第507回 2006年ワールドカップ展望(5) グループ首位でケルンでの連戦を狙うフランス

■12会場全てで行われる決勝トーナメント

 前回の連載の最後にフランスは日程的に厳しくなり、決勝トーナメント1回戦の相手が第1シード国のスペインになってもグループリーグの首位突破を目指すと書いたが、その理由について解説しよう。その理由は今大会の開催地数にある。今大会の開催地は12会場、前回の韓国と日本で行われた20会場よりも少ない。この12会場では少なくとも決勝トーナメントの1回戦8試合もしくは準々決勝4試合のいずれか1試合が少なくとも行われる。韓国・日本で行われた際はワールドカップクラスのスタジアムが多数存在していたことによる熾烈な誘致合戦の末、札幌、鹿島などはグループリーグだけでしか使用されなかった。開催スタジアムの数が減少したことが、各チームの戦略に微妙な影響を落としている。

■1998年大会では試合会場に明暗が分かれたフランスとブラジル

 1998年大会ではグループリーグで特定のチームが同じスタジアムで試合を行わないような工夫がなされてきた。ところが、決勝トーナメントに入ってから、準々決勝、準決勝、決勝と3試合連続してスタッド・ド・フランスで試合を行い、初優勝を飾った。疲労のたまる大会終盤に移動のロスがないことは大きなアドバンテージとなり、栄冠を手にしたのである。これはフランスが所属するグループCの首位国に与えられた恩典であった。一方、決勝で敗れた前回優勝のブラジルは試合会場に恵まれなかった。グループAで2位となればグループリーグ最終戦と決勝トーナメント1回戦を同じマルセイユで戦うことができ、準々決勝以降はスタッド・ド・フランスで戦うことができた。しかし、グループAで1位となってしまったために、マルセイユ(グループリーグ最終戦)→パルク・デ・プランス(決勝トーナメント1回戦)→ナント(準々決勝)→マルセイユ(準決勝)→スタッド・ド・フランス(決勝)とまさに一足早いツール・ド・フランスのような強行軍になってしまったのである。
 すなわち1998年大会の改革は不十分であり、その反省を踏まえて試合会場が割り振られたのが2002年大会であった。そして迎える2006年大会は12会場で行われ、決勝トーナメントに入ってからは8会場で1試合、4会場で2試合行われるが、同じ会場で連続して試合を行う可能性がないような組み合わせとなっている。つまり1998年のフランスのように、特定の会場に居座って連戦して勝ち上がっていくチームはない。

■同一会場での連戦の可能性があるグループG

 ところが、この2006年大会にもひとつだけ落とし穴があった。それはグループリーグ最終戦と決勝トーナメント1回戦の試合会場が同じになる可能性が存在することである。グループDのイランかアンゴラが2位になった場合(ライプチヒ)、グループFの日本かブラジルが1位になった場合(ドルトムント)、グループGではフランスかトーゴが首位になった場合(ケルン)、そしてスイスか韓国が2位になった場合(ハノーバー)の4ケースがある。フランスの所属するグループGでは2強チームであるフランスとスイスの利害が見事に一致する。つまり、移動のロスを少なくするという点でフランスは首位、スイスは2位での通過を狙うであろう。
 決勝トーナメントの準々決勝以降、スタッド・ド・フランスで勝ち進んだ1998年のフランスも、決勝トーナメント1回戦のパラグアイ戦は大苦戦であり、延長後半に攻め上がったローラン・ブランのゴールでようやく勝利をものにした。実はグループDで2位のパラグアイはグループリーグの最終戦と決勝トーナメント1回戦を同じランスで戦ったと言う事実を忘れてはならない。

■日本に立ちはだかる首位突破を目指すブラジル

 また、1998年大会で泣いたブラジルもその涙を忘れずに本大会に臨むであろう。ブラジルがグループリーグで2位になっていれば、準々決勝ではランスでの苦戦を終えたばかりのフランスと対戦しており、その軍配はどちらに上がったかわからない。この教訓からブラジルは前回の本連載で紹介した通りグループリーグの首位突破を狙うであろう。日本が最終戦でブラジルと対戦することは決して有利ではないはずである。このように1998年大会から大会形式に修正が加えられてきたが、まだまだ改善すべき点があるのである。(続く)

このページのTOPへ