第984回 2009年ツール・ド・フランス(1) モナコを出発し、6か国を駆けめぐる熱戦

■例年以上に注目を集めた今年のツール・ド・フランス

 フランスの7月は革命記念日の月、F1フランスグランプリの月、そしてツール・ド・フランスの月である。今年は前回の本連載で紹介したとおり、サッカーの世界では例年に比べると、国内で行われる公式戦やその他のトーナメントが少なくなっている。また、F1賀は世界選手権となった1950年以来原則として7月初めに行われてきたF1フランスグランプリも、人気低迷により、2009年度の開催はキャンセルされた。その結果として、7月のフランスのスポーツファンの関心はツール・ド・フランスに集中することになったのである。
 今年で96回目を迎えるツール・ド・フランスの最初の見所はレースの始まるはるか前にある。それは毎年変更されるコースの発表である。前年の10月にコースが発表され、今回も大きな驚きを与えた。今年は7月4日にモナコをスタートする。昨年はブレストからのスタートであったが、同じ港町のスタートであるが大西洋に面したブルターニュの軍港であるブレストと、地中海のリゾート地のモナコでは大きく異なり、華やかな雰囲気の街からの出発となった。

■F1の街モナコを出発、欧州サッカーの都バルセロナへ

 今年のコースの目玉は45年ぶりにモナコをツール・ド・フランスが通過するということである。F1のフランスグランプリは前述のとおり今年は開催されなかったが、モナコグランプリは5月末に行われている。2000年に圧倒的な強さでリーグを制覇したサッカーのASモナコも近年は精彩を欠き、リーグ戦で上位に姿を現すことは少なくなった。フランス国内でF1が開催されず、サッカーチームも低迷していることから、モナコはますますF1の町としての性格が強くなってきたが、そのF1の市街地コースを銀輪が駆け抜けて熱戦が始まるという設定である。
 また、モナコはモナコ公国であり、フランスではない。国外からのツール・ド・フランスのスタートは2007前のロンドン以来、2年ぶりのことである。モナコを出発してからマルセイユ、モンペリエと地中海岸に南下し、今年のコースの最南端はスペインのバルセロナ、スペインリーグ、スペイン国王杯、チャンピオンズリーグの三冠を征した欧州のサッカーの都を訪れるのである。

■ピレネー山脈をアタック、アルプスを越え、アヌシーへ

 ここまでは平坦なコースであるが、バルセロナからピレネー山脈のアンドラをアタックすることになり、3日間連続で山岳コースというタフな日程となる。
 3日間の山岳コースが終わるとようやく最初の休息日が待っている。7月13日の休息日にはピレネー山脈の麓のタルブからフランス中西部のリモージュへ各チームは移動し、7月14日の革命記念日からは一路東に進路を変更する。フランス中部を西から東に進み、ボージュ山脈を越えてコルマールを目指す。コルマールからは南下し、スイスとの国境を越え、アルプス山脈で覇を競うことになる。このアルプスでの山岳ステージの間に2回目の休息日を迎える。
 スイス、イタリアまで足を伸ばすアルプスでの山岳ステージを終え、タイムトライアルはアヌシー湖を周回するコースである。アヌシーは本連載の第950回でも紹介したとおり、2018年の冬季オリンピックの国内開催候補地に選ばれている。アヌシー湖をバックに繰り広げられるレースは全世界にテレビ中継されるが、オリンピック招致のためのなによりのPR活動になるであろう。候補地に選ばれたのは3月であり、それよりも5月早い段階でツール・ド・フランスのコースに組み入れた主催者の慧眼にはただ驚くばかりである。

■歴代2番目に多い6か国を走破するコース設定

 アヌシーからは南下し、最終日の前日に行われる7月25日の第20ステージのゴールはモンバントゥである。モンバントゥはこれまでのツール・ド・フランスのコースに何回も組み込まれてきた定番である。
 最終日はモントローに移動してパリを目指し、シャンゼリゼ通りを周回するという例年通りのフィナーレである。このようにコースを紹介してきたが、モナコを出発し、フランスを通りスペイン、アンドラ、ドイツ、イタリアと合計6か国を回るコースとなっており、これは長い歴史の中で1992年の7か国(スペイン、フランス、ベルギー、オランダ、ルクセンブルグ、スイス、イタリア)に次いで、2番目に多いのである。(続く)

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