第1731回 回顧・ワールドカップブラジル大会(2) 得点王に輝いたモナコのハメス・ロドリゲス

 3年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■フランス代表のうちフランスのクラブの選手は8人

 前回の本連載では欧州の強豪リーグを持つ国が次々とグループリーグで敗退したことを紹介したが、今大会を盛り上げたのはそれらの強豪リーグのクラブに所属する選手である。
 今回はフランスのクラブに所属する選手のブラジルでの活躍について紹介しよう。今大会はフランスのクラブから46人の選手が出場した。フランス代表にはGKのステファン・ルフィエ(サンテチエンヌ)、ミカエル・ランドロー(バスティア)、DFのルカ・ディーニュ、MFのヨアン・カバイエ、ブレーズ・マツイディ(以上パリサンジェルマン)、マチュー・バルブエナ(マルセイユ)、リオ・マブーバ(リール)、FWのレミ・カベラ(モンペリエ)という8人である。前回の2010年の南アフリカ大会は11人であったから減少したことになる。

■アフリカの3か国とベルギーがフランス語圏

 今大会はフランス語圏から出場した国はフランス以外にはコートジボワール、アルジェリア、カメルーンというアフリカ勢である。またベルギーも半分フランス語圏と言えるであろう。
 これらの国のメンバーのうちフランスのクラブに所属しているのはカメルーンが7人、コートジボワールは5人、アルジェリアは3人であるが、ベルギーは1人だけである。ベルギーのエースであるエデン・アザールはリールに所属していたが、イングランドのチェルシーに移籍したようにフランスリーグをステップとしてよりビッグクラブへと移籍するキャリアパスが確立していることがわかる。また、フランス勢7人を擁したカメルーンはグループリーグ最下位、5人のコートジボワールはグループリーグ3位、3人のアルジェリアはベスト16,1人のベルギーはベスト8と、フランスのクラブへの依存度が高いほど、成績がよくないことは残念であるが、これはトッププレーヤーにおけるフランスのクラブの地位を正直に表していると言えるであろう。

■ジュスト・フォンテーヌ以来56年ぶりに得点王となったハメス・ロドリゲス

 しかし、逆のトレンドが見られたのも今大会である。それは他国代表のスター選手が数多くフランスリーグに所属していることである。その代表は得点王に輝いたコロンビアのハメス・ロドリゲスであろう。コロンビアのクラブからアルゼンチンのバンフィルドに移籍し、そこからポルトガルのポルトへ、南米の選手にとって典型的な欧州への上陸パターンである。ポルトで3季プレーして昨夏モナコへ移籍、その移籍金は4500万ユーロと大型移籍であり、移籍初年の昨季、リーグのアシスト王に輝いた。
 代表入りは3年前、今大会開幕まで代表の試合にはわずか22試合出場であったが、今大会では5試合で6得点、しかもスーパーゴールが多く、フランスリーグから1958年大会のジュスト・フォンテーヌ(スタッド・ド・ランス)以来2人目のワールドカップ得点王の誕生である。

■所属するモナコでは控えのアルゼンチンのセルヒオ・ロメロ

 優勝国のドイツにはフランスのクラブに所属する選手はいなかったが、準優勝したアルゼンチンはGKのセルヒオ・ロメロ(モナコ)とFWのエセキエル・ラベッシ(パリサンジェルマン)が活躍した。ロメロは7試合全てにフル出場したが、所属するモナコではクロアチア代表のダニエル・スパシッチの控えで、昨季のリーグ戦出場はわずか3試合であった。
 所属するビッグクラブでは控え選手であるが、代表チームではレギュラー、というケースは少なくないが、ついにフランスのクラブにもこのような現象が起こった。フランス代表のディーニュも所属するパリサンジェルマンではブラジル代表のマクスウェルの控えであり、昨季のリーグ出場は15試合である。今大会はグループリーグ最終戦のエクアドル戦に出場しただけであったが、まだ21歳、同年齢のポール・ポグバやラファエル・バランとともに将来の代表を支えることになるであろう。(続く)

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