第3609回 パリサンジェルマン、ハンドボールチーム訪日(3) 新体制の今年もジャパンツアーで連勝
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■長期政権から新体制になったパリサンジェルマン
フランスリーグで11連覇を果たしたパリサンジェルマン、新シーズンに向けて、チーム編成に大きな変更があった。まず2018年から監督を務め、カタール資本下では最長政権となったスペイン人のラウール・ゴンザレスが今夏で契約満了となり、セルビア代表監督に就任する。後任の新監督はデンマーク人のステファン・マドセンがサウジアラビアのアル・アリーから移籍してきた。アシスタントコーチにはかつてパリサンジェルマンに選手として所属し、リオデジャネイロとパリのオリンピックで金メダルを獲得したヘンリック・モーガードが就任することになった。また、選手も新たに7人が加わった。この中にはライバルのモンペリエに所属するフランス代表のカール・コナン、ドイツ生まれのフランス代表のノア・ゴーダンなども含まれている。
■新シーズン前に行われるプレシーズンマッチ、ジャパンツアー、チャンピオンズトロフィー
7月23日に新監督以下で練習を再開したパリサンジェルマンであるが、シーズン開幕直前には開幕前の8月30日にはポワチエで昨季のフランスカップの勝者のモンペリエとチャンピオンズトロフィーを戦うことになる。これら新シーズンに向けてチームは、8月初めにドイツに移動し、ライン・ネッカー・レーベン、ゲッピンゲンとプレシーズンマッチを戦い、パリに戻ってきてからは国内のダンケルクと8日に非公開のプレシーズンマッチを戦う。そして今年で3年目となるジャパンツアーに赴くことになる。
■パリサンジェルマンと日本を結びつけたリュック・アバロ
このツアーが続いている理由はリュック・アバロの存在によるところが大きい。アバロは前回の本連載で紹介した通り、2012年のロンドンオリンピックで金メダルを獲得した直後にカタール資本となったパリサンジェルマンに移籍してきたビッグネームである。2021年までパリサンジェルマンの栄光を支え、2021年の東京オリンピック後にジークスター東京に移籍してきた。アバロは2023年まで現役から引退し、ハンドボール殿堂入りしているレジェンドである。アバロはジークスター東京とハンドボール日本代表チームの顧問的な立場に立っている。
パリサンジェルマンと比肩するビッグクラブのジークスター東京との対戦はフランスのファンならずとも世界のスポーツファンの注目を集める。そのような理由で3年連続してこのカードが組まれたのである。サッカーの世界であればクラブワールドカップでしか見られないような組み合わせにファンの関心は高まった。訪日初年から、パリサンジェルマンはジークスター東京と日本代表と対戦しているが、今年もスーパースター軍団であるジークスター東京戦は早々にチケットが完売した。
■ジークスター東京と日本代表に連勝したパリサンジェルマン
日本におけるハンドボール熱は高く、パリサンジェルマンはフランスでは経験できない大観衆、8月19日のジークスター東京戦には会場の代々木第一体育館に7,939人が集まった。ジークスター東京は主将の玉川裕康、副将の部井久アダム勇樹を欠く、飛車角落ちの陣容であったが、前半は20-20のタイスコアで折り返す。後半も接戦となるが、最後の同点のチャンスを逃し、35-36の1点差で敗れた。過去のこのカードでは1年目は27-36、2年目となる昨年は29-31、明らかにジークスター東京は欧州のトップレベルのチームと互角であることが証明された。
翌日には日本代表と対戦した。観客は前日よりも少ない6,566人である。序盤は日本代表がリードしたものの、大観衆に慣れたパリサンジェルマンが慣れたのか、試合を支配するようになる。前日のジークスター戦で12得点をあげたエロイム・プランディがこの日も活躍する。さらにはGKのミケル・ルブクビストも得点を決め、前半は19-9と大量のリードで折り返す。
後半には日本が4連続ゴールをあげるシーンもあったが、最後はパリサンジェルマンが突き放す。最終スコアは30-23、パリサンジェルマンが今年もジャパンツアーを連勝で飾ったのである。(この項、終わり)