのはサッカーだけではない。サンテエチエンヌは鉱工業の町として知られ、この町を起源とするシュネデールは日本にもその拠点を広げている。フィリップ・ブシェはフィリップ・トルシエと並んで、最も知名度が高い日本在住のフランス人であろう。
 一方、リヨンは絹糸をはじめとする繊維産業が盛んであり、19世紀にはこの地方の蚕が病気のため全滅し、明治維新期の日本に絹糸の材料を求めたことはちょうど開港150年に沸く日本の皆さまならばよくご存じであろう。その繊維産業の町での開催らしく、フランス代表が合宿中のホテルでは、練習の合間を縫ってオフィシャルスーツの採寸が行われたのである。(続く)

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