第1483回 フランスラグビー、最高の11月(5) 前半の3トライ、後半の5キックでアルゼンチンに勝利

 昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■他国のトップレベルとの対戦ができないアルゼンチンのクラブ

 豪州戦で7年ぶりの勝利をあげたフランスの次の対戦相手は苦手アルゼンチンである。南米のアルゼンチンは南半球のニュージーランド、豪州、南アフリカと代表チームレベルではホームアンドアウエー方式で対戦している。しかし、南半球のクラブの最高峰の戦いであるスーパーラグビーにはニュージーランド、豪州、南アフリカの3か国のクラブが参加しており、アルゼンチンのクラブは国際レベルで切磋琢磨する機会に恵まれていない。そこでトップレベルの選手のうち多くは国外のクラブに移籍することになる。
 アルゼンチンはスペイン語圏であることからサッカーの世界ではスペインリーグのクラブに移籍することが多い、古くはバレンシアで活躍したマリオ・ケンペス、バルセロナに移籍したディエゴ・マラドーナ、そして現在ではバルセロナにリオネル・メッシ、レアル・マドリッドにゴンサロ・イグアインが名を連ねている。

■フランスのクラブに数多く所属するアルゼンチン代表選手

 ところが、ラグビーの世界ではスペインにはレアル・マドリッドやバルセロナのようなレベルのチームが存在しない。アルゼンチンの選手が活躍の機会を求めて海を渡る先はフランスである。この日、リール・メトロポール大競技場のピッチで先発メンバーとなった15人のうち過半数の8人がフランスのクラブに所属し、それ以外の国外組はイングランド2人、南アフリカ1人、4人がアルゼンチン国内のクラブに所属している。また、スタンドオフでボルドー・ベグルに所属するフェデリコ・ニコラス・サンチェスが代表7試合目である以外は全員代表歴は二桁を数え、昨年のワールドカップ出場メンバーがほとんどである。ボルドー・ベグルはこのたびコカコーラウエストと友好提携を結んだばかりである。フランスのトップクラブが日本の2部に相当するクラブと提携を結んでいることから、日本の皆様にはフランスのクラブのレベルがよくお分かりであろう。
 対するフランスは控え選手も含めて23人全員が国内のクラブに所属している。直前の豪州戦で代表にデビューしたヤニック・フォルスティエが出場するほか、代表歴一桁という選手が5人出場する。
 アルゼンチンのフランス勢8人のうち、注目するべき選手は主将の左フランカーのファン・マルティン・フェルナンデス・ロブ(トゥーロン)と右フランカーのファン・マヌエル・レギサモン(リヨン)であろう。フランスはこのポジションにティエリー・デュソートワールがいないのは痛いが、ヤニック・ニヤンガ、フルジャンス・ウドラオゴ、ルイ・ピカモールという第3列である。

■先制を許したが前半に3トライをあげたフランス

 フランスは開始早々の4分にフレデリック・ミシャラクのPGで先制するが、アルゼンチンがその直後にトライをあげてゴールも成功、10分、14分にもPGを決めてフランスは3-13とリードを許す。18分にフランスはウイングのバンサン・クレルクがトライ、21分にもクレルクが連続トライ、いずれのゴールも決まり、17-13とあっという間に逆転する。さらに32分にはゴール前のモールから抜け出したニヤンガがトライをあげ、ミシャラクは簡単にゴールを決めて24-13と11点差をつけて前半を終える。

■スーパーブーツ、フレデリック・ミシャラクの5PG、1DGでフランスが大差で勝利

 後半はフランスがこの点差を広げ、15点差以上で勝利できるかどうか、アルゼンチンが逆転できるかどうかが焦点となり、スコアは3点ずつ積み重なっていった。まずアルゼンチンが45分にPGを決めて8点差に詰め寄る。この直後にフランスはミシャラクがDGを決めてまた11点差に戻す。フランスはスクラムハーフにキッカーとしても能力の高いモルガン・パラをマシュノーに代えて投入する。61分にはミシャラクがPGを決めて11点差とするが、65分に今度はアルゼンチンがDGを決めて30-22と8点差になる。ここからフランスは試合を優勢に進め、守備に回ったアルゼンチンの反則を誘う。68分、73分とミシャラクがPGを成功させ、36-22と14点差になる。フランスの勝利は確実であるが、15点差の勝利の欲しいフランスのファンの夢を実現させたのは78分のミシャラク、この日5本目のPG(それ以外に1本のDG)を決め、フランスは39-22と17点差で勝利したのである。(続く)

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