第1629回 ウクライナと運命のプレーオフ(4) ウクライナに0-2で敗れ、厳しいフランス

 一昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■過去無敗のフランスか、今年無敗のウクライナか

 11月15日、キエフのオリンピック競技場、ウクライナとフランスが対戦する。これまでの本連載で紹介している通り、フランスはウクライナに過去負けたことがない。そしてウクライナは今年に入って負けたことがなく、7試合連続無失点という守備の強さを誇る。
 この試合でウクライナがフランスに対して初勝利をあげるのか、それともフランスがウクライナに対して今年初めて土をつけるのか、この第1戦の結果が4日後にスタッド・ド・フランスで行われる試合にも大きく影響するであろう。

■攻撃陣は豪州戦、中盤以下はフィンランド戦のメンバーが先発

 さて、この1戦に臨むフランス代表のメンバーは、GKはウーゴ・ロリス、DFは右からマチュー・ドビュッシー、ローラン・コシエルニー、エリック・アビダル、パトリス・エブラ、守備的MFは右にポール・ポグバ、左にブレーズ・マツイディ、攻撃的MFは右にロイック・レミー、中央にサミール・ナスリ、左にフランク・リベリーと並び、FWは1トップでオリビエ・ジルーである。
 10月に行った2試合と比較すると10月15日に行われたフィンランド戦とは選手が1人入れ替わっただけである。攻撃的MFのマチュー・バルブエナが外れ、ロイック・レミーが入り、フィンランド戦では右サイドだったナスリが中央に入っている。実はこの攻撃的MF3人とFW1人についてはフィンランド戦の前の11日に行われた豪州戦と同じメンバー、配置である。すなわちディディエ・デシャン監督にとっては攻撃については6-0と勝利した豪州戦、守備については3-0と完封したフィンランド戦がイメージ通りの試合であったことを意味している。

■手ごわいウクライナ、フランスの攻撃を完封

 このように攻守のいい所どりをした形のメンバーであったが、気温2度という寒さの中でフランスのキックオフで始まった試合は予想外の展開となった序盤こそ一進一退の攻防となり、最初のゴールチャンスは5分のウクライナ。ロリスの正面を突くシュートは得点にはならなかったもののウクライナがこれまでのウクライナではないことにフランスのイレブンは肌で感じる。フランスはボール支配率を高めるものの、左サイドのリベリーが完全に孤立、リベリーがボールを持てば複数の選手が取り囲み、チャンスを作れない。一方のウクライナはボール支配率ではフランスに劣るものの28分、39分と形になったシュートを放つ。ウクライナがしばしば見せ場を作り、得点の気配を感じさせる中でハーフタイムを迎える。
 前半と同じメンバーがピッチに戻ってきた後半、フランスは開始早々から攻勢をかける。そしてこの試合初めてといってもいいチャンスが51分に訪れる。ペナルティエリアのすぐ外の位置でのFK。ドリブラーとして力を出せないリベリーが、ゴールを狙うが、壁に跳ね返される。

■後半に2失点、ローラン・コシエルニーにレッドカード

 そして61分に均衡が破れる。ウクライナの速いパス回しにフランスは対応できず、最後は左サイドからブラジル生まれのエジマール、ロマン・ゾズリャとつなぎ、ゾズリャのシュートをロリスが止められずに、ウクライナが先制する。過去7回の対戦の中でウクライナは2回先制したことがあるがいずれもリードを守れなかった。その4分後、フランスはカウンターアタックを仕掛け、リベリーがようやく本領発揮のドリブル、ナスリにつないで、ペナルティエリア内でGKアンドリー・ピアトフと1対1になったが、シュートはピアトフにキャッチされる。66分、デシャン監督はジルーに代えてカリム・ベンゼマを投入する。
 しかし流れは取り戻せず、82分にはコシエルニーがペナルティエリア内でゾズリャを倒してしまい、PKを献上する。この予選で4得点をあげているアンドリー・ヤルモレンコが決めて2-0とリードを広げる。
 1点でも返しておきたいフランスであったが、コシエルニーはロスタイムにファウルを犯したウクライナのオレクサンドル・クチェルを突き飛ばし、一発退場。そしてそのクチェルも終了間際に2枚目のイエローカードで退場するが、2-0のままウクライナが勝利。フランスにとっては厳しいスコアと内容で第2戦を迎えることになったのである。(続く)

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