第2427回 最後の王座を逃したフランス(9) シングルスで連敗、ブラックフライデー

 7年前の東日本大震災、一昨年の平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■2万7500人の観衆が集まったリールのクレーコート

 シングルスでほぼトップ10の2人のプレーヤーを擁するクロアチアに対し、フランスは経験豊富ではあるが今年初めてデビスカップチーム入りしたジョー・ウィルフィールド・ツォンガ、準々決勝のイタリア戦しか出場していないジェレミー・シャルディという奇策をヤニック・ノア監督はとる。
 抽選の結果、初日の第1試合はフランスのナンバーワンのシャルディがクロアチアのナンバー2のボルナ・チョリッチと対戦し、第2試合はフランスのナンバー2のツォンガとクロアチアのナンバーワンのマリン・チリッチが対戦することになった。ランキング的にはフランスが不利であるが、何とか金曜日に1勝をあげたいところである。
 会場のリールのピエール・モーロワ競技場は2万7500人のファンで埋まり、観客は青、白、赤のシャツを着こみ、さらにスタンドを青でライトアップし、フランスのホームコートであることを盛り上げる。通常はサッカーに使われているスタジアムであるが、室内競技にも対応したモダンなスタジアムのなせる技である。そしてシャルディ、ツォンガの得意なクレーコートを準備し、最後のデビスカップ決勝への備えは整った。

■ダブルフォールトを繰り返したジェレミー・シャルディ、ボルナ・チョリッチに敗れる

 シャルディはこれまでにチョリッチと3回対戦し、2勝1敗と勝ち越している。22歳のチョリッチは、この時点のATPランキングが12位で自己最高位である。今年の初めは28位であり、まさに伸び盛りであり、今年のデビスカップのシングルスでも5戦して4勝、準決勝の第5ラバーでの米国戦での勝利はクロアチアのファンにとって忘れられないものになった。したがって、過去の戦績はあまり参考にならないかもしれない。そのファンの不安を現実のものにしてしまうような展開となった。シャルディはダブルフォールトを繰り返し、第1セットを2-6と簡単に落としてしまう。第2セットは5-5まで持ち込んだものの、その後2ゲームを続けて奪われ、5-7と落としてしまう。第3セットも4-6と簡単に落としてしまい、1セットも奪うことなく、フランスは黒星発進となる。

■ジョー・ウィルフィールド・ツォンガもマリン・チリッチにストレート負け

 続いて登場したツォンガはチリッチとはこれまでに9回対戦、4勝5敗とわずかに負け越している。今年はあまり試合に出場していないこともあってATPランキングは259位まで落ちている。
 しかし、フランスのファンは27年前のリヨンの奇跡を忘れていない。リヨンで行われた米国との決勝、ピート・サンプラス、アンドレ・アガシという当時の世界のトッププレーヤー相手にランキングでははるかに劣るアンリ・ルコントとギ・フォルジュが満員の観客の声援を受けて勝利した。この時は第4ラバーで優勝が決定したが、観客の歓喜のために競技が続行できなくなったため、最終第5ラバーがキャンセルとなった。以降、第4ラバーの試合で勝敗が決した場合は第5ラバーの試合を行わないこともあるとルールが変更された。これもデビスカップの歴史である。最後の決勝という舞台は整い、ツォンガが奇跡を起こすかと思われたが、ツォンガもブレークポイントを握られるとそれを挽回することができず、第1セットは3-6、第2セットは5-7、第3セットは4-6と肩を落としてオートを後にすることになる。

■ブラックフライデーからの奇跡に期待するフランス

 フランスは初日のシングルス2試合で1セットもとることができず、ブラックフライデーとなってしまった。フランスが金曜日のシングルスで連敗したことは過去18回の決勝ではなかったことである。そして初日のシングルスで2敗してから、3連勝して決勝で勝利したケースは1939年に米国に逆転勝ちした豪州だけである。さらにフランスが2連敗から3連勝したケースはこれまでに4回、1948年のルーマニア戦、1964年の南アフリカ戦、1996年のイタリア戦、2014年のドイツ戦だけである。最後のデビスカップ決勝でフランスは奇跡を起こすことができるだろうか。(続く)

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