第2085回 欧州の頂点を目指すラグビーの戦い(3) アンソニー・フォーリーの急死で試合が延期

 平成28年熊本地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。お亡くなりになった方々に、謹んで哀悼の意を表します。 この地震が1日でも早く収まることと、被災地の皆様の安全とご健康をお祈り申し上げます。

■不名誉な4連敗から脱したいフランス勢

 前回の本連載では10月14日の欧州チャンピオンズカップで出場したフランス勢4チームがいずれも敗れたことを紹介した。特に大型補強により、欧州王者に返り咲こうとするトゥーロンが前年度覇者のサラセンズ(イングランド)に破れたことは大きな衝撃となった。翌日の15日には残る3チーム(ラシン92、クレルモン、ボルドー・ベグル)が出場し、前日の不名誉な記録にストップをかけたいところである。ラシンは地元のコロンブにアイルランドのマンスターを迎え、クレルモンは昨年のワールドカップの舞台にもなったイングランドのエクセターに乗り込み、ボルドー・ベグルは本拠地にアルスター(アイルランド)と対戦する。

■試合を一気にひっくり返したセバスチャン・タオフィフェヌアのスーパートライ

 ボルドー・ベグルの試合は14時にキックオフされた。ボルドーには新スタジアムであるマットミュット・アトランティックが昨年完成し、サッカーのジロンダン・ボルドーは新スタジアムに本拠地を移し、今夏の欧州選手権でも新しいスタジアムが使用されている。
 それまでのボルドーのスタジアムであったシャバン・デルマス競技場は1936年と1998のサッカーの2度のワールドカップ、さらには2007年のラグビーのワールドカップにも使用され、2007年大会では日本がカナダと引き分けている。サッカーのチームを失ったシャバン・デルマス競技場には新しい主として2011年にTOP14に昇格したラグビーのボルドー・ベグルが使用し、ボルドーのラグビーのメッカとなった。
 ボルドーとラグビーというとローラン・ルノーが有名であるが、このアルスター戦には21,132人の観衆が集まり、ファンの関心の高さをうかがわせる。ボルドーは開始早々にペナルティゴールで先制したものの、逆転され、前半を3-10で折り返す。後半に入り、残り6分となった74分、9-13と4点ビハインドのボルドー・ベグルにビッグプレーが飛び出した。途中出場の巨漢のプロップのセバスチャン・タオフィフェヌアが自陣深くからボールを持って独走、逆転トライを決める。これで勢いづいたボルドー・ベグルはその後もペナルティトライを含む2トライを上げ、28-13と大差をつけてフランス勢初勝利となったのである。
 また、17時キックオフのエクセター-クレルモン戦は序盤からクレルモンが圧倒し、ウェスレイ・フォファナの2トライなどで35-8と圧勝する。

■試合の前夜にマンスターのアンソニー・フォーリー監督が急死

 しかし、16時15分にキックオフ予定だったラシン92-マンスター戦は思わぬアクシデントに見舞われた。伝統の水色と白の横縞のユニフォームのラシン92のファンと、赤いジャージーのマンスターのファンがパリ郊外のコロンブにあるイブ・デュ・マノワール競技場に三々五々集まって来た時、試合の中止が発表された。マンスターのスタッフならびにメンバーはパリ近郊のホテルに宿泊していたが、マンスターの監督であるアンソニー・フォーリーが試合の前夜から当日の朝にかけて心臓発作で息を引き取ったのである。

■ミスター・マンスターであったフォーリー

 フォーリーは享年42歳、1995年から2005年までアイルランド代表として活躍したが、なんといっても所属チームのマンスターでの栄光はアイルランドのファンの脳裏に焼きついている。2007-08シーズンと2007-08シーズンの2回、マンスターの一員としてはハイネケンカップで優勝を果たしており、まさにミスター・マンスターであり、ミスター・アイルランドであり、現役引退後もマンスターのFWコーチを経て、2014年から監督に就任した。
 このフォーリーの逝去を受けて、マンスター側は試合をすることができないことを相手チームのラシン92と主催者に申し入れ、キックオフの2時間半前に試合の延期が決定したのである。
 コロンブにはマンスターのファンだけではなく、ラシン92のファンも一緒に追悼の歌を歌う。またパリから駐仏アイルランド大使も駆けつけ、スタジアム内では追悼のセレモニーが行われたのである。(この項、終わり)

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