第1710回 栄光目指す23人(4) 若手を大量に起用、フランク・リベリーが直前の離脱

 3年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■23人のメンバーを大会1か月前に発表

 これまで3回の連載でワールドカップ本大会にエントリーする予定の23人のメンバーと、予備登録の7人のメンバーを紹介してきたが、このメンバー発表はディディエ・デシャン監督の考え方がよく表れている。
 まず、本大会まで1月ある5月13日の段階で本登録の23人を選出したということであるが、デシャン監督は約23人のメンバーを決定することにより、選ばれた選手たちに意識付けをしたかったと述べている。過去のワールドカップで苦い経験のあるのは2002年の韓国・日本大会である。この当時は代表選手の所属チームでの活動が長引き、チームに合流できる順にメンバーを追加招集していった。結局チームとしての機能が弱くなり、開幕戦のセネガルに負けた後、ウルグアイとは引き分け、デンマークに敗戦、結局ノーゴールでグループリーグ敗退となっている。
 また、前回大会は本大会の始まる1月前に30人の予備メンバーを発表し、その1週間後の5月18日、つまり合宿に入る前日に23人の本大会メンバーを発表している。前回はこのメンバー選考のスケジュールが直接の理由ではないが、チームが崩壊しており、デシャン監督としては早い段階でのメンバー決定による効果を狙ったと言える。

■チーム重視主義を貫くディディエ・デシャン監督

 このチーム重視主義は前回の本連載で紹介したサミール・ナスリの落選に象徴される。また、リオ・マブーバやクレマン・グルニエというリーダーシップのある選手が選出されたこともナスリの落選と同じ意味を持っている。デシャン監督自身、ベストプレーヤーを23人集めたのではなく、ベストチームとなるように23人を選出したと述べている。この考え方に対しては異論もあるが、現役時代は若い段階から所属クラブで主将を任され、代表チームでは主将としてワールドカップを受け取ったデシャン監督ならではのポリシーであると言えるであろう。いずれにせよ前回大会でチームが崩壊した反省の下にデシャン監督は選出方法から始まりメンバーを選出している。

■南アフリカ大会出場経験者はわずか4人、平均年齢は27歳

 今回の23人のメンバーのうち、4年前の南アフリカ大会にも選出されているのは、ウーゴ・ロリス、スティーブ・マンダンダ、バカリ・サーニャ、パトリス・エブラ、フランク・リベリー、マチュー・バルブエナという6人だけである。また2年前の欧州選手権のメンバーに入っているのもロリス、マンダンダ、エブラ、リベリー、バルブエナに加え、マチュー・ドビュッシー、ローラン・コシエルニー、ヨアン・カバイエ、ブレーズ・マツイディ、カリム・ベンゼマ、オリビエ・ジルーと世代交代は活発である。今回のメンバーのうち25歳以下の選手は実に8人、ラファエル・バラン、ルーカス・ディーニュ、ママドゥ・サコー、ポール・ポグバ、エリアキム・マンガラ、ムーサ・シソッコ、グルニエ、アントワン・グリエズマンとフレッシュな顔ぶれが並ぶ。
 23人の平均年齢は27歳1か月と2年前の欧州選手権時の27歳3か月よりもさらに若返った。欧州選手権時は25歳以下の選手は4人しかおらず、大幅な若手起用が目立つ。これも今大会での上位進出だけではなく、2年後に地元開催となる欧州選手権での優勝を意識したメンバー選定であると言えるであろう。

■フランク・リベリーとクレマン・グルニエが離脱

 その若いチームの中でフィールドプレーヤーとしてチームの軸となることを期待されているのがリベリーであろう。所属するバイエルン・ミュンヘンでは活躍、2013年度のバロンドールの最終選考にリオネル・メッシ、クリスチャーノ・ロナウドと共に残るフランスを代表する選手であるが、6月5日に背中の痛みにより離脱、また同時期に負傷したグルニエもメンバーから外れ、代表1試合のレミ・カベラと代表初招集のモルガン・シュナイデルランという24歳の2人に入れ換わり、平均年齢は26歳代になったのである。(この項、終わり)

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