第1134回 不振に終わった南半球遠征(6) アルゼンチンにも記録的大敗

■ワールドカップ期間中に集まった2万5000人の観衆

 6月最後の週末のサッカーとラグビーのフランス-アルゼンチン戦のダブル対決は実現しなかったが、ブエノスアイレスのホセ・アマルフィターニ競技場には2万5000人の観衆が集まった。サッカーのワールドカップ期間中であり、アルゼンチンの試合は翌日であるとはいえ、同時刻には米国-ガーナ戦が行われている。アルゼンチンの外交というと英国とのフォークランド紛争の件で英国と関係が悪く、英国と同盟関係にある米国とも関係が良くないのではないかと思われる読者の皆様も少なくないと思うが、アルゼンチンは軍事面などで米国との関係は親密である。同盟国ともいうべき米国のサッカーよりもラグビーの試合を優先するファンがそれだけいたということは、欧州だけではなく、南米においても確実にラグビーが、その人気の地盤を固めていることの表れであろう。
 アルゼンチンのラグビーは、スコットランド戦では2万人の観衆を集めたが、スコットランド戦で連敗したにもかかわらず、フランス戦でそれ以上の観客を集めた。この理由としては、フランスが北半球最強のチームであること、そしてそのフランスに対してアルゼンチンは相性がいいこと、さらに今回の一連のテストマッチの最終戦であるということがあげられるであろう。

■バックス陣が大きく入れ替わったフランス

 そして注目のフランスの先発フィフティーンである。FW8人のうち3人が南アフリカ戦と入れ替わった。この中にはアルゼンチンA戦で負傷して離脱したバンチェスラス・ローレも含まれる。南アフリカ戦ではハーフ団の動きが大量失点につながったが、南アフリカ戦と同じハーフ団、SHモルガン・パラとSOフランソワ・トラン・デュックのコンビである。バックス陣は大幅に入れ替わる。両CTBと左のWTBが入れ替わる。左のWTBはアルゼンチンA戦で大活躍したジュリアン・マルジューである。

■前半半ばまで追いすがるのが精一杯のフランス

 南半球遠征の最終戦ということで同じフットボールのサッカーが株を落としている中で頑張りたかったフランスのフィフティーンであったが、期待を裏切るものとなった。まず全体的に疲労がたまり動きが悪く、ブレイクダウンでことごとくアルゼンチンにボールを支配される。苦しい体制でボールを支配されているからモールの中での反則や危険なタックルを犯してしまう。おまけにアルゼンチンのキッカーは名手フェリップ・コンテポニである。
 この試合、フランスは開始3分にポリカルがピックアップの反則からPGを決め先行するが、その直後に危険なタックルを取られ、コンテポニが30メートルの PGを決めて同点、フランスがリードしたのはこの1分間だけであった。9分にもコンテポニに30メートルのPGを決められ逆転される。19分にパラが30メートル近いPGを成功させ同点に追いついたが、フランスはここまで追いすがるのが精一杯であった。

■フェリップ・コンテポニ31得点、フランスは41失点、28点差の敗戦

 コンテポニに連続してPGを決められ、前半終了間際にはトラン・デュックのミスキックから相手にトライを献上してしまう。そして難しい角度のゴールをコンテポニが決め、アルゼンチンが19-6とリードして折り返す。
 後半も得点を重ねたのはアルゼンチンであった。49分にはコンテポニがキックだけではなくランでも観客を沸かせる。フランスの守備陣の間をすいすいと抜けてゴール真下にトライする。フランスも54分に期待の左WTBマルジューが負けじとゴール真下にトライを決める。しかしこれがこの試合フランスにとって唯一のトライであり、最後の見せ場となってしまった。
 13-26とダブルスコアまで持ってきたフランスであったが、集中力に欠け、アルゼンチンの得点を次々と許してしまう。60分にはトライを献上し、66分には難しい位置からのPGをコンテポニが決め、13-34とスコアは開く一方である。
 そして68分、フランスはマイボールスクラムであるにもかかわらずボールを取られ、フランカーからボールを受け取ったSOのコンテポニがフランスの守備陣をかわしてトライをあげる。ゴールも決まって最終スコアはアルゼンチンが41-13と28点差をつけて大勝したのである。
 この試合、アルゼンチンのコンテポニは31得点をあげて、アルゼンチン代表としての1試合最多得点の新記録を作る。一方のフランスはアルゼンチンに対し、これまでのワースト記録(2007年ワールドカップ3位決定戦の10-34)を更新する最多失点、最多得点差での敗戦となったのである。(この項、終わり)

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