第1482回 フランスラグビー、最高の11月(4) 南半球でもまれたアルゼンチンとリールで対戦

 昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■豪州戦勝利で世界ランキングは目標の4位に上昇

 フランスは、過去7年間5連敗中という豪州との対戦で33-6と大勝し、幸先の良い11月となった。前回の本連載で紹介した気になる世界ランキングであるが、フランスが豪州と対戦する前の段階は1位ニュージーランド、2位豪州、3位南アフリカ、4位イングランド、5位フランス、6位ウェールズ、7位アイルランド、8位アルゼンチンとなっていたが、フランスが豪州を破ったことにより豪州と南アフリカの順位、イングランドとフランスの順位が入れ替わる。またアイルランドが南アフリカに敗れ、アルゼンチンがウェールズの勝利したことによりアイルランドとアルゼンチンの順位が入れ替わっている。フランスはニュージーランド、南アフリカ、豪州に次いで4位に浮上し、2015年ワールドカップに向けて第1シード圏内に入った。

■上位3か国との対戦でもまれ、ウェールズに勝利したアルゼンチン

 フランスの第2戦の相手はアルゼンチンである。近年メキメキと力をつけたアルゼンチンは5年前のワールドカップではフランスと予選プールで対戦し、いずれもフランスが敗れ、過去10戦の戦績はフランスが4勝6敗と負け越している。フランスは豪州同様苦手としている相手である。
 そのアルゼンチン、昨年のワールドカップでは決勝トーナメント1回戦でニュージーランドに敗れているが、ワールドカップ後の戦績は2勝1分6敗と大きく負け越している。フランス同様昨年のワールドカップ以降に調子を崩したと考えられる読者の方もおられるであろうがそうではない。昨年のワールドカップ以降最初のテストマッチは今年6月にフランスを迎えた連戦である。すでに本連載で紹介している通り、第1戦はアルゼンチンが勝利し、第2戦はフランスが勝利している。そして8月から10月にかけて南半球の強豪3か国とホームアンドアウエーで対戦している。この6連戦ではホームの南アフリカ戦で引き分けた以外の5試合で敗れている。そしてこの秋の北半球遠征の初戦は昨年のワールドカップでフランスが準決勝で大苦戦し、今年の6か国対抗でも9-16と敗れたウェールズ相手に26-12と大勝している。

■第2シードを確保したいアルゼンチン

 このように昨年のワールドカップ以降のアルゼンチンの戦績を振り返ってみるならば、フランス自身との直接対決は五分であるが、世界の上位3チームとの連戦で黒星が重なっていること、そして北半球ではフランスよりも力が上と考えられるウェールズに勝利していることを考えれば、フランスにとっては難敵である。また、アルゼンチンはこの段階で世界ランキング7位、ワールドカップの組み合わせ抽選で第2シードになる8位までの座を死守したいところである。アルゼンチンの11月の欧州遠征の最終戦の相手は現在8位のアイルランド、ホームで必勝を期してアルゼンチンを迎え撃つはずである。そのためにもウェールズ戦の勢いを持ち込んでフランスにも勝ちたいところである。

■屋根を閉めた巨大スタジアムでの試合に自信を持つアルゼンチン

 戦いの舞台はリールの新スタジアムのリール・メトロポール大競技場。今年8月にオープンし高い形式のスタジアムである。サッカーの国内リーグ、チャンピオンズリーグでは熱戦が繰り広げられているが、ラグビーの試合も代表チームの試合もこの試合が初めてのことである。試合前日には両チームの選手がこのスタジアムで屋根を閉めた状態で練習を行ったが、アルゼンチンのフィフティーンは「屋根を閉めた巨大スタジアムが得意」と自信ありげである。フランス最大のスタジアムであるスタッド・ド・フランスでは2回対戦しているが1勝1敗、しかしフランスの1勝は28-27と僅差の勝利であった。前週もアルゼンチンがウェールズを破ったのはカーディフのミレニアム競技場。ミレニアム競技場もリール・メトロポール競技場同様開閉式のスタジアムであり、屋根を占めて試合が行われた。リールでの試合はフランスラグビー史上初めて屋根を閉めて行われたのである。(続く)

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