第1318回 輝くシルバーメダルコレクター(4) 攻め続けたフランス、1点及ばず3度目の準優勝

 3月11日に起こった東北地方太平洋沖地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、救援活動、復旧活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■オールブラックスのハカに敢然と立ち向かったフランス

 予選プールでの惨敗からフランスは大きく変貌し、今大会2回目のニュージーランドとの対戦に挑む。試合前のウォークライ、オールブラックスのハカをフランスは積極的な態度で受け入れる。主将のティエリー・デュソトワールを中心に手をつないだフランスのフィフティーンはVの字になってハーフラインを越え、オールブラックスに迫る。後日この行為はペナルティを科せられることになるが、予選プールの時とは違う気合の入り方に、フランスだけではなく全世界のラグビーファンはフランスの変化を見て取ったはずであり、これからの80分は今までにない熱戦となることを誰しもが期待したであろう。そして予選プールの際は黒一色になったエデンパークであるが、決勝にはなんと8000人のフランス人が集結し、「アレー・レ・ブルー」の大合唱が起こる。

■守勢のニュージーランドが先制点

 ニュージーランドのキックオフで始まったこの1戦、2分にはフランスのスタンドオフ、ディミトリ・ヤシビリがキックを直接ダイレクトにタッチに出してしまい、この試合最初のセットプレーはニュージーランドボールのラインアウトとなる。このラインアウトをフランスは奪い、早くも乱戦の気配が漂う。
 フランスは5分にオフサイドの反則を犯し、左35メートルの位置からニュージーランドのピリ・ウィップーがゴールを狙うが、外れて先制点はならず。フランスのスタンドオフ、モルガン・パラが9分に負傷する。さっそくフランソワ・トラン・デュックがウォーミングアップを開始し、12分にピッチに入る。14分にデュソトワールが反則を取られ、ウィップーがゴール前にタッチキックを蹴る。このゴール前でのラインアウトから、ニュージーランドのプロップのトニー・ウッドコックが先制トライをあげ、6万観衆を飲み込んだエデンパークの黒い波が沸き起こる。ゴールは成功しなかったものの、攻め込んでいたフランスとしては思いもかけぬ失点となった。
 19分にはこの試合初めてのスクラム、試合開始から20分近くスクラムがなかったということは両チームのミスが極めて少なかったことを物語っている。このスクラムが安定せず、フランスはペナルティを取られる。スクラムに関してフランスはこの試合レフリーのジャッジもあり、苦戦することになる。26分位もフランスはペナルティを取られるがニュージーランドのウィップーがまた失敗する。

■ールドカップデビュー戦のステファン・ドナルドのペナルティゴール

 この試合は両チームのハーフ団にとっては受難の試合となった。34分にはニュージーランドの第3のスタンドオフであるアーロン・クルーデンが負傷で退き、第4のスタンドオフであるステファン・ドナルドが出場する。前半のうちに点差を詰めておきたいフランスは36分にトラン・デュックがドロップゴールを狙うがこれも外れる。フランスが陣地もボール支配も優勢な中、0-5とリードを許してハーフタイムを迎える。
 後半に入り、46分、ニュージーランドはペナルティゴールのチャンスを得る。キッカーは当たっていないウィップーに代わり、ワールドカップデビュー戦となるドナルド、見事に決めて8-0とリードを広げる。

■主将ティエリー・デュソトワールのトライ、フランソワ・トラン・デュックの活躍

 そしてその直後、8000人の青い集団が歓喜する。大会開始時に背番号10と付けていたトラン・デュックが起点となったフランスの攻撃が実り、最後にゴールラインを超えたのは主将のデュソトワールである。これをトラン・デュックがゴールを決めてフランスは7-8と1点差に詰め寄る。ここからは攻めるフランス、守るニュージーランドと言う構図で30分間の攻防が展開された。
 試合終盤にはニュージーランドのウィップー、フランスのヤシビリと両チームのスクラムハーフが退場し、フランスはジャン・マルク・デュサンが登場、デュサンはワールドカップ初出場ばかりではなく、これが代表デビューとなる。代表デビュー戦がワールドカップ決勝と言うのは極めて珍しいケースであろう。
 正確なタックルをベースにしたフランスは一体となって攻め続けるが、ニュージーランドが最後は逃げ切る。8-7と言うスコアでニュージーランドは24年ぶり2回目の優勝、フランスは3度目の決勝でまたも敗れ3回目の準優勝。フランスの銀メダルの輝きはこれまでの2回よりもまぶしいものであった。(この項、終わり)

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