第1673回 オランダと親善試合(2) 代表初招集のルーカス・ディーニュとアントワン・グリエスマン

 3年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■パリサンジェルマンでマクスウェルの陰に隠れているルーカス・ディーニュ

 前回の本連載では予選突破以降初めての試合であり、メンバー決定まで唯一の試合である親善試合のオランダ戦に向けて24人のメンバーが選ばれ、そのうち4人は昨年11月のウクライナとのプレーオフと入れ替わったことを紹介した。その4人のメンバーのうち、ステファン・ルフィエとエリアキム・マンガラは代表経験があり、ワールドカップ本大会でのメンバー入りを目指す。それ以外のルーカス・ディーニュとアントワン・グリエスマンは初めての代表メンバー入りである。
 左サイドバックのディーニュはまだ20歳、本連載第1582回から第1589回で紹介した昨年トルコで行われたU-20ワールドカップ優勝の中心となった選手である。U-20ワールドカップ時にはリールに所属していたが、その直後に大型補強を進めるパリサンジェルマンに移籍している。
 年代別のフランス代表の守備になくてはならないディーニュであり、昨季リールではほぼ全試合に出場したが、パリサンジェルマンでは出場機会に恵まれていない。パリサンジェルマンの左サイドバックにはマクスウェルがおり、ディーニュは、ようやく9月13日のボルドー戦でデビューした。その後もマクスウェルの陰に隠れ、現段階でリーグ戦出場はわずか9試合にとどまっている。
 そのような状況であるが、ディディエ・デシャン監督はガエル・クリシー、エリック・アビダルをメンバーからはずし、ディーニュを24人のメンバーに選出したのである。その理由としてはアンダーエイジの代表としての豊富な経験、そしてリールでの実績が証明している通り、トップレベルで十分に通用する力を持っているからである。

■14歳からレアル・ソシエダで活躍するアントワン・グリエスマン

 もう1人の初めての代表入りとなる選手がグリエスマンである。グリエスマンは本連載第1607回でも紹介した通り、スペインのレアル・ソシエダの選手である。14歳で国境を越え、レアル・ソシエダへ、そして18歳でプロにデビューしており、現在22歳の選手である。プロ2シーズン目の2010-11シーズンからほとんどの試合に出場しており、若き才能は当然フランス協会のスタッフの目にもとまり、アンダーエイジの代表チームの攻撃陣として活躍した。
 ところが、事件は2012年の10月に起こった。当時フランス21歳以下の代表は2013年に行われる21歳以下の欧州選手権を目指してプレーオフをノルウェーと争った。ホームアンドアウエー方式の第1戦はフランスのルアーブルで行われ、今回代表入りしているラファエル・バランのゴールで1-0と勝利、しかし、4日後に行われたノルウェーでのアウエーゲームでフランスは3-5と敗れ、通算成績は4-5となり、イスラエルで行われる本大会の出場権を獲得することができなかった。

■プレーオフ期間中の夜間外出で長期の出場停止処分

 グリエスマンは2試合とも途中出場したが、このノルウェー戦に向けた合宿中に選手たちがパリのナイトクラブに出かけていたことが発覚した。出かけたのはノルウェーでの第2戦の3日前、この試合は3-5と敗れている。フランス協会は対象者である5人の選手に11月初めに重い処分を下した。ヤン・エムビラは2014年6月末まで、エムベイエ・ニアン、クリス・マビンガ、ウィッサム・ベン・イェデル、そしてグリエスマンの4人は2013年末まで、フランス協会の各代表チームには出場できないことになった。エムビラはこの時点でフル代表にも入っていたことからワールドカップ出場の道が絶たれたことになる。

■リーガ・エスパニョーラでの15得点が評価され、出場停止明けに代表入りしたグリエスマン

 その他の選手も残る目標はフル代表入りである。処分はフランス協会から受けたわけであり、ニアンはセネガル代表に昨夏招集されたが、これを拒絶し、ベン・イェデルはチュニジア代表監督も視察に来たが、代表入りはしなかった。
 2013年12月31日をもって処分が解け、左サイドのFWとしてリーガ・エスパニョーラで15得点をあげているグリエスマンが招集されたのである。(続く)

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