第1446回 新生フランスのワールドカップ予選始まる(1) 第3GKにカムバックしたミカエル・ランドロー

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■本大会の2年前の秋から始まる欧州のワールドカップ予選

 8月15日に行われた初陣のウルグアイ戦ではスコアレスドローに終わり、新監督として18年ぶりの初戦勝利を記録することができなかったディディエ・デシャン監督、就任2試合目からワールドカップ予選が始まる。2014年にブラジルで行われるワールドカップに向けては南米やアジアではすでにワールドカップ予選が始まっているが、欧州では従前通り本大会の2年前の秋から予選が開始される。

■第2シードとなり厳しいグループに入ったフランス

 欧州からワールドカップに出場できるチームは13チーム、南アフリカ大会と同じ数である。昨年7月30日に組み合わせ抽選会がブラジルのリオデジャネイロで行われている。本連載の第1277回と第1278回で紹介したとおり、フランスは第1シードから外れてしまい、第1シードのスペインと同じグループIに入ってしまう。また第3シードもこれまで勝ったことがないベラルーシが入り、フランスにとって厳しい予選の組み分けとなってしまった。
 序盤にあたる年内の日程であるが、初戦はシード順では最下位(グループIは唯一5チームで構成されるグループである)のフィンランドと9月7日にアウエーでの戦い、9月11日にはフランスに戻り、スタッド・ド・フランスでベラルーシと対戦する。10月にもインターナショナルマッチデーが2日間予定されているが、12日は試合がなく、日本と親善試合を行い、16日に欧州選手権でも完敗したスペインとマドリッドで対戦する。

■9月の連戦に向け、23人のメンバーを発表

 このような厳しい精神的圧力のかかる中で、デシャン監督は8月29日に9月の2試合に向けた23人のメンバーを発表した。メンバー紹介するとGKはウーゴ・ロリス、スティーブ・マンダンダ、ミカエル・ランドローの3人、DFはガエル・クリシー、パトリス・エブラ、ローラン・コシエルニー、アディル・ラミ、マプー・ヤンガ・エムビワ、クリストフ・ジャレ、ママドゥ・サコ、アントニー・レベイエールの8人である。MFはヨアン・カバイエ、ブレーズ・マツイディ、マキシム・ゴナロン、リオ・アントニオ・マブーバ、マチュー・バルブエナ、エチエンヌ・カプー、アブー・ディアビの7人、FWはジェレミー・メネス、カリム・ベンゼマ、オリビエ・ジルー、バフェタンビ・ゴミス、フランク・リベリーの6人である。

■4年ぶりに復帰、33歳のミカエル・ランドロー

 8月のウルグアイ戦と比較すると、最大の驚きは3人目のGKとしてこのところ定位置だったセドリック・カラッソに代えて、ランドローを呼び戻したことであろう。ワールドカップや欧州選手権の本大会という長丁場の戦いには通常3人のGKを登録して臨む。しかし、それでも第3GKに出場の機会が回ってくることはまれである。ましてや今回のように2試合しか行わない戦いの場合、第3GKが出場する可能性はゼロであると言えよう。
 しかし、なぜデシャン監督が第3GKを登録し、ランドローの名を記したのかは明確である。すなわち、第3GKの役割は3番目のGKというよりは、チーム全体のまとめ役である。2年前のワールドカップ、そして今年の欧州選手権と、フランス代表はチーム内で内紛が起こり、ファンの期待を裏切った。その原因は選手の中にリーダー的な人材がいなかったこと、ベテラン選手の不在も指摘されている。ウルグアイ戦に招集されたメンバー22人のうち、30歳以上は31歳のエブラだけであった。そのためにもベテランの33歳のランドローの力が欲しかったのであろう。
 ランドローの代表入りは2008年の欧州選手権の直前のティーニュでの合宿が最後であり、試合出場となるとその前年にさかのぼり、2007年11月16日のモロッコ戦以来、ほぼ5年間フランス代表の試合に出場していないことになる。
 しかし、ランドローは現在リールに所属し、2季前の二冠達成時にはリーグ戦全試合に出場しており、リールの優勝に貢献している。そして今なお、リールの正GKであり、この代表入りが発表されたその夜もチャンピオンズリーグの本戦出場のためのプレーオフでデンマークのFCコペンハーゲンと戦い、延長までもつれこんだ試合で120分間を無失点に抑え、本戦出場に大きく貢献したのである。(続く)

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