第1504回 政情不安の中でアフリカ選手権開幕(1) アルジェリア、マリなど16か国が南アフリカに集まる

 一昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■アルジェリアで起こった人質事件

 アルジェリアのイナメナスにある国際天然ガスプラントで起こった人質事件、残念なことに多くの尊い生命がテロの凶弾に倒れている。複雑な国際情勢を背景にして起こった事件であるが、犠牲者が出たことは非常に残念であり、犠牲者の方々のご冥福を祈るとともに、テロリストである犯人に対する怒りを禁じえない。
 この事件の伏線としては、マリに南下したイスラム武装勢力に対して、マリ政府からの要請を受けてフランス軍が1月11日から軍事介入したことに対し、イスラム武装勢力が国境を越えて報復したものであるとみられている。イスラム武装勢力の行動は北アフリカ地域だけではなく、広い地域で展開されており、アフリカは揺れている。

■リビア内戦により南アフリカに開催国が変更

 政情不安なアフリカの地で、アフリカ選手権が開催される。アフリカ選手権はこれまで偶数年の開催であったが、今回から奇数年に切り替わる。さらに当初はこの2013年大会はリビアで開催される予定であったが、2011年に起こったリビア内戦、長引く政情不安により、南アフリカに開催国が変更となった。
 このような困難を乗り越えてアフリカの16か国が南アフリカで大陸ナンバーワンの座を目指して戦う。開催国の南アフリカ以外は予選を経て2010年にアフリカで最初のワールドカップを開催した最南端の国にやってくる。

■アフリカサッカー界の勢力の変化

 16か国の顔ぶれであるが、北アフリカのアルジェリア、モロッコ、チュニジア、東アフリカのエチオピア、中部アフリカのアンゴラ、コンゴ民主共和国、西アフリカのガーナ、カーボベルデ、ニジェール、ナイジェリア、ブルキナファソ、コートジボワール、トーゴ、マリ、南部アフリカの南アフリカとザンビアであり、今回の人質事件の舞台となったアルジェリア、その要因となったマリも出場しているうえ、イスラム武装勢力の活動が活発な北アフリカ、西アフリカからの出場国が多いことも特徴である。
 1年前にガボンと赤道ギニアで共同開催された前回大会との連続出場はガーナ、コートジボワール、アンゴラ、チュニジア、ザンビア、マリ、モロッコ、ブルキナファソ、ニジェールの9か国だけである。
 前回大会で4強に入ったザンビア、コートジボワール、マリ、ガーナは連続出場を果たした一方、アフリカサッカーでワールドカップでこれまで実績を残してきたカメルーン、セネガル、アフリカサッカー連盟が首都カイロにある古豪エジプトは前回大会に引き続き、予選で姿を消してしまっている。本連載第1350回で前回大会では有力国が予選で姿を消したことを紹介したが、今大会の予選でも敗退した有力国が少なくないことは、アフリカサッカーの勢力の変化が一時的なものではなくなりつつあることがわかる。
 また前回大会では開催国して地元の声援を受けて快進撃、決勝トーナメントに進出したガボンと赤道ギニアもその勢いを持続することができず、今大会は予選で敗退している。

■第1シード4か国は南アフリカ、ザンビア、コートジボワール、ガーナ

 これまで通り、4つのグループに分かれてグループリーグを戦い、各グループの上位2チームが決勝トーナメントに進出するという大会形式も変わっていなければ、このグループ分けの際のシード順を過去3回のアフリカ選手権の成績を重みづけして決定するということも従来通りである。
 アフリカサッカーの勢力の変化により、シード順も1年前にガボンと赤道ギニアで開催された前回大会と変わっている。今回の第1シード4チームは開催国の南アフリカ以外にザンビア、コートジボワールとガーナである。前回準優勝のコートジボワールと4位ガーナは連続して第1シード入りしているが、前回大会で初優勝を飾って14番目の優勝国となったザンビアは第2シードであり、開催国南アフリカは前回大会は予選で敗退したため出場していなかった。
 このようにアフリカサッカーの盟主の座が変わりつつあり、政情が相変わらず安定しない中でアフリカサッカーナンバーワンをかけてキックオフのホイッスルが鳴らされたのである。(続く)

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