第1820回 王者フランス、世界選手権5回目の優勝(4) スペインとカタールを破り、5回目の優勝

 このたびパリ並びにパリ近郊で起こった銃撃事件の犠牲者の方々のご冥福を祈るとともに、サッカー界での人種差別についてしばしば取り上げている本連載に対する読者の皆様からのご支援に感謝いたします。

■準決勝の相手は強豪スペイン

 グループリーグではもたつきの見られたフランスであるが、決勝トーナメントに入り、アルゼンチン、スロベニアに快勝し、ようやく優勝候補らしい試合運びを見せるようになった。
 準決勝の相手はフランス-スロベニア戦と同時刻に行われたスペイン-デンマーク戦の勝者である。ここまで来ると楽な相手との対戦はないが、間違いなくフランスにとって今大会で最もタフな相手となる。この欧州の強豪同士の試合はスペインが25-24と接戦をものにして準決勝進出、フランスと対戦することになる。フランスにはパリサンジェルマン、スペインにはFCバルセロナというサッカーを母体とするハンドボールの強豪チームがあり、スペイン代表のうち5人がフランスでのクラブ経験があり、フランス代表にも同様に5人のフランスのクラブの経験者がいる。
 前回大会の覇者スペインに対し、欧州選手権とオリンピックの覇者のフランス、この試合は事実上の決勝とも言われた。両国の最近の対戦は、2012年のオリンピックの決勝で23-22とフランスが勝利、2014年の欧州選手権では準決勝で対戦し、30-23とフランスが差をつけて勝利している。

■開幕直後の先発メンバーでスペインに勝利

 フランスの先発メンバーにはルカ・カラバチックに代わり、ダニエル・ナルシスが新たに加わっただけであり、開幕当初のメンバーが本調子となってきた。先手を取ったのはスペインであり、序盤はスペインが先行し、フランスが追いつくという展開であったが、7分に初めてフランスがリードする。そしてフランスのリードを決定的にしたのが9分のニコラ・カラバチックの得点である。この日2得点目であったが、フランス代表として通算1000得点となり、ジェローム・フェルナンデス(1451得点)、フレデリック・ボル(1016得点)に次いで3人目の偉業達成、このメモリアルゴールがフランスに火をつける。以降、フランスは一度もスペインにリードを許すことながなかった。前半はフランスが18-14とリードして折り返す。後半になってスペインも必死の追い上げで1点差まで追い上げることはあったが、結局フランスがスペインを振り切り、前回覇者を26-22と振り切り、決勝に進出したのである。 る。

■驚きの開催国カタールを下して優勝

 そして決勝の相手は驚きのカタールである。カタールは2022年のサッカーのワールドカップ開催に向けて各種のスポーツイベントと強化に励み、その1つが今回のハンドボールの世界選手権開催である。登録16人のうちカタール生まれの選手はわずか2人、外国からの帰化選手14人(モンテネグロ、シリア各3人、ボスニア・ヘルツェゴビナ、エジプト各2人、キューバ、スペイン、フランス、チュニジア各1人)で今大会に臨む。
 開催国の試合でも空席が目立った本大会であるが決勝は1万5000人の観衆で埋まり、白と茶色のカタール国旗一色となった。フランスの先発メンバーはGKにティエリー・オメイエ、フィールドプレーヤーはニコラ・カラバチック、ルカ・カラバチック、セドリック・ソラインド、ミカエル・ギグー、バランタン・ポルト、ダニエル・ナルシスという陣容である。3分にカタールが先手を取ったが、フランスも5分にギグーがペナルティショットを決めて逆転、以降はフランスがリードを許すことなく前半は14-11と3点のリードでの折り返しとなる。
 後半も終始フランスはリードを保ち、驚きの決勝進出を果たしたカタールの反撃をかわし、最終スコアは25-22でフランスが勝利する。この試合で活躍したのはニコラ・カラバチック、チーム最多の5得点を決め、優勝に貢献した。

■過去23年間、安定した好成績を誇るフランスハンドボール

 大会最優秀選手にはGKのオメイエ、ベスト7にはGKのオメイエとニコラ・カラバチックの2人が選出された。 フランスはこれで世界選手権は最多の5回目の優勝となるが、1992年のバルセロナオリンピック以降主要3大会に29回出場し、優勝は10回(世界選手権5回、オリンピック2回、欧州選手権3回)、二桁順位は1回だけという驚異的な強さを20年以上にわたって保ち続けているのである。(この項、終わり)

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