第479回 ワールドカップ予選フィナーレ(1) 負傷明けのジダンにかかる期待

■ファンが期待する1982年ワールドカップ予選と1996年欧州選手権予選の再現

 ドイツを目指して昨年秋に始まったワールドカップ予選も10月の上旬に各グループでの戦いが終了する。本連載でも何回も取り上げてきたが、これまでのフランス代表は苦しい戦いを続けてきた。過去のワールドカップ予選の歴史をさかのぼると、フランスが他国の後塵を拝し、不本意ながら予選落ちをした事は何度もある。例えば、1988年欧州選手権予選や1990年ワールドカップ予選がこれに相当する。また、出場圏内にあって最終戦で逆転されて出場権を逃したという1994年ワールドカップ予選のようなケースもある。
  今回の予選の特徴は、上位チームにほとんど差がない状態で、かつフランスが上位チームの中では一歩出遅れた感じの展開であるという点である。そういう点では1982年ワールドカップ予選や1996年欧州選手権予選と似た展開である。1982年ワールドカップ予選では最終戦の前の試合でオランダをパリに迎えて勝利し、最終戦もホームでキプロスに4-0と大勝して、得失点差でアイルランドを押さえて、スペイン行きを決めた。1996年欧州選手権予選もまた最終戦の前のルーマニア戦で奇跡的な勝利をあげてイングランドへのチケットを手に入れた。ファンはこの両予選の再現を期待しているのである。

■これまで以上の厳しい戦いとなった今回の予選

 しかし、今回の予選の厳しさは終盤で上位相手とアウエーで2試合戦うということである。前回準優勝とはいえオランダをホームに迎えた1982年ワールドカップ予選、予選で2位以内をほぼ確定していたルーマニアと対戦した1996年欧州選手権予選よりも厳しい戦いとなったのである。

■両チームにとって大一番となるスイス-フランス戦

 大混戦となったフランスの所属するグループ4はスイスとフランスが勝ち点16で並ぶ。スイスの残り試合はホームでのフランス戦とアウエーでのアイルランド戦、フランスはアウエーのスイス戦とホームでのキプロス戦。勝ち点15で追うイスラエルはホームのフェロー諸島戦の1試合。勝ち点13と後退したアイルランドはアウエーのキプロス戦とホームのスイス戦。フランスはスイス戦に勝てば、勝ち点19となり、これに追いつく可能性があるのはスイスとアイルランドだけとなるが、フランスと両チームとの直接対決の成績が優先されるため、フランスの1位が確定する。逆にスイスがフランスに勝ち、アイルランドに勝つか引き分けるかすると、スイスの成績がフランスを上回る。
  また、スイスがフランスに勝ち、アイルランドがキプロスとスイスに勝つと、スイス、フランス、アイルランドが勝ち点19で並び、3か国の直接対決の成績で順位が決定される。この場合、3か国の対戦成績は1勝2分1敗となり、得失点差の勝負となる。つまり、今度のスイス-フランス戦でアウエーのフランスは勝ちさえすればよく、ホームのスイスは勝つだけではなく、得点差をつけて勝ちにいく、というホームアンドアウエーの基本のような戦いとなるわけであり、興味は尽きない。

■負傷中のジネディーヌ・ジダンを招集

 さて、この10月決戦を前に各チームがメンバーを発表した。注目すべきはジネディーヌ・ジダン、ティエリー・アンリという負傷して戦列を離れている2人の選手であった。レイモン・ドメネク監督はジダンをメンバーに入れ、アンリをはずした。本連載の読者の皆様ならよくご承知のようにジダンはこの8月から代表に復帰し、3連勝の原動力となっている。ドメネク監督の前任のジャック・サンティーニ監督は攻撃的なMFを両サイドに配置し、ジダンを左サイドで起用していたが、ドメネク監督は攻撃的MFを中央に1人配置するだけでそのポジションにジダンを起用している。ドメネク監督は攻撃の起点としてジダンに全幅の信頼を寄せており、ジダンをメンバーに入れたのであろう。
  ところで、肝心のジダンであるが、9月7日のアイルランド戦で負傷して以来、レアル・マドリッドでも試合に出場していない。しかし、10月2日のマジョルカ戦でようやくベンチ入り、復帰が期待されるところである。(続く)

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