第997回 真夏のワールドカップ予選(3) フェロー諸島に辛勝し、秋の陣へ

■キャリアの少ない選手が中心のメンバー構成

 2006年ワールドカップ予選、2008年欧州選手権予選に続き、2010年ワールドカップ予選でも同じグループに入ったフランスとフェロー諸島、2004年9月の初対戦以来5回目の対戦となった。
 このフェロー諸島戦の先発メンバーを紹介しよう。GKはこの試合が代表での3試合目となるウーゴ・ロリスが出場、第1GKのスティーブ・マンダンダを先発させなかったことからもロリスのテストと言う意味合いが感じられる。DFは右サイドはバカリ・サーニャ、左サイドはパトリス・エブラ、中央にはウィリアム・ギャラスとジュリアン・エスクーデを起用する。前日に誕生日を迎えたセバスチャン・スキラッチはベンチからのスタートとなった。守備的MFは右にラッサナ・ディアラ、左にジェレミー・トゥーララン、攻撃的MFは中央にヨアン・グルクフ、右にニコラ・アネルカ、左にフローラン・マルーダ、そして1トップにアンドレ・ピエール・ギニャックを起用する。

■ついに消えたワールドカップ優勝メンバー

 先発メンバーだけではなく控えメンバーまで見渡しても、キャリアを積んだ選手が少なくなった。2004年の初対決のときに出場していた選手はエブラ、ギャラス、アビダルだけである。控えの選手まで含めても、11年前のワールドカップ優勝時のメンバーがいなくなったのは初めてのことである。また、ワールドカップ優勝の2年後の欧州選手権優勝時のメンバーもベンチのアネルカだけになったのである。
 そして代表歴100試合以上の選手も不在である。代表歴100試合以上の選手がメンバー入りしなかったのはほぼ4年ぶりのことである。これらのことは1998年、2000年に優勝した選手のほとんどはその後キャリアの頂点を迎えたということを意味している。自国開催のワールドカップを控え、当時の代表監督エメ・ジャッケはジャン・ピエール・パパンやエリック・カントナなどのベテラン選手をメンバーから外した。もし、彼らがメンバーに残っていたとしてもワールドカップで優勝していたかもしれないが、おそらく彼らはワールドカップ後に代表を引退し、その後のフランスサッカーの歴史は大きく変わっていたであろう。

■夢の主将を務めるウィリアム・ギャラス

 このように栄光を知らないメンバーで戦うことになるが、この中で代表選手として最も多くの試合に出場しているのが31歳のギャラスであり、73試合目の代表での試合となる。本来ならばこの試合で主将を務めるべきパトリック・ビエイラ、ティエリー・アンリがメンバーから外れ、6月のトルコ戦で主将を務めたエリック・アビダルはベンチということでギャラスが主将は初めて務めることになった。
 「代表チームの主将は夢だった」というギャラスはマルセル・デサイーの後任であり、2002年に代表入りし、次のワールドカップが最後の国際大会になるかもしれない。

■圧倒的に攻めるが1点どまり

 そのギャラス率いるフランスは序盤から試合を圧倒する。しかしながら、なかなかゴールを決めることができない。前回の本連載で紹介したとおり、フェロー諸島は守備を固め、侮れない相手として成長していたのである。20分には自陣ペナルティアリアでギャラスが相手選手との競り合いで倒してしまい、フェロー諸島はPKを要求したが、ギリシャ人の主審はこれを認めず、フランスは救われる。
 スタジアムに集まった観衆はわずか3000人、閑散とした中で行われた試合、時計の針は進んでいく。フランスはようやく42分にマルーダからのパスを受けたギニャックがゴールを決めて、1点リードでハーフタイムを迎える。
 後半に入った直後にアネルカがチャンスをつかむが、2点目にはならなかった。そして体調が万全ではないフランク・リベリーも投入し、チャンスはつかむものの、スコアは動かない。ギニャックと同じトゥールーズに所属するムッサ・シソッコを代表にデビューさせる余裕はなかった。結局90分を終わって1-0と言う得点に終わったフランス、ギニャックの代表初ゴールが収穫であり、無失点に抑えたロリスもまだ不安定なことがあることがわかった。そして最大の収穫は勝ち点3を獲得したことである。
 フェロー諸島に辛勝したフランスは9月初めに予選を2試合戦う。9月5日にはホームでルーマニア戦、9日にはアウエーでセルビア戦、秋の陣はまず東欧勢との連戦で始まるのである。(この項、終わり)

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