第1564回 フランス代表、南米遠征(3) 83年ぶりのウルグアイ遠征に参加する若手選手

 一昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■若手を多数招集した南米遠征

 ディディエ・デシャン監督が発表した23人の南米遠征メンバー、エリアキム・マンガラ、クレマン・グルニエ、ジョシュア・ギラボギ、アレクサンドル・ラカゼットの4人は代表出場経験がなく、ステファン・ルフィエ、ブノワ・トレムリナス、ジェレミー・マチューの3人は代表出場歴1試合とフレッシュなメンバーを多数選出した。
 このメンバーの大幅な入れ替えはチャンピオンズリーグ決勝の日程によりフランク・リベリー、負傷しているガエル・クリシー、パトリス・エブラ、マキシム・ゴナロンを欠いている。さらにロイック・レミーは5月中旬に暴行容疑で逮捕されている。マンガラ、グルニエ、ギラボギの3人は22歳、ラカゼットは21歳と若いメンバーが加わったが、3月に代表入りした19歳のポール・ポグバとラファエル・バランも起用したいところであるが、ポグバは6月下旬からトルコで開催される20歳以下のワールドカップに出場、バランは負傷のため南米遠征に参加できない。しかし、デシャン監督はメンバーを思い切って若手に切り替えていきたいという意図が見て取れ、トルコでの内容によっては夏から代表入りするメンバーも少なくないであろう。

■フランスでのクラブの経験のないマンガラ、ライバルだったグルニエ、ラカゼットとギラボギ

 マンガラはポルトガルのポルトに所属するDF、10代半ばでベルギーのスタンダール・リエージュと契約し、2年前にポルトに移った。すなわちフランスでのプロ経験なしに代表入りしたわけである。グルニエとラカゼットはいずれもリヨンに所属する選手で、本連載にはしばしば登場している。2人ともリヨンの下部組織からトップチームに昇格してきた。そして16歳くらいから年齢別代表に継続して選出されているエリート選手である。ギラボギはリヨンの最大のライバルのサンテチエンヌの選手で、トゥーロン出身であるが、サンテチエンヌの下部組織からトップチームに昇格した選手である。グルニエ、ラカゼットは数年にわたりライバルとして戦ってきて、年代別の代表チームにも選出されてきたが、今回フル代表として同じユニフォームを着ることになるのである。

■フランスカップ決勝翌日にパリを出発、16時間のフライトでウルグアイに

 フランス代表は6月1日の夜にパリ近郊のブルジュ空港で夕食を食べてから登場し、パリを飛び立ち、16時間のフライトを経て6月2日にウルグアイのモンテビデオに到着、12年ぶりに南米の地を踏む。このフライトには前日にフランスカップ優勝を果たしたボルドーのトレムリナスも合流していたが、スペインのクラブに所属するカリム・ベンゼマ(レアル・マドリッド)、アディル・ラミ、ジェレミー・マチュー(以上バレンシア)の3人はスペインから直接ウルグアイに向けて出発し、3日の月曜日にチームに合流する。

■4試合連続スコアレスドロー、初めてのウルグアイでの対戦

 フランスの対戦相手のウルグアイであるが、記憶に新しいのは昨年8月のディディエ・デシャン監督の初陣となるルアーブルでの親善試合である。この試合、スコアレスドローとなったが、実はウルグアイとはこの試合で4試合連続でスコアレスドローが続いている。2010年のワールドカップ(ケープタウン)、2008年の親善試合(スタッド・ド・フランス)、2002年ワールドカップ(釜山)とすべて0-0のドロー。その前の対戦は1985年にパルク・デ・プランスで行われた欧州選手権と南米選手権の勝者によるインターコンチネンタルカップ、ドミニク・ロシュトーとジョゼ・トゥーレのゴールでフランスが勝利したが、実はこれがウルグアイに対するフランスの唯一の勝利である。歴史をさらにさかのぼれば、フランスは1966年ワールドカップ(ロンドン)、1924年オリンピック(パリ)と敗れており、これまでの戦績は1勝4分2敗。
 意外なことにフランスにとってこれがウルグアイとウルグアイで初めて対戦することになる。フランスは1930年にウルグアイで開催された第1回ワールドカップに出場している。このワールドカップでのウルグアイ遠征はフランス代表にとって初めての欧州以外への遠征であった。その思い出の地にフランスは83年ぶりに戻ってきたのである。(続く)

このページのTOPへ