第1032回 アイルランドとのプレーオフ(6) 延長戦の末、フランス本大会出場

■欧州のプレーオフ4試合の中で最も遅い21時キックオフ

 ワールドカップ南アフリカ大会に出場する32か国のうち、26チームがすでに出場権を決定し、残る椅子は6つとなり、11月18日に世界各地で最後の6試合が行われた。すべてプレーオフであり、アフリカのグループCで勝ち点等が並んだアルジェリアとエジプトが中立地のスーダンで戦う以外は、南米5位のウルグアイと北中南米カリブ海4位のコスタリカ、そして欧州のグループ2位同士の4試合は第2戦である。これらの6試合で一番遅くキックオフされるのは、フランス時間で翌日の0時となるウルグアイでのモンテビデオでのウルグアイ-コスタリカ戦であるが、欧州のプレーオフ4試合はすべてキックオフ時間が異なり、ウクライナ-ギリシャ戦が19時、スロベニア-ロシアが20時45分、ボスニア・ヘルツェゴビナ-ポルトガル戦が20時50分に開始され、フランス-アイルランド戦は欧州の4試合の中では最も遅い21時キックオフである。

■先発22人中21人がダブリンでの試合と同じメンバー

 ホームの第1戦で勝ちを逃したアイルランドであるが、内容はフランスを上回っていた。名将ジョバンニ・トラパットーニ監督はダブリンでの第1戦と同じ先発メンバーで第2戦に挑む。
 一方、アウエーの試合ではニコラ・アネルカの幸運なゴールで先勝したフランスであるが、決してその試合内容は賞賛されるものではなかったが、負傷したストッパーのエリック・アビダル以外は同じメンバーでこの第2戦を迎える。アビダルの代役にはジュリアン・エスクーデを起用する。念のためフランスの先発メンバーを確認するとGKはウーゴ・ロリス、DFは右からバカリ・サーニャ、エスクード、ウィリアム・ギャラス、パトリス・エブラの4人、守備的MFは右がラッサナ・ディアラ、左がアルー・ディアラ、そして攻撃的MFは中央にヨアン・グルクフ、右はニコラ・アネルカ、左にティエリー・アンリ、そして1トップはアンドレ・ピエール・ジニャックである。

■主将ロビー・キーンのゴールで互角のスコア、延長戦へ

 スタッド・ド・フランスには79,145人という大観衆がつめかけた。ホームの圧倒的な声援を背に、前回の本連載で紹介したように大勝して南アフリカ行きを決めたいフランスであるが、この試合も苦戦する。開始早々、代役ストッパーのエスクーデが接触プレーで離脱、9分にはセバスチャン・スキラッチと交代する。20分過ぎからはアイルランドが立て続けに決定的なチャンスをつかむが、ノーゴール、フランスはピンチを逃れる。しかし、33分アイルランド主将のCFのロビー・キーンが左サイドからのセンタリングを受けてシュート、ダブリンでは数々のスーパーセーブを見せてきたロリスも反応するが、はるかに及ばず、失点を許す。これで両チームの立場は互角となる。アイルランドは前半のロスタイムには追加点の好機をつかむが、得点はならず、フランスは1点のビハインドでハーフタイムを迎える。
 後半になってもリズムは変わらなかった。フランスは攻撃陣も動きが悪く、56分には早くもジニャックをあきらめ、シドニー・ゴブーを投入する。しかし、アイルランドの攻撃は続く。もしフランスがもう1失点すれば、南アフリカ行きのためには3点取らなくてはならず、1点も許されない状況が続くが、73分にはキーンに対するギャラスのタックルがはずれ、ピンチを迎えるが、ロリスが防ぐ。そして87分にはグルクフもベンチに下げ、フローラン・マルーダを投入し、ラ・マルセイエーズの合唱が沸き起こる。そして90分経過し、第1戦同様1-0でアウエーチームが勝利したため、試合は延長戦へともつれ込む。

■ティエリー・アンリのハンドを見逃し、ウィリアム・ギャラスが決勝点

 延長戦になると、フランスが優勢となる。102分にはゴブーがゴールネットを揺らすが、これはオフサイドの判定。そして104分、好位置でFKのチャンス、これを途中出場のマルーダが蹴り、ゴール前のアンリがアイルランドの選手と競りながら、手で折り返す。このボールをオフサイドの位置にいたギャラスがゴールに押し込む。試合後に、アンリ自身も故意ではないが手にボールが当たったと認めている。
 この誤審とも言える判定で奪った1点で2試合通算スコアではフランスが2-1と上回り、南アフリカ行きを決めたのである。(この項、終わり)

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